アクション映画

何度見てもドキドキハラハラからの号泣がとまらない『ディープ・インパクト』の二度見ポイント【映画レビュー(ネタバレあり)】

上映日:1998年
製作国:アメリカ
上映時間:121分

監督:ミミ・レダー
エグゼクティブプロデューサー:スティーブン・スピルバーグ
出演者:ロバート・デュバル、ティア・レオーニ、イライジャ・ウッド、リーリー・ソビエスキー、バネッサ・レッドグレーブ、モーガン・フリーマン、ジェームズ・クロムウェル

あらすじ:

ホワイトハウスの女性スキャンダルを追っていたテレビ局のジェニーは、「エリー」という名に行き当たる。だがそれは女性の名ではなく、「Extinction Level Event(種の絶滅を引き起こす事象)」の略だった。大統領は、1年後に未知の彗星が地球に衝突する可能性があることを公表。これを阻止すべく彗星を核爆発させて軌道修正するプロジェクトが実行されたが、結果は失敗。衝突が刻一刻と迫る中、ついに大統領は地下に選ばれた100万人だけを移住させる計画を発表するのだった……。

『ディープ・インパクト』予告編

『ディープ・インパクト』シングメディア編集部レビュー

彗星の直撃により全人類が滅亡するかもしれない状況に陥ったとき、あなたならどのような行動をとるでしょうか?

1998年に公開された『ディープ・インパクト』は、未知の彗星の直撃により人類が滅亡の危機に陥るというパニック映画でありつつ、その中で家族を始めとした大切な人たちとのつながりを教えてくれるヒューマンドラマでもあります。

おそらく約20年前に大ヒットした映画ということもあり、公開時やレンタルなどで一度は鑑賞したことのある人も多いはず。

しかし『ディープ・インパクト』は、二度、三度と繰り返し見ることにより、また以前とは違った見方ができる作品でもあるのです。

3つの二度見ポイント
「ディープ・インパクト」の二度見ポイント:何度見てもドキドキハラハラするメサイア号のシーン/主人公以外にも心境に注目したい人々/序盤の「エリー」違いの会話が続くシーンは二度見で初めて意味がわかる

「ディープ・インパクト」の二度見ポイント1:何度見てもドキドキハラハラするメサイア号のシーン

「ディープ・インパクト」の二度見ポイント1

まずなんと言っても、今作の中で一番ドキドキハラハラさせられるシーンが彗星に向かう宇宙船メサイアが、核爆弾で彗星を破壊しようとするシーン。

パニック映画でおなじみのこの手のシーンですが、『ディープ・インパクト』の場合は一歩先が読めそうにもかかわらず、なぜか何度見ても手に汗握る展開が続きます。

その理由は大迫力のCGがかもしだす画により、まるで自分がその場にいるかのような感覚に陥ってしまうからなのです。

自分が操縦をしているかのような錯覚を起こす

あと少しで彗星に着陸できる寸前。乗組員たちは核爆弾の回路をオフにするなど、彗星破壊に向けての準備にとりかかります。

ただこのとき映されているのは、ほとんどが乗組員たちの手元や宇宙船の操縦画面ばかり。乗組員たちが船内にあるボタンやスイッチを操作する手元や、みるみる数値が上がったり下がったりする操縦画面がドアップで映しだされているのです。

そんな乗組員たちの手元や操作画面だけを見ていると、まるで自分自身が核爆弾を取り付けにかかる準備をしているかのような錯覚を起こしてしまいます。このボタンをひとつでも押し間違えたらどうなるのだろう……という謎のハラハラ感。

メサイア号序盤のシーンから、私たちは自分が乗組員の一員になっている気分を味わっていたのです。

彗星着陸前に襲い掛かる巨大な石の数々

そしていざ彗星に着陸! しようとするものの、彗星の周囲には巨大な石がばんばん飛び交っているという現状。それを一つひとつ避けることなどできるはずもなく、巨大な石はいくつもメサイア号にぶつかってきます。

それを操縦画面のモニターごしに見たときの絶望感……。このままメサイア号は彗星着陸前に壊れてしまうのではないかという絶望感……。

その恐怖をあおるかのように巨大な石の間を潜り抜けている間は、これでもかというほど画面が揺れ続けます。

おそらくこの巨大な石が降り注ぐシーンは何度鑑賞しても、無事にメサイア号が着陸するまで、ドキドキハラハラが止まらなくなってしまいます。

一分一秒の遅れも許されないギリギリの状態

何とか彗星に着陸したものの、次は堀削機を地下100メートルまで掘り進めて、爆発させるという作業が残っています。

しかし案の定そう簡単に物事は進まず、堀削機が途中で引っかかってしまい、乗組員のひとりが穴の中にもぐりこまなければいけない状況に。閉所恐怖症の方からすれば、見ているだけでその場から逃げ出したい衝動にかられてしまいます。

そのうえ時間は待ってくれない。日の出までに間に合わないと太陽が地表の温度をあげ、いたるところからガスが噴き出してしまうのです。

刻一刻と時間が迫るものの、堀削機を掘り進める作業は遅れをとり続けます。

最後に待ち構えいた地獄絵図

そしてようやく堀削機を設置し作業は終了したものの、同時に日の出の瞬間がきてしまったという最悪のケース。

この瞬間からはもう地獄絵図でしかありません。

彗星のあちこちから噴射するガス。
日の出に目をやられてしまった乗組員。
メサイア号に乗り込むため必死で走り続ける四人。

そして、乱れる四人の呼吸を宇宙服の中視点から映し出した画。

絶望感ただようこの一瞬は、まるで自分が彗星の上を逃げ回っているような気分になってしまいます。

彗星着陸前から脱出前までのメサイア号のシーンは、二度、三度見てもドキドキハラハラさせられること間違いなしです。

「ディープ・インパクト」の二度見ポイント2:主人公以外にも心境に注目したい人々

「ディープ・インパクト」の二度見ポイント2

冒頭でもお伝えした通り、今作はパニック映画であると同時に家族を始めとした人と人とのつながりの大切さを教えてくれるヒューマンドラマでもあります。

中でも初見で注目されがちなのが、ジェニーと父の家族愛。そしてリオとサラの恋人愛。

しかし二度見では、その他にもご注目いただきたい愛がたくさんあるのです。

終盤で唯一涙を見せた操縦士のアンドレア

今回メサイア号の乗組員の中で唯一の女性である、操縦士のアンドレア。

任務遂行中は常に誰よりも冷静な判断をし、的確な操縦技術でメサイア号を彗星へと着陸させます。

またときには、感情的になったフィッシュことタナーを怒鳴りつけ、冷静さを取り戻させるという一面も。

そんな頼りがいのあるアンドレアですが、終盤、残った彗星にメサイア号ごとぶつかり破壊させるという選択をしたとき、乗組員たちは最後に家族と別れの交信をします。

その際、夫と幼い娘と交信が始まったとたん、今まで毅然としていたアンドレアが大粒の涙を流したのです。

家族を残し、自分の命をかけて任務を遂行すると決めたアンドレアが流した最初で最後の涙。そんな彼女が涙を流すシーンは何度見てももらい泣きさせられてしまいます。

ひとり苦悩と葛藤し続けていた大統領のトム・ベック

今作において、最初から最後まで彗星破壊の指揮をとっていた大統領のトム・ベック。

メサイア号の計画から核ミサイルでの迎撃によるタイタン作戦。さらには人類の地下移住計画を全国民に伝える際は一切の動揺を見せることなく、テレビの前ではっきりと言葉を述べていました。

しかし部屋に誰もいなくなりひとりきりになると、顔を手で覆いうつむく姿が何度も描かれています。この大統領のオンとオフの姿を見るだけで、彼がいかに今回ひとりで悩み苦しんでいたかがわかります。

なにより大統領のラストの演説は、今作において絶対に欠かせない名言。この演説シーンは二度見以降の鑑賞でも胸打たれることになるでしょう。

子どもたちを誰よりも愛していたリオとサラの両親

地下移住の避難権を与えられたリオと、両親と残ることを決めたサラ。しかしリオは地下シェルターの目でサラの元に戻ることを決め、サラも両親と別れリオと逃げ切ることになります。

おそらく普通であれば、リオの両親も自分たちだけ地下シェルターに避難し、息子ひとりを外に出すなんて決断はできないはず。しかしリオの強い意思をくみ取り、父親は彼を送り出します。

またサラの両親も、彼女と赤ん坊だけには逃げ切ってほしいとリオに彼女たちを託し、自分たちは彗星直撃から逃げることを諦めます。

このお互いの両親の子を思うがための強い行動。しかしお互いの母親は子どもたちの前では毅然とふるまっていましたが、彼らが去ったあとはただただ悲しい顔を見せたり、泣き崩れたりと感情をあらわにしていたのです。

今作ではリオとサラのふたりの行方に目がいきがちですが、二度見ではそんな両親サイドからの心境にも注目してみてください。

「ディープ・インパクト」の二度見ポイント3:序盤の「エリー」違いの会話が続くシーンは二度見で初めて意味がわかる

「ディープ・インパクト」の二度見ポイント3

序盤で重要なワードとなった「E.L.E.(エリー)」。

これは「Extinction Level Event(種の絶滅級の事象)」という、今回の彗星直撃の事案を指す言葉であったのですが、序盤ではキャスターのジェニーがこれをいろいろと勘違いしていました。

エリーを不倫相手だと勘違いしていたキャスターのジェニー

そもそも序盤では、元財務局長官が突然の辞職という展開から物語がスタート。そしてキャスター志望であるのジェニーはその辞職の理由が「元財務局長官がエリーという女性と不倫スキャンダルを起こしたに違いない」と思いこみ、取材を続けます。

そのうえ最終的には、元財務局長官に直撃アタック取材! 「エリーのことを知っていますよ、これを明るみに出します」と強気の発言まで。

しかし元財務局長官は「E.L.E.(種の絶滅級の事象)」のことがバレたのだと、こちらもまたまた勘違いをし、「おめでとう、史上最大の特ダネだ」と言いつつも、明るみに出すことを止めるように忠告。

このふたりのやりとりの何がすごいって、不倫女性のエリーと彗星直撃のエリーという、お互いに別の話をしているのにもかかわらず、会話が成立しているのが見事なのですよね。

なんとなくエリーの正体が女性でないことに気づき始める

その後エリーに関して嗅ぎつけられたと思った政府は、ジェニーを連行し大統領の元へと連れていきます。

しかしジェニーは相手が大統領であろうと、スクープを明るみに出すと強気の態度。

まあここで大統領は、ジェニーがエリーに関して壮大な勘違いをしていると気づくのですがね。

そして当の本人であるジェニーも、大量の非常食を目撃したり、PC検索で「E.L.E.(エリー)」が種の絶滅級の事象であるという事実を知ったりして、なんとなく「あれ、エリーって不倫相手じゃないの?」ってことに気づき始め、ようやく二日後の大統領の会見により真実を知ることになるのです。

二度見では会話の噛み合い方に注目を

そんな初見では話がまったく読めず、ただただよくわからない展開だけが続いていた序盤のシーン。

その後エリー違いであったという事実に気づき、「なるほど」とちょっと驚かされた方もいるはず。

そこで物語のあらすじを知った二度見の鑑賞では、あえて不倫女性エリーと彗星直撃エリーをお互いに勘違いしあっている者同士の会話に注目しながら鑑賞してみてください。

うまいこと会話が噛み合っているなと感心させられる部分もあれば、お互いに言っている意味がわからず、「何言ってんだ、こいつ」みたいな顔で相手を見つめる部分などもあるため、初見以上に登場人物たちのそのときの心境が丸わかりになるはずです。

『ディープ・インパクト』は何度見てもドキドキハラハラと泣かされる展開になる名作

今も災害系のパニック映画の名作として語り継がれる『ディープ・インパクト』。

約20年前の作品であるにもかかわらず、今見ても彗星破壊から直撃シーンまでは、ドキドキハラハラできると同時に多くの人々の家族愛に泣かされます。

二度見をする際は、ぜひ彗星破壊までのCG技術に目を奪われつつも、初見では深くまで読み込めなかったそれぞれの家族愛にも注目してみてください。

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WRITTEN BY
シングメディア編集部

映像・動作制作を手掛けるTHINGMEDIA株式会社のメンバーで構成しています。制作現場で得た映像・動画の知見をお伝えしていきます。