あらすじ:
37歳でバツイチ、恋人もいない、執筆中のヤングアダルトシリーズは終了間近で新作の予定も決まっていない自称作家のゴーストライター、メイビス (シャーリーズ・セロン)は、うかない日々を過ごしていた。そんな中、高校時代の恋人バディ(パトリック・ウィルソン)の妻から子どもが生まれたという内容のメールが届く。バディとヨリを戻し青春時代の輝きを取り戻そうと考えた彼女は、故郷の町へ舞い戻るが……。
『ヤング≒アダルト』予告編
『ヤング≒アダルト』シングメディア編集部レビュー
ふとした瞬間に他人と比較をしたり、SNSで本当の自分を偽ったり、「私は他の子とは違う」と思い込んでいたり。それにもかかわらず、なぜか充実感や幸福感を得られない。
そんな現代女性の本音を赤裸々に描いた『ヤング≒アダルト』。
おそらく初めて鑑賞した女性の多くが、主人公メイビス(シャーリーズ・セロン)を「イタい女性だな~」なんて思いつつ、心のどこかでは彼女に感情移入して、胸を痛めたのではないでしょうか。
それもあり「見るとつらくなるから鑑賞は一回だけで良い」と初見終わりしている方も多いはず。
そんな方に向けて今回は、あえて『ヤング≒アダルト』の笑えて楽しめる二度見ポイントをご紹介します。
3つの二度見ポイント
「ヤング≒アダルト」の二度見ポイント1:実はシュールで笑えるシーンがたくさん隠されていた
今作では仕事も恋愛も思い通りにいかないメイビスの心境がリアルに、そしてときに痛々しく描かれているため、同年代の女性としては見れば見るほど、つらく感じてしまうシーンもしばしば。
ただそんなメイビスに目を向けてしまいがちですが、実はよく見るとシュールすぎて笑えるシーンも意外と多いのです。
期待を裏切られた一本のカセットテープ
元カレのバディ(妻子持ち)から、子どもの誕生パーティーへの招待を受けたメイビス。
「これは復縁のチャンスだわ」と言わんばかりに、早速、故郷であるマーキュリーへと向かうことに。いや、妻子持ちの元カレに対して復縁のチャンスだと思う時点で、すでにメイビスの痛々しさが表れ始めているのですけどね。
そして故郷へと帰省する準備をしていたメイビスが手にとったのは、一本のカセットテープ。
そこに書かれていたのは、「MAD LOVE,BUDDY」の文字。そうです、交際時代にバディがメイビスに送ったカセットテープだったのです。あの若気の至りでやっちゃう、「僕の気持ちを歌にして送るよ」的なノリで渡しちゃう黒歴史確実になる一品です。
それを20年近く経った今も捨てずに残していたメイビス。故郷に向かう車の中では、そのカセットテープを何度も繰り返しかけるのですが……。
何とカセットテープに入っていた曲は、ロックバンド、ティーンエイジ・ファンクラブの『ザ・コンセプト』。いや、バディのオリジナルソングやないんかい!!
と、何だか拍子抜けしてしまうこの瞬間。でもそんな中途半端な当時のバディを想像すると、何だかちょっと笑えてしまいます。
心の声がバレバレなマットの表情の豊かさ
今作において常にメイビスの味方となってくれた、同級生のマット。
数々の痛々しい姿を披露するメイビスを避けることなく、常に支えてきてくれたマットを見て、自分のそばにもマットのような存在がそばにいて欲しいと心打たれた女性もいるのでは?
しかしこのマット。よ~く表情に注目していると、とにかく笑えるのです。もう表情に心の声が出まくっていて、マットの表情ひとつで笑わせてもらえるのです。
たとえばバディとメイビスがふたりで飲んでいるところに合流した際は、メイビスから「早くあっちにいってよ」的な目でにらまれ、「いや~一緒に飲みたいけど仕事に戻らないとね~」と目を泳がせまくって慌てる始末。
またメイビスがやけ酒をあおっているのを見守っている際は、まるで女神かのように優しい表情で彼女を見続けているかのように見え、実は目が死んでいるという複雑な表情を見せてくれています。
今作ではメイビスに注目すると胸が痛くなってしまいがちですが、あえてマットに注目し、彼の視点でメイビスを鑑賞すると、一気に切ない作品がコメディ映画かのように見えてきます。
メイビスブチ切れ事件におけるシュールな人々
今作において一番の見どころであり、メイビスのイタさが最高潮に表れたシーンが、終盤の子どもの誕生パーティーでのメイビスのブチ切れ事件。
バディの妻であるべスが誤ってメイビスの服を汚してしまうのですが、この服汚し事件をきっかけにつもりに積もったメイビスの怒りが爆発!
「本当は自分が彼(バディ)と結ばれるはずだった」「あんた(べス)もはっきり言いたいことをいいなさいよ」と、大勢の人の前で本音をぶちまける始末。
そんな思わずイタくて目をそらしてしまいたいシーンではあるのですが、実はこの場面。よく鑑賞するとめちゃくちゃシュールなのです。
まずベスの後ろに映る彼女の友人たち。ふたりの言い争いを心配そうに見守っているのですが、その瞬間、友人のひとりが思わず笑ってしまったのです。
いや、彼女が何を思って笑ってしまったかはわかりませんよ。でもあるじゃないですか。絶対に笑ってはいけない状況が逆におもしろくて、思わず吹いてしまうことって。きっと彼女も「あ、やべ。笑っちゃった」的なノリで耐えきれずに笑ってしまっちゃったのでしょう。
またメイビスのブチ切れにより、しらけたムードとなった会場。すると突然ガレージが開き、バディがベスへのサプライズプレゼントを!
ドラムロールをたたきながら、ドヤ顔で決めポーズをとるバディ。しかし会場はそのタイミングの悪さに、ただただ呆然とするだけ。それを見てバディも異変に気づくのですが、このバディのタイミングの悪さと、会場の空気お構いなしのあのドヤ顔。
そんな後ろで笑いをこらえている友人やタイミングの悪いバディに目を向けると、もうせっかくの見せどころである終盤のシーンが、ただただシュールに映って笑えてしまいます。
あえてメイビス視点で見るのをやめると笑える
メイビスに感情移入すると、つらくて見ていられなくなってしまう今作。
しかしメイビス視点から一歩目を背けるだけでも、まったく違う作品かのようにシュールで笑いどころ満載のストーリーに見えてきてしまうのです。
初見で胸を痛めながら鑑賞した方は、二度見ではあえてメイビスではなく、他の登場人物の視点から作品をご覧になってはいかがでしょうか。
「ヤング≒アダルト」の二度見ポイント2:メイビスから学べることは意外と多い
家族と幸せな生活を送っているバディを見て、「本当の彼は結婚を苦に思っていて、私とよりを戻したいはず」と壮大な思い込みをしたり、仕事の連載打ち切りが決定しているにもかかわらず、「売れっ子作家で忙しいの」と堂々と嘘を吐いたりと、とにかく痛々しい言動が目立って仕方なかったメイビス。
しかしバツイチ独身で人生の酸いも甘いも嚙み分けてきたメイビスだからこそ、作中内では彼女から学べることもたくさんあるのです。
周りの目を一切気にしない強さ
メイビスの何がすごいって、悪く言えば思い込みが激しく痛々しい部分も多いのですが、反対に良く言えば周りの目を一切気にせずマイウェイを貫く堂々とした行動ができる。
特にその堂々ぶりが表れているのが、ひとりでバーやお店に入るときの振る舞い。
周りの目など一切気にせずバーではどんどんお酒を頼み、ジャンクフード店では軽く2~3人前はあるかと思うほどの量を頼みと、自分がそのときしたいように行動する。
周りの目を気にし、他人と空気を合わせがちな日本人女性からすると、なかなかここまで思い切った行動ができない方も多いはず。
そんなマイウェイを貫くメイビスの堂々ったるぶりを見ていると、ちょっとした勇気をもらえます。
メイク技術は何度見てもお手本になる
またメイビスのすごい部分は性格だけではありません。何とメイク技術もプロ顔負けの仕様になっているのです。
それが分かるのがバディとふたりきりで再会する日のこと。二日酔いでボロボロになった状態の顔から、別人かのように完璧な顔へと変身するのです。
作中ではそのメイク工程の一部始終が描かれているのですが、もはや最近流行りの動画メディアで女子たちが自身のメイク過程を紹介するコンテンツと一緒です。メイク前とメイク後の変わりようが半端ないのです。(いや、シャーリーズ・セロンのすっぴんももちろん美しいのですがね。)
このシーンでは下地からファンデーション、アイメイクにいたるまでの一連の工程が描かれているのですが、海外風メイクに憧れる方はこの場面を繰り返し見てメイク技術を学ぶだけでも、二度見、三度見の価値はあるかと思います。
本来の姿が一番美しいことを教えてくれる
そして作中では夜のドレスアップした姿と、昼間のすっぴんにカジュアルな姿という、両極端なギャップを見せてくれたメイビス。
ただばっちりメイクをして髪を巻き、ドレスアップした姿が美しいのはもちろんなのですが、それよりも昼間のすっぴんにサングラス、トレーナーやチェックシャツにデニムを合わせるというカジュアルなスタイルの方が自然で様になっているように見えるのです。
おそらくドレスアップした姿のメイビスは、話を大げさに盛ったり次々と嘘をついたりと、口から出まかせばかりをいうため、無意識のうちに見た目も偽りのように感じてしまったのかもしれません。
反対にすっぴんで着飾っていないときのメイビスは、マットを始め、相手に対して本音しか語りません。その姿は不思議なほど自然で、なぜかすごく美しく見えるのです。
そんな両極端なメイビスを見ていると、外見も中身も必死で偽れば偽るほど、違和感だけが残ってしまうのだという当たり前のことを教えてもらえる気がします。
メイビスから学んだことを活かしてみては?
初見ではメイビスの壮大な思い込みや嘘の連続に痛々しさを感じた方もいることでしょう。
でも彼女はただイタいだけの女性ではありません。彼女からは同じ女性として学べることもたくさんあるのです。
二度見ではメイビスから様々なことを学び、自分の人生に活かせる何かを見つけてみてはどうでしょうか。
「ヤング≒アダルト」の二度見ポイント3:癒しだけに注目しての鑑賞もあり!
シュールで笑えるポイントもあれば、同じ女性として学べることもある今作。
しかしそれでもなお、「胸が痛くて二度見はできないかも」と思っている方への最終兵器をご紹介しましょう。
最後の二度見ポイントは壮大なる“癒し”
二度見できる自信がないと思う女性へと送る、最後の二度見ポイント。
それは“癒し”です。
ちょっと痛々しいけど、気持ちもわかるというメイビスに感情移入してしまうのであれば、定期的に訪れる癒しポイントで心を落ち着けてみると、初見のように「つらかった」という感想だけが残ることもありません。
そして今作において壮大なる癒しを与えてくれるのが、メイビスの飼い犬であるポメラニアンのドルチェと、バディとベス夫妻のもとに生まれたベイビーちゃんなのです。
最初から最後まで忠実だったポメラニアンのドルチェ
夜は毎晩のように飲み歩き、昼間はパソコンひとつ片手に外で執筆作業と、家を空けがちな飼い主であるにもかかわらず、メイビスに100%の信頼を寄せ、慕いまくっているのが飼い犬のドルチェです。
もう本当にこのドルチェのかわいさは言葉で言い表せられないほどの癒し感満載。
メイビスが帰宅すると大きく尻尾を振ってお迎え。
そして彼女がベッドで横になっていると、嬉しそうに彼女の体の上を駆け回る。
極めつけは傷心しきって泣き崩れるメイビスがドルチェを抱きしめた際、本気で心配しているかのような表情を見せてくれる。
そんなドルチェの存在は胸痛めつけられる今作において欠かせない、重要な癒しキャラなのです。
赤ちゃんならではの自由な行動を見せるベイビーちゃん
そしてドルチェと同じく、今作で大きな癒しを与えてくれるのがバディとベス夫妻のベイビーちゃんです。
赤ちゃんということもあり、周りで大人たちが迫真の演技を見せる中、自由に動きまくるこのベイビー。
メイビスが家に訪れた際は突然泣き出したかと思えば、お気に入りのゆりかごに乗せてもらった際は満面の笑みを見せてくれる。そんな赤ちゃんだからこそ見せられる自然な表情にとにかく癒されるのです。
ひとりと一匹だけに注目する二度見もあり?
大人の男女が繰り広げるドロドロ展開が多い中で、唯一の癒しを与えてくれるドルチェとベイビー。
何なら二度見の際は、もう大人たちの痛々しいやりとりは完全に無視で、ただただ、このひとりと一匹だけに注目して癒しを与えてもらうという見方もありなのではないでしょうか。
初見で「胸が痛かった」と感じた方にこそ二度見してほしい作品
故郷を離れ都会に出てきたものの、何をやっても空回り。
どれだけ頑張っても充実感や幸福感が得られず、人生に迷いを感じている。
そんな女性が強く胸打たれる『ヤング≒アダルト』は、現代女性が抱えている悩みや葛藤をリアルに描いた一作です。
しかし今作は、二度見、三度見することにより、ただ胸が痛くなるだけでなく、意外な楽しみポイントが隠されていることに気がつける作品でもあるのです。
初見で「ただただ胸が痛かった」という感想を持った方こそ、ぜひ二度見では違った見方ができるお楽しみポイントに注目してみてはいかがでしょうか。
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