青春映画

笑いあり、涙あり。おまけに見逃しがちな小ネタありの『ROOKIES -卒業-』二度見ポイント【映画レビュー(ネタバレあり)】

上映日:2009年
製作国:日本
上映時間:137分

監督:平川雄一朗
原作:森田まさのり
脚本:いずみ吉紘
主題歌/挿入歌:GReeeeN
出演者:佐藤隆太、市原隼人、小出恵介、城田優、中尾明慶、高岡蒼甫、桐谷健太、佐藤健、五十嵐隼士、川村陽介、尾上寛之、山本裕典、石田卓也

あらすじ:

ニコガク野球部に戻ってきた顧問の川藤(佐藤隆太)は、安仁屋(市原隼人)、御子柴(小出恵介)、新庄(城田優)らと再び野球を共にできる喜びをわかち合っていた。そして新学期、メジャーリーグを目標とする新入生の赤星(山本裕典)と、ひょんなことから入部した濱中(石田卓也)が野球部に入ったことによって……。

『ROOKIES -卒業-』予告編

『ROOKIES -卒業-』シングメディア編集部レビュー

2008年、「夢にときめけ!明日にきらめけ!」の名言で日本中に高校野球フィーバーをもたらした名作ドラマ『ROOKIES』。

翌年2009年に公開された映画版『ROOKIES -卒業-』もドラマ版同様、世の女性をはじめ、野球ファンや原作ファンを中心に大きな話題となりました。なんなら筆者に至っては、試写会と通常公開の2回も見に行っちゃったからね。そのうえDVDまで買っちゃうほど本気でハマりにハマりまくっていたからね。

と、おそらく筆者以外にもすでに二度、三度と繰り返し鑑賞をした方も珍しくはないかと思われる今作。

しかし! 今作はただ笑って泣けるだけの青春映画ではありません。実は何度鑑賞しても見逃しちゃっているかもしれない小ネタがたくさん! とにかく細部にいたるまでこだわり満載の作品なのです。

「ROOKIES -卒業-」の二度見ポイント3つ

「ROOKIES -卒業-」の二度見ポイント1:キャストの手書き文字から見える作品愛

2008年のドラマから鑑賞されている方であれば、おそらくお気づきかと思うのですが、『ROOKIES』では部活用のユニフォームにそれぞれの役名が書かれています。

そしてなんとこちら、キャストそれぞれの手書き文字。衣装担当の方が用意したのではなく、キャスト全員が自分の役名をユニフォームに手書きで記していたのです。もうこういう細かい部分からビシバシと強い作品愛が伝わってきます。

そして映画版『ROOKIES -卒業-』でも、その作品愛はいたるところで存在していたのです。

「ROOKIES -卒業-」の二度見ポイント1

部室のロッカーの名前も手書き

野球部の部員たちが卒業式を迎えた日。佐藤隆太さん演じる川藤先生がひとり部室で思い出にふけり、部員ひとりひとりのロッカーを見つめるシーンがあるのですが。

ロッカーに書かれた名前もこれまたキャスト全員の手書き。しかも手書き文字がこれまた味のある字なのですよ。

最後まで不良を貫きながらも野球部に入部し、普段は口数が少ない新庄君の文字が意外とめちゃくちゃ丁寧できれいだったり、常に平塚君とつるんでいるものの、弱気な面を見せることも多々ある今岡君の文字が小さすぎて「いやもっとスペース使ってもいいのだよ」とツッコミたくなったり。

ロッカーに手書きで書かれた名前一つひとつを見ているだけでも、キャラと合わせて、それぞれの役者さんのちょっとした素顔が垣間見えた気分になれます。

黒板に書かれた一言メッセージも手書き

卒業式のお決まりパターンと言えば、お世話になった教室の黒板に生徒たちがメッセージを残すという風習。

今作でもエンディングで大きく“卒業”と書かれた黒板のいたるところに、生徒たちがメッセージを残しているのですが、こちらもまたまたキャストの手書き。しかも名前だけでなく、キャラに合わせた一言メッセージ付きという大サービスシーン。

もちろんここでもキャスト一人ひとりの個性が表れています。

全員が感謝の言葉を記している中、市原隼人さん演じる安仁屋は「バーカ」と一言殴り書きしており、そこから安仁屋らしい照れ隠しの一面が見えてちょっとほっこりしたり、五十嵐隼士さん演じる湯舟がキメ台詞の「ニャー」の一言とともに猫のイラストを添えているのにまたまたほっこりさせられたり。

あと相変わらず新庄君の文字がめちゃくちゃ丁寧できれい。

名前だけでなく一言メッセージが加わることで、さらに一人ひとりのキャラを深く知れた気分になれるシーンです。

エンディングロールの出演者名も手書き

そしてキャストの手書き文字が登場するのは作中だけかと思いきや、まさかのエンディングロールの出演者名も一人ひとりが手書きというこだわりよう。

しかもこの場面ではキャラの名前ではなく、出演者本人の名前が手書きになって流れてくる。それにより俳優さんたちが普段自分の名前をどのように書いているのかがわかる。きっとお気に入りの俳優さんがいる女性にとっては、もう興奮冷めやらぬシーンではないでしょうか。

筆者としては、とりあえず作中ではすぐキレるキャラでおなじみだった若菜役の高岡蒼甫さんの字がめちゃくちゃかわいかったことと、全員が普通に名前を書いている中、平塚役の桐谷健太さんだけはなぜかひとりサイン風に自分の名前を書いちゃっているセンスの良さに感動しました。

あとやっぱり新庄君こと城田優さんの字は本当に丁寧できれいだな。いや、何回言うのだよって話ですが、もう何回でも言っちゃうからね。城田さんの字、マジで美しいから。

感動のエンディングロールで涙をそそられた方も多いかと思いますが、二度見以降ではその涙をぐっとこらえ、俳優陣一人ひとりがペンをとり記した手書きの名前にも注目したいところです。

キャスト一人ひとりの手書き文字から見える作品への思い

作品に対する姿勢や演技から、俳優の方々の作品愛が伝わってくることもあります。

ただ今作では、鑑賞している側が気づくか気づかないかという微妙な手書き文字という形で、キャストそれぞれの作品愛を感じることができるのです。

二度見ではぜひ、キャスト一人ひとりの個性ある手書き文字からチラッと見える内面や作品への思いを感じとってみてはいかがでしょうか。

あと見逃した方はきちんと城田さんの手書き文字をしっかり見てね。

「ROOKIES -卒業-」の二度見ポイント2:影の主役・平塚こと平っちが見せた細かいギャグ

『ROOKIES』の主役といえば、不良学生たちを更生させ、廃部寸前だった野球部を立て直した佐藤隆太さん演じる、川藤幸一。そして野球部の中心的存在であり、人一倍、野球に思い入れの深い市原隼人さん演じる、安仁屋恵壹のふたりです。

しかし、ドラマ版から鑑賞していた方であれば、きっと共感してくれるであろう。そう、影の主役といえば桐谷健太さん演じる、平塚平こと平っちであるということを。

もうギャグパート専用キャストである平塚君なしで『ROOKIES』は始まりません。

今作の映画版でも、平塚君はギャグ要員として全力で走っています。多分誰も見ていないよってシーンですら全力で演じきっています。

「ROOKIES -卒業-」の二度見ポイント2

部員全員が揃っているときに見せつけてくる変顔

『ROOKIES』に登場する二子玉川学園高校(通称・ニコガク)の野球部員は、全員で10名。

作中では至る部分で10名全員が勢ぞろいするシーンが多々あるのですが。

毎回平塚君があの目力全開の変顔を見せつけてくるのですよね。いや、本人的には変顔をしているつもりはないのでしょうが、シリアスなシーンでも最後にチラッと平塚君が映ると思わず笑ってしまうのですよね。

そのうえ1秒もないであろう、ささっと切り替わる場面でも彼はしっかり渾身の変顔ならぬ、迫力ある表情を見せつけてきます。おそらく今のシーン見逃した人も多いぞと思うシーンでも、油断せずに平塚君にしかできない迫力満点の勇んだ表情を見せつけてきます。

そんな最初から最後までブレない平塚君という名のキャラを演じられるのは、桐谷健太さんだからこそできる神業。まさに陰の主役にふさわしい存在です。

女子生徒から黄色い声援を浴びた日の登校ではさりげなくおしゃれを

全国高校野球の予選で勝ち上がるにつれ、ただの不良揃いだと言われていた野球部に対する世間の目も変わってきます。それどころかむしろアイドル状態です。野球部員全員が揃って登校すれば、学校のいたるところから女子生徒たちがキャーキャー黄色い声援をあげます。

そんな黄色い声援に内心きっと喜んでいるものの、硬派を気取って興味のないふりをし、そそくさと歩き去る野球部員たち。……ええ、平塚君をのぞいては。

いや、この場面で平塚君すげーなと思ったのは、先ほどまで普通に登校していたにもかかわらず、校舎の門をくぐりぬける瞬間に一体どこから取り出したのかわからないサングラスをさりげなく装着。そして黄色い声援をあげる女子生徒たちに向かい、投げキッスの嵐。

ほんの一瞬の出来事であったため、見逃している方もいるかと思いますので、二度見の鑑賞ではこのさりげなくサングラスを取り出し準備万端といわんばかりの平塚君にご注目を。

まあ、ただ残念なことを言うと、その黄色い声援。9割方、安仁屋(市原隼人)に向けられたものだと思うよ、平塚君。

後輩・濱中までまったく同じ動きを見せはじめる

映画版の今作では、メインキャストたちも三年生となり、ニコガク野球部に新たな部員が二人入部します。

そのひとり、石田卓也さん演じる濱中君は、中学時代から平塚君を自分のヒーローだと豪語する、大の平塚信者。

そのため中盤からはどこに行くにも平塚君の隣にべったり。しかもなぜかふたりが映る場面では、平塚君と濱中君動きがきれいにシンクロするという奇跡。おかげでただでさえギャグパートである平塚君のシーンが倍増して笑えてしまう。

しかし残念なことに、こちらも1秒にもつかどうかのさらっと流されるシーンが多めであるため、平塚&濱中コンビの渾身のシンクロギャグが雑に流されて終わりがち。めちゃくちゃおもしろい動きを見せているにもかかわらず、気づいたら何事もなかったかのように次のシーンへと場面が変わるという切なさ。

そんなふたりの努力をむだにしないためにも、二度見以降では濱中君が登場したあたりからのふたりの熱演を見逃さないようにしてみてください。

平塚君だけにフォーカスする新たな鑑賞方法もあり

冒頭でもお伝えした通り、今作は筆者のようにすでに何度も見返し、正直、若干見飽きた感がぬぐえない方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方におすすめの鑑賞方法が、平塚君だけにフォーカスしての鑑賞です!

ひたすら画面の中で平塚君だけを探し、彼だけを目で追い続ける。するとどうでしょう。「えっ、この場面でこんなおもしろいことやっていたの」と見逃していた笑いどころがいくつも見つかるかもしれません。

ぜひとも、陰の主役・平塚君をこれまで以上に目に焼きつけてあげてください。

「ROOKIES -卒業-」の二度見ポイント3:聞き逃し&見逃しがちなプチアドリブシーン

ギャグとシリアスのシーンをテンポよく交差させることで、最初から最後まで飽きずに鑑賞できるのが『ROOKIES』の大きな特徴のひとつであるともいえます。

シリアスシーンでは川藤先生をはじめ、キャストそれぞれが涙を流しながら心揺さぶるセリフを口にするなんて場面も多々あるため、思わず見ているこちらまでもらい泣きさせてしまえることも……。

ただ、その反動が出てしまっているのか、ギャグシーンではさきほどまでの真面目な君たちはどこにいったのだと聞きたくなるほど、もう全員が自由。自由すぎて「絶対にこれ台本に書いていないよね」と思っちゃうようなプチアドリブシーンが満載なのです。

「ROOKIES -卒業-」の二度見ポイント3

コンビニシーンでの言い合いで小声のアドリブ

たとえば序盤で野球部10人がコンビニで立ち読みをしながら、新入部員について語り合うシーン。

もう日常茶飯事のことですが、些細なことから平塚と桧山の言い争いが始まります。

ただ、言い争いの内容が、「なんだと、この空振りヒゲ野郎」(平塚)「なんだよ、おめえもヒゲだろうが」(桧山)「……これは(ヒゲじゃない)キャビアだ!」(平塚)という、恐ろしいほど中身のない内容。いや、このようなかわいい言い争いこそ、ニコガク野球部になくてはならないギャグパートなのですが。

そしてくだらない言い争いを始めたふたりを見て、間に立っていた若菜が「まあまあ」となだめるのですが、その後、めちゃくちゃ小さい声で「何がキャビアだ、バーカ」と静かに平塚君をディスっています。もう聞こえるか聞こえないかの声量で平塚君のすべったギャグを流さずにしっかり拾ってあげています。

実際に台本に載っているのか、アドリブなのかわからない、何気ない若菜のこの一言。ただ、この一言により「やっぱり若菜はこうでないと」と改めて彼のキャラを強く根づかせるシーンでもあったのです。

絶対に台本に載っていないであろう自由なセリフ

甲子園予選の決勝日。過去のトラウマがフラッシュバッグして、プレイ中にミスをしてしまう安仁屋。

そしてベンチに戻ってきた彼は、川藤先生に向かい「(俺を)殴ってくれ、一発」と申し出ます。まだ心の中に甘えが残っており、舞い上がっている自分に気合いを入れなおしたいという思いから、安仁屋が口にしたこの一言。その後ろで彼の姿を真剣に見つめる部員たち。

ただ、川藤先生だけは安仁屋が口にした「殴ってくれ」という一言を本気でとらえ、「よし、歯を食いしばれ」と本気で殴ろうとします。いや先生、試合中ですよ。試合中。しかもまわりから丸見えのベンチでっせ。

当然、他の部員たちは「いや、試合中にこんな人目がある場所で殴るなよ」と言わんばかりに「ちょ、何やってんだよ!」と全員がかりで川藤先生を押さえつけます。

このときよく聞いてみると、部員それぞれが「やるなら裏でやれよ、裏で」「アホか!」など、思い思いの言葉を発しているのですよね。もう絶対にこれアドリブというか、そのときの雰囲気で自然に出てきた言葉ですよね。

そんな自然なアドリブ力が『ROOKIES』のギャグパートを盛り上げているのと同時に、よく耳をすませないと聞き逃しているであろうセリフも多々あるため、二度見以降でもギャグパートは新たな発見ができるシーンでもあるのです。

部員全員が揃ったときにさりげなく見せるアドリブ

また『ROOKIES -卒業-』において、アドリブはセリフだけではありません。部員全員が揃って何かをするという自由なシーンにおいても、きっと台本はなく、各自がそれぞれ思い思いの演技を見せているのだなと感じる場面がいくつもあります。

甲子園予選決勝の前日の夜。不安と期待を胸に全員が川辺で思い思いの気持ちを話すシリアスなシーン。しかし途中からは若菜の「うおりゃあああ」という叫び声を筆頭に、全員が制服のまま川へダイブ。まさに青春映画にありがちな爽やかな展開です。

そしてびしょ濡れになっていることなどおかまいなしで、全員がお互いに水をかけあい、無邪気に笑い合う。

一瞬、このシーンは台本通りなのかアドリブなのかと悩みましたが、全員が水のかけあいをしているなかで平塚君だけがなぜか空手の練習をしていたので、あっ、きっと自由に演じているシーンなのだなということがわかりました。

他にもエンディングロールで部員10人が卒業式を終え、帰路につく後ろ姿が流れるのですが、おそらく今作一番であろう、キャスト陣の自然な演技を見られるのがこのエンディングロールのシーンです。

部員たちからタックルをされる平塚の隣で若菜がむだに今岡とじゃれあっていたり、普段はクールな新庄が湯舟にちょっかいを出していたり、若菜が全員をおちょくりだしているところを狙い、今岡を背負った平塚が後ろから部員全員のもとに攻め入ったりと……。

もう一言でいうとTHE青春です。きっと多くの方がこのエンディングロールのシーンで涙を誘われたことでしょう。

ただ、二度見以降では一人ひとりの細かい自由なふるまいを注目してみてはどうでしょうか。筆者も今回、繰り返し何度もエンディングロールを見直しましたが、初見では気づかなかった部員それぞれの個性が一番わかるシーンであると改めて感動しました。

王道の青春物語でありながらもただの青春物語ではない

いまだなお、2000年代を代表する青春ドラマの金字塔として多くの方から愛される『ROOKIES』。

映画版『ROOKIES -卒業-』ではドラマ同様、笑いあり、涙ありの青春物語を約2時間じっくり楽しむことができます。

しかし、今作はただ笑って泣けるだけの青春映画ではありません。繰り返し何度見ても見落としがちな小ネタやキャスト陣のさりげない演技などが盛りだくさんの作品となっているのです。

久しぶりに高校生たちの青春物語を見返そうかとお考えの方は、ぜひ、そんな見逃していた細かい部分にも目を向けて二度見の鑑賞をしてみてはいかがでしょうか。

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WRITTEN BY
シングメディア編集部

映像・動作制作を手掛けるTHINGMEDIA株式会社のメンバーで構成しています。制作現場で得た映像・動画の知見をお伝えしていきます。