あらすじ:
劇場を運営するコアラのバスター・ムーンは、以前は活気のあった劇場に輝きを取り戻すべく、世界最高の歌唱コンテストをプロデュースしようと考える。感傷的に歌うハツカネズミや、内気なゾウ、25匹も子供がいるブタ、パンクロッカーのヤマアラシらが会場に集結し……。
『SING』予告編
『SING』シングメディア編集部レビュー
些細なことで落ち込んだり、悩んだりするときも多い現代社会。
気分転換に映画鑑賞をしようと思っても、重い内容の作品はメンタルにくるから見られない……なんてときもあるのでは?
そんな方にこそおすすめしたいのが、CGアニメーション映画「SING」。
最高に気分があがって、嫌な気持ちも吹き飛ばしてしまう! 今回はテンションがさがっているときにこそ見返したい「SING」の二度見ポイントについて、ご紹介いたします。
「SING」の二度見ポイント1:字幕と吹き替えの両方を見て気づける作品のすばらしさ
映画好きの方であれば、必ずや一度は直面した経験があるであろう問題。それは「海外映画は字幕で見るか、吹き替えで見るか」。
おそらく、「声も含め俳優の演技を見たいから字幕派」だと語る人もいれば、「いちいち字幕を読むのがめんどくさいから吹き替え派」だと決めている人もおられることでしょう。ちなみに筆者は基本字幕派ですが、疲れ切って字幕を読む気力すらないときは吹き替えで鑑賞しています。
まあ、この「字幕か吹き替えか」をテーマにした討論は、永遠に解決することがないでしょうし、個人の自由で良いと思います。
しかし「SING」に関してだけは、声を大にして言わせてください。今作は字幕版と吹き替え版、両方を見て初めて作品のすばらしさに気づけるのです。
キャラクターにマッチした豪華すぎる吹き替え版のキャスト陣
まずは吹き替え版のすばらしさについて。
公開前から話題にもなっていましたが、今作の吹き替え版は、キャスト陣がとにかく豪華!
「とりあえず話題の有名人を配役しておけばいいよね」という大人の事情的な背景は(おそらく)一切なく、キャラクターひとり一人にぴったりマッチしたキャスト陣が集結しているのです。もうこの時点で製作陣の本気がうかがえます。
たとえば、山寺宏一さん、宮野真守さん、坂本真綾さんをはじめとした声優陣。アニメ好きな方ならお分かりかと思いますが、この偉大過ぎるお方たちがそろう時点で、もう成功です。作品を見る前から大成功間違いなしだと言える顔ぶれです。
また内村光良さん、大橋卓弥さん、長澤まさみさんといった、異色の配役。正直、鑑賞前まではどんな形に仕上がっているのだろうと、まったく読めない状態だったのですが、蓋を開けると一切の違和感なし! キャラクターにマッチしすぎていて、お三方の意外過ぎる一面を垣間見られた気がします。
そして何と言っても、忘れてはいけないのがミーナ役のMISIAさん!
もう誰が予想していましたか、アニメーションの世界でMISIAさんの歌声が聞ける日が訪れるなんて。何ならMISIAさんの歌声を聞くためだけに二度三度見返す価値がありますよ、吹き替え版は!
……と、キャスト陣がそれぞれのキャラクターと最高にマッチしている吹き替え版。普段、吹き替え版は絶対に見ない方であれ、今作はぜひとも吹き替え版の鑑賞をしていただきたい。
あと個人的には、田中真弓さんとトレンディエンジェルの斎藤司さんが期待を裏切らず、おいしいところを全部もっていっちゃう吹き替えも必見です。
意外過ぎるキャスト陣とライブ映像さながらの字幕版
吹き替え版と同様、意外といえば意外なキャストが配役に選ばれた字幕版では、また一味違った世界観を楽しむことができます。
特に注目したいのが、普段は耳にすることがないキャスト陣の歌声。
ヤマアラシのロックガール・アッシュを演じたのは、有名女優のスカーレット・ヨハンソン。セクシーな女性という印象が強い彼女が、まさかのイケイケのロックンローラー役。意外すぎます。
しかし歌声を聞いて納得。まさかのスカヨハ、ばりばりのロッカーかと思うほど力強い歌声を披露してくれました。
また「テッド」でおなじみのセス・マクファーレンは、ネズミのマイクとして、色気あるダンディな歌声で熱唱。事前に配役を知らなければ、ほとんどの人がテッドと同一人物だと気づかないでしょう。
あと『キューティー・ブロンド』こと、リース・ウィザースプーンはブタのロジータを演じたのですが、一言で語るならかわいい。リースのイメージ通り、とにかく歌声がかわいい。もうこの一言につきます。
そして字幕版では、当たり前ですが名曲の数々を英語で聞けるので、自然と世界観のなかに入り込めます。
途中からはまるで自分も会場にいるかのような錯覚に陥り、映画ではなく、ライブ映像を見ている気分を堪能できます。
もし字幕版を鑑賞するのであれば、スマホやPCではなく、ぜひ大画面のテレビで見ていただき、コンサート会場にいる雰囲気を味わっていただきたい。
二度見鑑賞では一度目の鑑賞とは違うバージョンを
海外映画の字幕と吹き替えには、それぞれ良さがあり、人によって好みも違ってくるかと思います。
しかし今作は音楽をテーマにしていることもあり、字幕と吹き替え、両方を鑑賞することにより、初めて作品のすばらしさに気がつくことができるのです。
二度見鑑賞をする際は、ぜひ、一度目の鑑賞とは違うバージョンを選んでみてはいかがでしょうか。
「SING」の二度見ポイント2:アニメーション作品なのに感情移入してしまう理由とは?
“音楽×夢”がテーマでもある今作では、いたるところで、「夢は必ず叶う」というメッセージが含まれています。
ただ正直なところ、夢がどうとか暑苦しい展開が続くと、あまりにも現実離れしすぎていて、興ざめしちゃう方もなかにはおられるのではないでしょうか。
しかし今作は夢をテーマにした作品でありながらも、気持ちが冷めることはない。何なら物語が進むにつれ、深く感情移入してしまうのです。
その理由は練られたカメラワークや物語の設定に隠されていました。
ここぞという場面で使われる一人称視点
多くのアニメーション作品では、常に画面内に登場人物の姿が映し出されている、三人称視点の構図が採用されています。画面内に移る登場人物を目にすることにより、私たちは「周りから彼らの物語を見ている」という感覚で鑑賞をしているのです。
今作でも基本的には、この三人称視点で話が進んでいきます。
しかしここぞという場面において、キャラクターと同じ目線で物語の世界が見られる一人称視点に切り替わっているのです。VRで見る目線を想像してもらうとわかりやすいかと思います。
登場人物を遠くから眺めている感覚になる三人称視点と違い、一人称視点は自分も登場人物のひとりとして作品のなかに入り込んでいるかのような臨場感を味わえます。
今作でたとえるなら、劇場の入り口から客席に進むまでを一人称視点で映し出すことにより、まるで自分も観客のひとりとして会場入りしたかのような感覚を無意識のうちに植えつけられていたのです。
また劇場跡地で「ハレルヤ」を歌うミーナを見つけ、ムーンが近寄るシーン。途中までは三人称視点でムーンの姿が見えていたものの、最後は一人称視点からミーナの背後に近寄る画面に切り替わりました。
この視点の切り替えにより、まるで実際に自分がミーナに近づき、彼女の歌声をこっそり聞いているかのような不思議な感覚を味わえたのです。
鑑賞時まるで自分が作品のなかに入り込んだかのような感覚に陥った方は、おそらく、この一人称視点によって、より深く作品の世界観に引き込まれたのではないでしょうか。
登場人物たちのリアルな人生背景
キャラクターたちの人生背景も、今作で感情移入してしまう理由のひとつとなっています。
いつか自分の歌声を披露したい夢を持つものの、25人の子どもたちの子育てと家事に追われる日々で精いっぱいな主婦のロジータ。
父親のギャング家業の跡取りとして期待されるものの、本当は歌手になりたい夢を打ち明けられずにいるジョニー。
同棲している彼氏とバンドを組むもうまくいかず、些細な溝からすれ違いがうまれ、あげく浮気現場を目撃してしまうアッシュ。
夢をテーマにしたアニメーション作品であるにもかかわらず、なぜかキャラクターたちの人生背景だけが微妙にリアルで重いのです。
また天性の歌声を持つものの、極度のあがり症のため人前で歌うことができず、「どうせ自分にはダメだ」と自身を否定してばかりのミーナも、現代においては珍しくないタイプです。
「追い続けた夢は叶う」がテーマの明るいアニメーション作品であるものの、それぞれのキャラクターの人生背景にリアリティがあるからこそ、物語がすすむにつれ、登場人物の誰かしらに共感してしまう。この設定も感情移入しやすいポイントのひとつになっているのです。
まあ、欲望のままに生きているマイクと、生粋のエンターテイナーであるグンターはのぞいての話ですが……。
懐かしい名曲を耳にすることでうまれる感情
人間って不思議なもので、懐かしい匂いをかいだり、風景を見たりすると、当時の思い出が頭に浮かびあがることもあるのですよね。
もちろん歌も同じです。懐かしい歌を耳にすることで、当時の自分の人生が脳裏に浮かび上がることも。
今作には老若男女問わず、必ずや知っている曲がひとつはあるであろうという数々の名曲が登場します。
比較的新しいものだとレディー・ガガの『Bad Romance』や、ニッキー・ミナージュの『Anaconda』。
エルトン・ジョン『I’m still standing』や、スティービー・ワンダー『Don’t You Worry Bout A Thing』なども、世代によってはドンピシャだと感じる方もおられるのではないでしょうか。
そのほかにもきゃりーぱみゅぱみゅの『にんじゃりばんばん』や、The Chordettes『Lollipop』など、年代ジャンル問わず、「懐かしい~」と思える曲が盛りだくさん。
その懐かしいという気持ちが、物語を鑑賞するなかで感情移入するきっかけを与えてくれるのです。
ちなみに筆者はカーリー・レイ・ジェプセンの『Call Me Maybe』が流れた瞬間、夏フェスで友達と迷子になったあげく、その後熱中症で倒れかけた懐かしい記憶がよみがえってきました。
そうです、嫌な思い出も今作と一緒によみがえらせれば、笑って流すことができるのです。きっと。
感情移入するポイントに注目しよう!
フィクションのCGアニメーションであるものの、なぜかキャラクターたちが織り成す世界観に引き込まれてしまう今作。
もしかすると無意識のうちに感情移入させられてしまっていたのかもしれません。
二度見の鑑賞では、そんな感情移入しやすいポイントにも注目してはいかがでしょうか。
「SING」の二度見ポイント3:3DCGアニメーションのすばらしさを改めて実感できるポイント
今作は「ミニオンズ」や「ペット」でおなじみのイルミネーション・エンターテインメント製作ということもあり、細かい部分の3DCGにもこだわりぬかれています。
初見では物語の展開ばかり注目していた方は、ぜひ、CG技術にも注目してみましょう。
想像以上にこだわり抜かれた背景
今作ではいたるシーンで街並みや車が行きかう様子が描かれています。
言ってしまえばただの背景のひとつでしかないかもしれません。
しかし一時停止してでも、よくご注目いただきたい! 見れば見るほど、どれだけ精密に作られているかがよくわかるのです。
ショーウィンドウにキャラクターたちの姿を映し出すことでガラスの反射をリアルに再現していたり、トラックのサイドがサビで汚れていたりなど、本当に誰が気づくの? と思うような細かい部分まで丁寧にこだわり作られているのです。
またムーンの劇場の水槽が破壊し、洪水になるシーン。押し寄せてくる大量の水がとにかくリアル。このシーンの水だけ本物を合成したのではないかと思うほど、水しぶき一滴すらリアリティあるものになっているのです。
さすがはイルミネーション・エンターテインメントと言うしかないリアルさ。探せばまだまだこだわりのCG技術を発掘することができそうです。
絶妙すぎるキャラクターたちの表情
ふとしたときに見せるキャラクターたちの絶妙な表情も、今作のCG技術を語るうえでは欠かせないポイント。
たとえば水槽が破壊して、劇場が崩れるシーン。全員が洪水のなかで必死にもがくスリリングなシーンですが、このときのムーンの表情に注目していただきたい。
水の中で息を止め、必死でしがみついているのですが、何とも言えないシュールな表情をしています。水中のなかで誰かとにらめっこをしているのかと思うほど、謎の表情でもがいています。
またラストのコンサートシーンでは、気持ちよく歌うマイクのもとにヘリコプターの暴風が襲い掛かります。しかし歌うことをやめないマイク。必死で暴風と戦いながら歌い続ける表情がこれまたシュールなのです。
CGを駆使したアニメーション作品だからこそできる、これらの絶妙な表情。一瞬しか映らない貴重なシーンでもありますので、ぜひ二度見では見逃さずにチェックしていただきたいです。
CGを駆使した楽しい演出シーン
映画作品のなかでは、数時間、数日の時の流れをBGMとともにささっと流れ作業のように演出する展開があります。
今作でも野外劇場を手作りするシーンなどで、BGMのみの展開が使われていますが、これが何度見ても飽きない。
BGMと回想シーンしか流れていないのに、まるでキャラクターたちのセリフが聞こえるかのような雰囲気があり、鑑賞側を飽きさせない演出がされています。
また個人的に好きなのが、ロジータ渾身の工作。
リハーサルに出たいものの、ベビーシッターがやとえず、育児と家事をどうしようかと悩んだロジータが考え出した、自動家事マシーン。ピタゴラスイッチ的感覚で何回見返しても楽しめるのです。
今作ではCGを駆使した楽しい演出シーンも盛りだくさん。ちょっとした間ですら飽きることがありません。
3DCGってやっぱりすごい!
3DCG技術が当たり前になってきた昨今。しかし今作の技術を見返すと、改めて、CG技術がいかにすごいものかを考え直すことができます。
同時に初見では発見できなかった貴重なシーンがまだまだ盛りだくさん! 二度見鑑賞では初見で見逃していたCG技術に感動させられちゃいましょう。
気分をあげたいときに繰り返し見たい作品
個性的なキャラクターたちによる音楽とエンターテインメントを思う存分堪能できる、映画「SING」。
落ち込んだり悩んだりしたときはもちろん、ちょっと気分をあげたいときにも見返したい作品です。
そして鑑賞後は改めて歌の力ってすごい! と思わされること間違いないでしょう。
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