会計・バックオフィス

雇用契約を結ぶときのポイント7つ! 労働契約との違いや必要書類について

こんにちは、バックオフィス業務サポートサービス「AIBOW」編集部です。

正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態に関わりなく、誰かを雇う際には雇用契約について知っておく必要があります。

雇用契約は労働者と使用者の間で結ぶ契約の一つで、重要なもの。しかし中には、労働契約との違いがよくわからないという方や、後々トラブルにならないよう、雇用契約を結ぶときにどんな点に注意すべきか知りたいなどといった方もいるでしょう。

そこで今回は、小規模な映像制作会社の担当者や個人の映像クリエイター、デザイナーなどに向けて、「雇用契約を結ぶときのポイントや労働契約との違い、必要書類」などを詳しく解説します。

雇用契約とは?

雇用契約とはなにか

雇用契約とは、民法623条によって定められている労働供給契約の一つです。労働者が労働に従事し、使用者がその労働に対して報酬を与えることを約束するために交わす契約となります。

雇用契約は労働者を保護することを目的にしたもので、雇用契約を結んだ労働者は労働基準法や労働契約法上の保護を受けられます。

そのためたとえば雇用契約書で「有給休暇はない」と表記したとしても、年次有給休暇の取得は労働基準法で一定の要件を満たせば必ず発生するものと定められていることから、法律上無効となります。

なお、この雇用契約は正社員だけに限らず、契約社員やアルバイト、パートにも同様に結ばれなくてはならないものです。

雇用契約と似ている契約との違いを知ろう!

雇用契約と似ている契約との違い

雇用契約と似た契約に、「労働契約」と「業務委託契約」があります。混乱を招かないよう、それぞれの意味をしっかり理解しておくことも大切です。そこでこの段落では、雇用契約と似ている契約との違いについてそれぞれ説明していきます。

労働契約との違い

まずは雇用契約と似た言葉である「労働契約」との違いについて見ていきましょう。

労働契約は、労働者と使用者の間で取り交わす契約です。つまり、雇用契約とほぼ同じ意味となります。

法律上では「労働者」の範囲に少し違いがあります。

雇用契約では相手方に対して労働に従事するすべての人が「労働者」と定義されるのに対し、労働契約では「労働者」の基準が労働基準法第9条の考えに基づくものとなっているのです。たとえば同居の親族のみを使用する業務は、労働者から除外されます。

一般的には雇用契約と労働契約は同じ意味だと捉えても問題ありませんが、法律の観点から見ると若干の違いがあるということです。労働者と使用者の間でトラブルが起き、万が一訴訟に発展してしまった際には、この違いが焦点になる場合もあるため、注意しておきましょう。

業務委託契約との違い

続いて雇用契約と「業務委託契約」との違いについて見ていきましょう。

業務委託契約とは、一方が特定の仕事をおこない、相手方がその仕事に対して報酬を支払うことを内容とする請負類似の契約のことを指します。

雇用契約とは異なり、「使用者」と「労働者」というような主従の関係にない独立した事業者間の契約です。

業務委託契約を結んで働く人は「事業主」扱いとなるため、雇用契約のように「労働者」としての保護を受けられないというのも特徴であり、違いになります。

なお業務委託契約には、「請負契約」と「準委任契約」が存在します。

請負契約は請負人が発注者(依頼人)からある業務を請け負ってその業務をこなし、その成果に対して発注者が報酬を支払う契約です。業務が完了しなかった場合には報酬が発生しません。

準委任契約は提供された一定の業務に対して、発注者(依頼人)が報酬を支払う契約となります。成果を求められるわけではなく、業務の過程に対して報酬が発生するのが特徴です。

雇用契約を結ぶときに必要な書類

雇用契約を結ぶときに必要な書類

雇用契約を結ぶときには、「雇用契約書」と「労働条件通知書」という2つの書類が必要です。それぞれどのような書類なのかを詳しく説明していきます。

雇用契約書

必要な書類の1つめは、雇用契約書。雇用契約書は、使用者と労働者の双方が労働条件を確認した上で雇用契約内容に同意したことを示す書類です。

賃金や労働時間、就業場所、休日、業務内容などの労働条件について双方が確認した上で署名捺印をし、労使契約を取り交わす契約書となっています。

ただし雇用契約書は法的には作成義務がありません。労働者に対して使用者が労働条件を明示することは労働基準法で義務となっていますが、それを文書にするのは義務ではないのです。

そのため雇用契約書を作成しなくても、口頭でやりとりして、次に説明する労働条件通知書にて労働条件を労働者へ通知すれば法律違反にはなりません。

とはいえ、雇用契約書は双方が内容を確認した上で同意したことを証明する書類であり、労働条件通知書は使用者が一方的に労働条件を通知するもの。後々のトラブルを避けるためにも、双方が同意したことを証明できる雇用契約書も作成したほうがいいといえます。

労働条件通知書

2つめに必要となるのが、労働条件通知書です。これは賃金や労働時間、休日、労働場所などの労働条件を使用者が労働者へ通知する書類となります。

労働者を雇用する際、労働基準法第15条において、使用者は労働者に一定の労働条件を明示した書面を交付することが義務づけられています。つまり雇用契約書と異なり、交付が法律で義務付けられているのです。

なお雇用契約書と労働条件通知書を一つにまとめて作成しても問題ありません。

厚生労働省のWebサイトで、労働条件通知書のモデルとなるフォーマットが公表されているため、これをもとに作成すると便利です。

・参考サイト:一般労働者用モデル労働条件通知書(常用、有期雇用型) | 厚生労働省(PDF)

雇用契約書を作成しない場合のリスクについて

雇用契約書を作成しない場合のリスク

雇用契約書の作成は義務ではありませんが、作成していないとさまざまなリスクがあります。

まず雇用契約書を作成していないと、労働者側に不安が生じます。一般的には多くの企業が雇用契約書を作成しているため、「この会社はなぜ雇用契約書をくれないのだろう?」と不信感を抱き、雇用主との間に信頼関係を築くことが難しくなる可能性があるのです。

また労働条件について双方が書面で確認していない状態では、業務内容や人事異動、昇給などに関して認識のずれが生じる恐れがあります。

雇用契約書が作成されていれば、トラブルが起きたときも雇用契約書に基づいて解決できますが、それがないと紛争が複雑化してしまう可能性もあるのです。

雇用契約書は電子化も可能!

雇用契約書は電子化も可能

雇用契約書は電子化することも可能です。雇用契約書とは別に、労働条件通知書を作成する場合、雇用契約書は作成が義務づけられていないため、電子化しても問題ありません。

ただし雇用契約書が労働条件通知書を兼ねている場合は、電子化する際には従業員側の希望が必要となります。

採用する際に従業員から口頭で雇用契約書を電子化することに同意をもらっていても、後から「電子化を希望しない」と言われてしまうリスクもあるため注意。そういったトラブルを避けるためには、雇用契約書内に電子化を希望するという内容を盛り込み、証拠を残すようにするといいでしょう。

・参考サイト:「労働基準法施⾏規則」 改正のお知らせ | 厚生労働省(PDF)

雇用契約を結ぶときに押さえておきたい7つのポイント

雇用契約を結ぶときに押さえておきたい7つのポイント

雇用契約を結ぶときには、注意して意識しておきたいポイントが7つあります。それぞれどんなことを意識したらいいのか、一つひとつ詳しく紹介していきます。

1. 絶対的記載事項の漏れがないようにする

雇用契約書では、労働条件通知書で定められている「絶対的記載事項」を網羅する必要があります。

法律上、雇用契約書で記載するよう定められているわけではありませんが、実務上、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねるケースが多いためです。

「絶対的記載事項」は、次の項目となります。

・労働契約期間
・労働契約期間を更新する際の基準
・労働場所
・業務内容
・労働時間(始業、就業時刻)
・休憩時間
・休日、休暇
・賃金の決定、計算、支払い方法、締め切り日
・昇給に関する事項
・退職に関する規定
・交代制のルール

以上が最低限記載すべき事項となります。これらの抜けがないことをしっかり確認することが大切です。また企業によってはほかにも記載しておくべき事項があるため、それらも漏れなく記載しましょう。

2. アルバイトでも雇用契約は必要である

労使間の雇用契約については雇用形態を問いません。そのため正社員だけでなく、アルバイト・パートを雇うときにも雇用契約は必要となります。

パートタイム労働法6条に基づき、昇給、退職金、賞与の有無を書面で明示しなければなりません。時給については最低賃金が守られているかもしっかり確認しましょう。

あわせて、相談窓口の担当者の部署と役職・氏名についても明示する必要があります。

3. 正社員は転勤や配置転換の有無を記載する

長期間の就労が見込まれる正社員の場合、企業によっては将来的に転勤や配置転換が生じることもあるでしょう。

そのため正社員の雇用においては、転勤や配置転換の有無についても明記しておくと後々のトラブルを防ぐのに役立ちます。

転勤の可能性があることを明記していなかったにも関わらず配置転換を命じると、拒否されることもあるため注意。

そういったトラブルを防ぐために、「業務上で必要な場合は配置転換を命じる場合もある」などと明記する企業が多いです。

あらかじめ雇用契約書に転勤や配置転換の有無を明記しておくことで、ミスマッチを防ぐことにも役立ちます。

4. 試用期間があれば明記する

本採用する前の試用期間を導入しているのであれば、試用期間について記載することも必要です。試用期間でも雇用契約は成立するため、試用期間に入る前に雇用契約書を取り交わす必要があります。

試用期間は3~6か月程度までにとどめるのがよいでしょう。試用期間中の労働時間や待遇が本採用時と異なるときには、試用期間専用の雇用契約書を用意するのがおすすめです。

また試用期間中だからといって、本採用を自由に拒否できるものでもありません。ただし本採用後の解雇よりは本採用拒否の要件が少しゆるくなっています。

5. 有期雇用の場合は労働契約期間を明記する

契約社員やパート、アルバイトなど契約期間を定めた雇用契約を結ぶ際は、労働契約の期間を明記することも必要です。

契約社員の契約期間は、労働基準法で原則として3年以下と定められています。

また契約更新などによって通算5年以上働いた場合は、本人からの申し出があれば契約期間の定めがある契約社員から無期労働契約へ転換できる決まりになっているので、その点も覚えておきましょう。

・参考サイト:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等) |厚生労働省

6. 労働時間制を明確にする

労働時間制を明確にすることも大切なポイントです。労働時間制とは、労働者の労働時間に関する制度のことをいいます。

通常の労働時間制以外に、変形労働時間制、フレックスタイム制、みなし労働時間制、固定残業制などさまざまな労働時間制が存在します。

通常とは異なる変則的な労働時間制を導入する場合は、それぞれの労働時間制の内容に応じて雇用契約書を作成する必要があります。

7. テンプレートをそのまま使い回さない

雇用契約書の内容は企業によって異なるため、Web上などから入手したテンプレートをそのまま使い回さないよう注意することも大切です。

テンプレートをそのまま使い回すと、必要な項目が抜け落ちたり内容が実態と異なっていたりする恐れがあります。

テンプレートを使うとしてもそのまま適用せず、自社や労働者の雇用形態に応じたものに変更して、実際の内容と異なる点がないか、間違いがないかよく確認するようにしましょう。

雇用契約書を作成してトラブルを防ごう!

雇用契約書を作成してトラブルを防ごう

雇用契約は労働者を保護するための契約であるため、雇用形態を問わずすべての労働者と交わす必要があります。

雇用契約を締結する際は、法的義務はないものの、雇用契約書を作成することで後々のトラブルを回避できるため、できる限り作成しましょう。

雇用契約書の作成時は必要事項を漏れなく記載することも大切。担当者は雇用契約書について正しく理解し、労働者との信頼関係をしっかり築いていきましょう。


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WRITTEN BY
THINGMEDIAコーポレート編集部

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