アメリカ映画

「ブックスマート」が全国80館上映に拡大した裏側。uniのSNSプロモーションに迫る特別インタビュー

「高校生活の全てを勉強に費やしてきた親友同士のモリーとエイミー、青春を取り戻すために呼ばれていない卒業パーティーに乗り込む!」ーー子どもでもあり、大人でもある魅力的なキャラクターたちの2日間をポップに、そして丁寧に描いた映画「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」が大きな反響を呼んでいる。

公開初週、17館でのスタートだったが、大ヒットの状況を受け上映館が続々と増え、4週目の現在は36館で上映中(9/19現在)。またこれから上映する劇場も含め、累計上映館は全国80館にのぼる。コロナ禍の中で映画館が営業を再開して2か月半が経った。しかし、いまだ現状は厳しい。

少ない館数で公開した作品は特に、集客に腐心するものが多く、結果的に公開寿命が短くなっている状況が続いている。そのような中で、『ブックスマート』のように集客が衰えず、且つ上映館数が続々と増えているのは異例の現象と言えよう。

ブックスマートが人気を伸ばした背景には、多くの映画ファンたちの「口コミ」があった。その口コミを増加させる手助けを行ったのが、プロモーションの一端を担った”『映画とファンを繋ぐ、新しい出会い』を作り出す”映画コミュニティuni(ユニ)だ。

今回は、uniの運営メンバーの汐田海平さん、タカヒロさん、運営メンバーでブックスマートの配給宣伝を担当する有限会社ロングライドの大場琴美さんへの取材記事をお届け。映像がSNSの口コミによって、届く範囲を広げていく。その流れを拡大したいプロモーション施策のポイントと込められた想いを深掘りする。

ープロモーションを担当したuniについて教えてください。

タカヒロさん(以下、タカヒロ):uniは、”『映画とファンを繋ぐ、新しい出会い』を作り出す”をミッションに掲げたSNS上のコミュニティです。運営メンバーは映画好きが共通点の5人。普段は、映画を軸に様々なオンラインイベントを開催しています。コミュニティの場として活用しているLINE@には現在約5,300名が参加。SNSを起点としているため、ハッシュタグを利用して映画ファン同士がつながる企画なども実施しており、映画の新しい楽しみ方を提案しているんです。

ーuniがブックスマートのプロモーションとして行った施策を教えてください。

汐田海平さん(以下、汐田):オンライン試写会とオンラインイベントの企画、そしてハッシュタグを利用したSNS上の企画を実施しました。

ーuniにプロモーションを依頼した理由を教えてください。

大場琴美さん(以下、大場):青春映画なので、まずは若い世代に届けたい、という気持ちが強くありました。uniの企画に参加している層は10代後半から20代。届けたいターゲットとマッチしていました。

映画の公開に合わせて、私たちは試写会イベントを開催したり、webサイトや雑誌・新聞、テレビ番組に作品を紹介して頂けるよう売り込みをしたりしています。いまは情報化社会。誰かがすすめていた口コミをもとに映画館へ足を運ぶことが多いんです。なので、口コミを発生させる仕掛けづくりが重要。uniは、TwitterやInstagramで以前から企画を行っていて、すでに多くの反響を得ていました。口コミを発生させるための施策を依頼するには適任でした。

ーコロナウイルス感染拡大予防のために、オンライン試写会に切り替えた事例は多くあります。合わせてオンラインイベントを行ったのはどうしてですか。

タカヒロ:オンラインイベントは二部制で行いました。第一部はゲストスピーカーとしてLindsayさんをお呼びし、ブックスマートの魅力が深まる解説トーク。Lindsayさんは、アメリカのエンタメやカルチャーに詳しく、劇中に登場していた小ネタやトリビアについてお話していただきました。

第二部では、uniの運営メンバーが、SNS上で映画紹介をする際に気を付けているポイントを解説。ただ、「この映画のことをツイートして!」と試写会の参加者さんへ委ねるのではなく、「こうやって紹介するとより多くの人に届きますよ」とサポートをするような形にしました。実際に、僕たちが話したポイントを盛り込んだ口コミが試写会後に多く投稿されたんです。

ーSNSはアーンドメディアであり、そのコンテンツである口コミはコントロールが難しいように思えますが、お手本を見せることで投稿を促し、さらにそのクオリティも上げたんですね。

汐田:イベントパートはYouTubeでのライブ配信にして、アーカイブ動画も残しました。オンライン試写会は参加人数が限られますが、動画であれば無限です。試写会に参加できなくても、映画の魅力をより深く知って映画館に足を運んでもらい、さらに口コミ投稿を促すことができました。

ー具体的には、参加者にどのような投稿のポイントを伝えたのでしょうか。

タカヒロ:いままでの映画との比較について言及することをすすめました。ブックスマートは「新しい青春映画」という風に評されています。それは過去の青春映画と比較して、違った点が特徴的だからです。差異について触れることで、映画の魅力が浮き彫りになります。

たとえば、ブックスマートはエイミーがレズビアンであることをカムアウトしています。いままでの映画であれば、カムアウトする工程が映画に盛り込まれることが多かった。「同性が好きなのは、特別なことじゃない」から自然に描かれている。そういうフラットさについて言及すると、いままでの映画と違う、一見の価値がある作品であることが伝わります。

また、ネガティブなワードは使わない、映画の本質とはズレる身体的特徴に触れる表現は控えるなど、普段の投稿から気を付けているポイントについても話しました。

ーハッシュタグを利用したSNS上の企画について教えてください。

汐田:「#青春映画でつながろう」というハッシュタグと、投稿用のテンプレート画像を用意しました。テンプレート画像に、ブックスマートの画像とタイトルがデザインされていて、それを各々加工し、自分が好きな青春映画を紹介できるようにしたんです。

これまでも、uniでは、「#映画でつながろう」「#映画プロフ」といったテンプレート画像を用意し、映画ファンのSNS上での交流を促す企画を行ってきました。その反応がすごくよかったんですよね。


好きな映画について話すことを目的とした映画アカウントを作成している方は多くいらっしゃいます。そういう方は、自分の好きなものを発信したい、そして好きなものを介してつながりたい、という気持ちを持っていると感じてます。ハッシュタグ企画はその気持ちをうまく汲み取った企画です。

ー好きなものをつぶやく、という自然な行為のなかに、これまた自然とブックスマートの告知が含まれるという理想的な拡散の形ですね。

大場:uniは参加型のコミュニティであることが強みであり、ブックスマートのプロモーションにも効いたと思います。uniはメディアなどの一方向的な媒体を持っていません。その代わりに、つながることを大事にしています。配給会社として、その良さをいかに新作映画を楽しむモチベーションに繋げていけるか。uniのメンバーとミーティングを重ね考えていきました。

その中で大切にしていたいことは、運営する側も一緒になって楽しむ。より宣伝になるようなプロモーション効果は計画しているものの、uniの本質にある「(私たち自身でもある)映画好きに、楽しんでもらいたい」という気持ちがあったからこそ、多くの映画ファンに参加していただける施策になりました。

ー公式アカウントでも、加工を楽しめる素材を用意したり、SNSでも一瞬で目を引くショートムービーを投稿されたりしているのが印象的でした。

大場:uniのLINE@を登録している人に向けた限定動画も用意しました。劇中の印象的でポップなシーンを編集し、カラフルなテロップも挿入。素材をこちらが用意すれば、作品に共感した人、好きだと感じてくれた人は自然と発信してくれます。

ープロモーションをuniに依頼して、どのような点がよかったと思いますか。

大場:観客の方と一体化ができたことですね。映画を取り扱う参加型のコミュニティやメディアはあまりありません。いままでは、映画を公開するまでは、配給会社が観客に向って「こういう映画を公開するので、観に来てください!」と伝える形でした。それが、uniが間にはいることで、公開までにお客様に「ブックスマートの発信者になりたい」「私たちでこの映画を盛り上げよう!」という気持ちを持っていただくことができました。

SNSでの盛り上がりは、場所を問わず広がります。地方に住んでいる人にまで盛り上がりが届き、「ブックスマート、面白そうだな。私が住んでいるところでも公開してほしいな」と声にしてくださったおかげもあり、上映館の拡大につながりました。

ープロモーションを担った3人それぞれが思うブックスマートの魅力を教えてください。

汐田:まず、コメディーとして楽しめ、青春映画としてぐっとくる、エンターテイメント性の高い映画です。それが完成している上に、「こういう世界があったらいいな」と思える未来まで描かれています。

タカヒロ:セクシャリティやカーストなど、様々な境界が生活の中に根深い現実があるなかで、盛んにダイバーシティーが叫ばれています。でも「それで結局、どうなるの?」というのが本音。その先にある未来が、ブックスマートの舞台だと感じました。「あの世界に入りたい」そんな気持ちが湧くんです。説教臭くなく、時事的なメッセージがダイレクトに伝わってきます。

大場:監督を務めるオリヴィア・ワイルドは、俳優として実績ある方です。俳優の経験を活かし、出演者たちが心地よく演じられるよう環境を整えて撮影されたことが映像を通して伝わってくるくらい、役者が生き生きとしているのも特徴的です。本作がオリヴィアの初監督作品となります。

映画業界にはまだまだ女性監督が少ない中、オリヴィアは女性たちがもっと映画業界で活躍することを願っており、彼女自身がその先頭に立ってハリウッドを変化させていこうと意気込んでいます!現に今後監督作が目白押しで、さらに監督として飛躍していくでしょう。「彼女の初監督作品を、映画館で観た!」というのが貴重な経験となる将来がきっと来ます。ちなみに、ブックスマートの脚本家陣も女性です。女性が書き、女性が撮った、現代に必要不可欠な最強の青春映画を、ぜひ劇場で観てほしいです。

ー一瞬で目を惹くビジュアルだけではなく、これからの社会を考えるきっかけの一本となることが伝わりました。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』は全国大ヒット上映中

WRITTEN BY
野里和花(のざとのどか)

シングメディア株式会社 広報/1993年、鹿児島県出身。福岡の大学で哲学を学んだ後、就職はせず新卒フリーランスになる。ライターを中心に、コワーキングスペース運営やイベント企画などで活動。2017年9月に株式会社Ponnufに入社し、セミナーの企画運営、広報に従事。2019年7月、再びフリーランスに。2020年6月、シングメディアの広報担当として参画。My Hair is Badをこよなく愛する。