製作国:日本
上映時間:129分
監督:佐藤東弥
原作:福本伸行
脚本:大森美香
出演者:藤原竜也、天海祐希、香川照之、山本太郎、光石研、松山ケンイチ、松尾スズキ、佐藤慶、吉高由里子
あらすじ:
自堕落な日々を送る26歳のフリーター伊藤カイジ(藤原竜也)は、友人の借金の保証人になったために多額の負債を抱えてしまう。そんな彼に金融会社社長の遠藤(天海祐希)は、一夜にして大金を手にできる船に乗ることを勧める。その船で奇想天外なゲームをするはめになったカイジは、人生を逆転するための命懸けの戦いに挑む。
『カイジ 人生逆転ゲーム』予告編
『カイジ 人生逆転ゲーム』シングメディア編集部レビュー
たったひとつの選択が人生を大きく変えてしまうこともある、ギャンブル。
映画「カイジ 人生逆転ゲーム」は、ギャンブルにより一獲千金を狙う男たちの希望と絶望をスリリングに描いた作品です。勝負の行方が分かる瞬間は、鑑賞側も思わずざわざわしてしまうッッ……!
ただ、ギャンブル作品は勝敗が見どころのひとつでもあるため、結果が分かった時点で、改めて見返す必要もないと思っている方もおられるかもしれません。……が、そんなことはないのです!
「カイジ 人生逆転ゲーム」には、改めて見返したときにも楽しめる二度見ポイントがたくさんあるのです。
「カイジ 人生逆転ゲーム」の二度見ポイント1:音響にこだわった大画面で鑑賞したほうが良い理由
今作を映画館で鑑賞した方もいれば、スマホやタブレットなどで鑑賞した方もいるかと思います。
ちなみに筆者の場合、一度目はスマホで、二度目は41型のテレビで鑑賞したのですが、断言します。今作を見返すのであれば、大画面のテレビで、なおかつ音響にもこだわって鑑賞すると想像以上に楽しんで二度見鑑賞することができます。
音声により味わえる臨場感
まず大画面での鑑賞をおすすめしたい第一の理由が、音声により味わえる臨場感の高さ!
たとえばオープニング直後の帝愛グループ内でのやりとり。会長が「真の強者の条件とは何か?」と問いかけた際、幹部たちが「武力です」「知力です」と次々に答えていくシーンがありますが、それぞれの返答が前後左右から聞こえるようになっています。
このシーンをスマホやタブレットで鑑賞すると、作中におけるただのワンシーンという印象しか残らないのですが。大画面のテレビで音響設備にこだわる、もしくはヘッドホンを装着したうえで鑑賞すると、まるで自分も帝愛グループの一員としてその場にいるかのような臨場感が味わえるのです。会長の圧、怖ええ……。
また、序盤でエスポワール号に乗船した際、利根川のルール説明に納得がいかない乗船者たちがヤジを飛ばすシーンでも、あちこちから飛び交う怒声を耳にすることで、同様の臨場感を楽しむことができます。
開始10分ほどにして、帝愛幹部と借金に追われる人間の気分を味わえる、この仕様。まるで自分もカイジの世界観に入り込んだかのような錯覚を楽しめるので、よりスリリングな環境のなかで二度見鑑賞したい方にはおすすめです。
リアルさが増す100円玉のシーン
エスポワール号での勝負に負け、地下帝国へと送られることになったカイジ。
その際、地上で男性が落とした100円玉が転がり、溝から地下鉄のホームを横切り、さらに地下へと落ちていくCG映像により、いかに地上からかけ離れた場所に地下帝国が存在するのかという演出がなされています。
時間にして30秒ほどである、こちらのシーン。スマホやタブレットで鑑賞していてもリアリティあるCG技術により、この時点で地下帝国の恐ろしさを印象付けられた方も多いかもしれません。
ただ、大画面の鑑賞では、迫力がまったく違ってきます。たとえるならVRを装着したうえで、仮想空間にある100円玉を自分も一緒に追いかけているかのような錯覚に陥るのです。人によっては3D酔いするかもしれません。ちなみに筆者は若干酔いそうになりました。私の三半規管よ……。
たった30秒ほどのワンシーンではあるものの、鑑賞側にインパクトを与えた100円玉のシーン。大画面であれば、さらにリアルさを増した鑑賞を楽しめるはずです。
おなじみの「ざわ…ざわ…」がさらに楽しめる!
今作のラストゲームであり、最大の宿敵である利根川とのEカード勝負。ここにきて来ましたよ! あのおなじみの効果音「ざわ…ざわ…」が!!!
とはいえ原作ファンの方のなかには、鑑賞前におそらくこう思った方もおられることでしょう。「実写化でどうやってざわざわと再現するのだ?」と。筆者もこの点はめちゃくちゃ気になっていました。
結果としては、漫画のように文字ではなく、暗闇で草木が揺れてこすれ合うかのような不気味な音声により、ざわざわ感を演出されました。想像していた以上にリアルなざわざわだ……!
そしてこちらのシーンも、大画面で鑑賞するとざわざわ感特有の不気味さが一気に増し、思わず鳥肌が立ってしまいそうになるのです。
原作と同じあのざわざわの空気感をリアルに楽しみたい方にも、大画面での鑑賞をぜひおすすめします。
臨場感や迫力を味わえる大画面での鑑賞を!
VODの普及により、近年は映画やドラマをスマホやタブレットでサクっと鑑賞する方も多くなってきました。もちろんどのようなデバイスで鑑賞しても物語の内容は同じですし、人それぞれ、好みの鑑賞方法があると思います。
しかし今作だけは、ぜひ大画面で鑑賞していただきたい……! と思うほど、スマホとテレビでは味わえる臨場感や迫力がまったく変わってくる作品なのです。
特に初見をスマホやタブレットで鑑賞して以来見返していない方こそ、二度見ではぜひ、テレビを通して鑑賞してみてください。
「カイジ 人生逆転ゲーム」の二度見ポイント2:「キンキンに冷えてやがるっ……!」以外にもある隠れた名台詞
今作において、カイジの一番有名なセリフといえば、満場一致で「キンキンに冷えてやがるっ……!」の一択かと思います。もう一度見たらあの光景は忘れられません。現に筆者もいまだにキンキンに冷えたビールを飲むと、無意識のうちに「悪魔的だ……!」とつぶやいちゃうことがありますもん。
ただ、今作では鑑賞すればするほど、思わずカイジの真似をしたくなっちゃう隠れた名台詞はまだまだあるのです。
「キモイんだよ!!!」
序盤でバイト帰りのカイジがすれ違ったカップルから「キモい~」と言われ、逆切れするシーン。もうね、見返せば見返すほどこのシーンのカイジがかわいく見えてきます。
車で走り去るカップルに「キモいって何だよ、キモいって何だよ!」と大声で怒鳴り散らしたかと思えば、目の前に停めてあった高級車に八つ当たり。車に向かってボロクソ暴言を吐いたあと歩き出すのですが、その際、蚊が鳴くような声で「……キモいって何だよ」と泣きそうになりながらつぶやいています。いや、めちゃくちゃダメージ食らっちゃっているじゃん。
そして極めつけが、停車中のベンツを蹴りヘコませたあとに放つ「キモいんだよ!!!」の一言。荒れに荒れまくっています。でもそんなカイジの暴走ぶりが何だかかわいくも思えるこのシーン。個人的には「キンキンに冷えてやがる」と同じくらい大好きな名台詞です。
「戦おうよ、一緒に勝とうよ、信じろよ……」
利根川との戦いに連続で敗れ、再び地下帝国送りになりかけたカイジですが、ここで一発逆転の秘策を思いつきます。しかし手持ちの資金はゼロであるため、利根川と再選するためには、遠藤から金を借りるしかない……! しかしカイジが負ければ自分も地下帝国送りになるリスクを背負うため、当初は反対していた遠藤ですが。
このときのカイジの説得の仕方が、これまた何とも言えないかわいさを放っているのです。
断固拒否する遠藤に対して、「で、でも……戦おうよ、一緒に勝とうよ」と切なげにお願いするカイジ。そして「何であんたなんか信じられんのよ」と反論する遠藤に対して「信じろよぉぉ……」とこれまた切ない表情で訴えかけるカイジ。めちゃくちゃかわいい。
喜怒哀楽の激しいカイジですが、遠藤の前だけでは泣き顔を見せたり、切ない表情を見せたりと、最初から最後まで普段の彼とは違う一面を見せ続けてくれました。遠藤に対して切なげに懇願するカイジの一言も、今作における隠れた名台詞といっても過言ではないのでしょうか。
「このみっともねえ、奴隷が!!!」
ラストでついにEカード勝負で利根川を負かしたカイジ! これだけでも十分にスカッとする展開なのですが、それ以上の見どころといえば、ゲーム終了後のカイジのセリフです。
自分の負けをまだ受け入れられない利根川に対し、ネタバラシをしたかと思えば、「驕るよな(お前は)優秀だから」「ここまでクズを寄せつけずに勝ち続けてきたのだから」と追い込みに追い込んで……。そして最大の一言を放ちます。
「このみっともねえ、奴隷が!!!」
はい、完全にカイジの勝利です! 約2時間、帝愛グループに対するイライラでたまっていたフラストレーションも、このカイジの一言により完全に解消されました。めちゃくちゃスカッとする名台詞!
現実世界で苛立ちがたまりにたまったとき、こちらのシーンのみを見返して、たまったストレスを一気に解消するという鑑賞方法もおすすめです。
隠れた名台詞を探そう!
今回ご紹介した3つ以外にも、まだまだ名台詞が隠されているであろう今作。
鑑賞中はどうしても「キンキンに冷えてやがるっ……!」が脳内に残りがちですが、二度見鑑賞では、他の方がまだ見つけていない隠された名台詞を探しながら鑑賞しても楽しいかと思います。
「カイジ 人生逆転ゲーム」の二度見ポイント3:2時間以上の鑑賞があっという間に終わる理由
人により感覚は違うと思いますが、筆者の場合、2時間を越える作品の鑑賞だと、大体どこかのタイミングで一時的に集中力が切れてしまうことが多々あります(そんな奴が映画好きを名乗って、何か申し訳ありません)。
今作の上映時間も2時間越えの130分なので、いつも通りどこかで集中力が切れてしまうのだろうなと思っていたのですが……。なぜかまったく切れない。むしろ鑑賞後に「もう2時間以上経ったの!?」と自分でも驚いてしまったくらいです。
もしかすると筆者同様、今作を鑑賞し、あっという間に時間が経ったと感じた方もおられるのではないでしょうか。その理由について推察してみました。
序盤の10分でわかるすごさ
まず今作は何と言ってもテンポがいい! 特に序盤を見返すと分かりやすいかと思います。
・帝愛グループという、怪しい組織が存在する(怖い)
・主人公であるカイジはバイトでぎりぎりの生活を送っているにもかかわらずギャンブル好き(やべえ)
・保証人になった昔のバイト仲間が逃げ、突然多額の借金を背負わされる(人生終わった)
・借金を返したければエスポワール号に乗船しろ(怪しいけど行くっきゃない!)
という一連のやり取りが済み、舞台がエスポワール号に変わり最初のゲームが始まるのですが……。何と時間にして約10分。オープニングからエスポワール号に移るまでのシーンがたったの10分にまとめられているのです。めちゃくちゃ短すぎる!
しかし短くまとめたからといって、ストーリーが途切れたり、話がまとまってなかったりということもなく、鑑賞側もすんなりエスポワール号乗船の場面へと気持ちを切り替えて見続けることができます。
そんなテンポの良さで鑑賞側を飽きさせない脚本や演出により、序盤から作品の世界観に入り込むことができたのかもしれません。
登場人物の心の声から伝わる緊張感
今先ではカイジが誰かと勝負をするとき、お互いの心の声もセリフとして聞こえる演出になっているのですが、その際の台詞が絶妙にドキドキハラハラ感を誘うのです。
カイジはもちろん、船井や利根川。早口までとはいかないけど、ちょうど鑑賞側の心拍数をあげる速さで台詞を言い続けるため、彼らの心の声を聞いているだけでこちらもドキドキしてしまう!
そのためちょっと長めのゲームもドキドキハラハラしている間に終わってしまい、あっという間に勝負がついたかのような錯覚に陥ってしまうのです。
各場面に散りばめられた見せ場
場面の切り替わりが激しいのも、今作の特徴のひとつ。場面の移り変わりが激しければ激しいほど、だらだらと続く展開に飽きることなく、比較的集中して見続けることができます。そのうえ今作では必ずと言って良いほど、各場面で印象に残る見せ場があるのです。
エスポワール号ではカイジが船井にイカサマをされ、最終的にやり返すという最高のどんでん返しが!
地下帝国ではキンキンに冷えたビールを飲んだカイジが誘惑に負け、焼き鳥やつまみを買い、ひとり宴状態に!
そして鉄骨渡りことブレイブ・メン・ロードでは、石田のおっさんとの泣ける最後のやりとりが!
……と、場面ごとに目を離せない見せ場が用意されている点も、最初から最後まで夢中になって今作を見続けられる理由のひとつなのかなと思います。
何度見返しても夢中になれる!
テンポの良いセリフや展開、各場面のこだわりなどにより、あっという間に鑑賞し終えることができる今作は、何度見返してもラストまで夢中で見入ることができる作品です。
「結末がわかっている作品は集中して見られない」と考えている方こそ、ぜひ、二度見鑑賞してはいかがでしょうか。
何度見返してもスカッとした気分が味わえる作品
ギャンブルの恐ろしさや人間の汚さを描きつつも、人情味あふれる展開でやさしい気持ちにもさせられる「カイジ 人生逆転ゲーム」は、二度三度見返しても、夢中になって最後にはスカッとした気分が味わえる作品です。
映画でちょっとした刺激を味わいたい方は、ぜひ、お時間のあるときに二度見鑑賞してみてはいかがでしょうか。ただ、現実世界でギャンブルに挑戦する際はくれぐれもご注意ください。
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