あらすじ:
とある中学校の1年B組、終業式後の雑然としたホームルームで、教壇に立つ担任の森口悠子(松たか子)が静かに語り出す。「わたしの娘が死にました。警察は事故死と判断しましたが、娘は事故で死んだのではなくこのクラスの生徒に殺されたのです」教室内は一瞬にして静まりかえり、この衝撃的な告白から物語は始まっていく……。
『告白』予告編
『告白』シングメディア編集部レビュー
“イヤミスの女王”として数々の作品を生み出してきた、小説家の湊かなえさん。彼女の作品は必ずといってよいほど、ドラマや映画など映像化されています。
その中でも今回二度見映画としてご紹介したいのが『告白』です。担任教師が最愛の愛娘をクラスメイトに殺されたという告白から始まり、その後、従来のミステリーではありえない形での復讐劇が行われていく今作。
とはいえ「ミステリー作品は結末がわかったら二度見る必要はない」とお考えの方も中にはいるのでは?
しかし湊かなえさん原作の映像化作品は、何度見ても楽しめる二度見ポイントがさまざまな箇所に隠されているのです。
3つの二度見ポイント
「告白」の二度見ポイント1:意外とラストを覚えていない人が多い説
湊かなえさん原作の作品といえば、とにかく伏線まみれで最後まで何が起こるかわからない。それにくわえラストで大きな大どんでん返しが待ち構えているというのが大きな特徴。
しかしそのような練りに練られた構成であるにもかかわらず、一度見終わって数か月、数年経つとラストを忘れているという方も意外と多いのです。
序盤から中盤の印象が濃すぎる
誤解を与えないように申しておきますが、決してラストがおもしろくないとか、内容が薄いというわけではありません。むしろ「その発想はなかった!」と最後の最後に驚かされる作品ばかり。
しかしながら、なぜか時の流れとともに「あの作品の最後ってどうなったのだっけ?」「犯人ってどの人だったっけ?」と記憶が曖昧になってしまうのです。
その理由は序盤から中盤にかけての伏線の多さと謎解きで、見ている側を混乱させる場面が多々あるため。
途中「ああ、なるほど。そういうことね」となんとなく真実がわかったかのように見せかけ、実はそれがフェイクで後から他の真実が明らかになるなんて展開も多々あるため、もう話についていくのが必死。
でも続々と明らかになる真実を見るたびに「次はどうなるの?」というワクワクが止まらないため、くぎづけになってしまうのが湊かなえさん原作の作品のおもしろさなのです。
ただ難易度の高いミステリーであり、物語も二転三転するため、どうしても物語の序盤から中盤が強く印象に残りがち。
そのためラストで結末がわかりすっきりしたものの、序盤から中盤の印象ばかりが頭に残るため、時と共にラストを忘れてしまう方も多いのです。(ちなみに筆者個人調べです)
さて、一度鑑賞した方にクイズを出します
ということで一度『告白』を鑑賞した方に問題です。
ラストで爆弾による大量殺人を企てる、少年Aこと渡辺修哉。しかしそこに待ち構えていたのは主人公・森口悠子の復讐劇において最大の報復。その意外すぎるや意外なラストとはどのようなものだったのでしょうか?
…………はい、時間切れです。
いや~、意外に答えられなかった方も多いのではないでしょうか?
二度、三度見てもドキドキハラハラが味わえる作品
従来のミステリー作品などは一度見終わると、結末がわかったことでお腹がいっぱいになり、特に二度見る必要もないと思いがち。
しかし湊かなえさん原作の作品は、時を経てから二度見し直しても初見のようなおもしろさが味わえるのです。なにより何度見てもドキドキとハラハラが味わえる展開続きなのが一番の魅力!
もし結末を忘れてしまっているという方は、ぜひ「この後ってどうなるんだっけ?」「確かこの子が怪しかったのだよな」など、思い出しながらぜひ二度見の鑑賞を。
「告白」の二度見ポイント2:森口悠子役の松たか子さんのなんとも言えない恐怖
今作の見どころのひとつといえば、主人公である教師・森口悠子を演じる松たか子さんの演技力の高さ。
いや、もちろんプロの大女優さんであるため、演技力が高いのは当然なのですよ。ただ『告白』で松たか子さん演じた森口悠子は本当に恐ろしい。
森口悠子という役を完全に演じているのか、それとも森口悠子という人間自体が松たか子さんに乗り移っているのかわからないほど、私たちが知る普段の松たか子さんの姿はどこにもない。
ただそこにあるのは復讐という二文字にだけとりつかれた森口悠子という恐ろしい人間なのです。
冒頭で見せた延々と語る口調から伝わる怒りと恐怖
まず冒頭の約30分では、教室内で担任教師である森口悠子が最愛の愛娘を殺した犯人がこのクラスの中にいるという事実とその真実を淡々と説明していきます。ええ、ミステリー作品のラストによくある、刑事が犯人を追い詰めるかのようなあの展開です。
しかし他のミステリー作品と違うのは、松たか子さん演じる森口悠子が冷静すぎるということ。
顔色は一切変えず、丁寧な敬語口調で愛娘が殺された事件のすべてを告白していくのですが、その様子がかえって不安をあおり、なんとも言えない恐ろしさがあるのです。その表情と口調から伝わってくるのは犯人に対する強い恨み。
またときおりやさしい笑顔を見せるのですが、目が全く笑っていない。思わず鳥肌が立ちそうになるほど、ぞくっとさせられます。
そのようにただ教室内を歩き回りながら語るという何の変哲もないシーンなのですが、時が経てばたつほど、この森口悠子は本当に血の通っている人間なのかと思うほど冷たい空気がビシビシと伝わってきます。
そんな冒頭の約30分だけで森口悠子がいかに冷静でありながらも、冷酷な人間であるかと見ている側に印象づけた松たか子さんの演技力の高さに脱帽です。
母親の顔から復讐者の顔に変わる恐怖の瞬間
しかし生徒たちの前では一切本心は見せず、冷酷な一面をこれでもかというほどあらわにする森口悠子ですが、愛娘が亡くなったときや、ふとひとりになったときに見せる号泣シーンは、見ているこちら側も胸をうたれます。
特に彼女が嗚咽を吐きながら崩れ落ちる姿は、本当にあの冷酷な森口悠子なのかと思わずにはいられないほど大きなギャップを与えられました。
ただ何が怖いかって、ひとり雨の中崩れ落ち号泣するシーンですよ。愛娘を思い出し泣くだけ泣いて立ち上がった瞬間、最初に彼女が口にしたのが「……ばかばかしい」の一言。
一瞬にして母親である森口悠子から、復讐者である森口悠子へとスイッチを切り替えるこの様子。
その一瞬だけで森口悠子はもはや犯人への復讐だけを生きがいに今を生きていることがひしひしと伝わってきます。
ラストのラストで見せた今作一番の強い憎しみ
そして今作の松たか子さん最大の見せ場といえば、ラストのラスト!
最大の復讐劇をやり遂げたのち、絶望に打ちひしがれ、泣き叫ぶ渡辺修哉のもとへ向かうと、無表情で「これが私の復讐です」と静かに口にします。
そして彼の髪を掴んで顔をあげさせたかと思うと、恐ろしいほど見開いた目と震える表情でミステリー作品のラストにありがちな「ここからあなたの更生への第一歩が始まるのです。」という一言を口にし、ラストをむかえるのかと思えば……。
次の瞬間、彼女が口にしたのは明るい口調で「……なーんてね」という一言。いやいや、怖い! 怖すぎる!
この一言から「あなたは人を殺したけど少年法で守られるよね。でも頑張って更生してね、なんてきれいごとなど私は言わない。一生後悔し続ければいい。そして私も一生お前を恨み続ける」という森口悠子の本音がひしひし伝わってきます。
いやもう本当に最後の最後に鳥肌がたったと同時にド肝を抜かれましたよね。
何度鑑賞しても言葉にはできない恐怖を与えられる
人の命を奪った者に対し、最後は遺族が優しい言葉をかけたり、逆に犯人の命を奪ったりというミステリー作品も多い中、今作はとにかく復讐の嵐。しかも犯人を法でさばいたり、命を奪ったりする復讐ではなく、彼らを精神的にとことん追い込むという形での復讐劇。
その恐ろしさがこれでもかというほど伝わってくるのは、松たか子さんの演技力の高さがあってこそできる神業。もう途中から演技ではなく、本当に犯人を恨んでいるのではないかと思わされるほどの怪演です。
おそらく一度鑑賞した方であれ、松たか子さん演じる森口悠子の冷酷さには何度見ても引き込まれ、言葉にはできない恐怖を与えられることでしょう。
「告白」の二度見ポイント3:作品に良い味をだすその他のキャスト陣の演技
松たか子さん迫真の演技に夢中になり、森口悠子の冷酷さに虜にされがちな今作。
しかしその他にも今作には今をかがやく俳優さんたちが数多く登場し、その演技力の高さで作品にさまざまな色をつけてくれています。
なによりそれぞれの演技がまたなんとも言えない良い味をだしているのです。
犯人役すらも出し抜く演技を見せる北原美月役の橋本愛さん
いまや演技力の高さで数々の作品にひっぱりだこである、女優の橋本愛さん。
今作では犯人である少年Aと少年Bのうち、少年Aこと渡辺修哉の過去や本音を知るうえで欠かせない重要や立ち位置である委員長・北原美月を演じているのですが、とにかくこの美月のキャラが濃い。
もう濃すぎてクラスメイトの中でメインである犯人役2人を出し抜いてしまうかのような存在感の高さをかもしだしています。
おまけに一度彼女が語り始めると、どれだけ長いシーンでも見入ってしまう。その理由が橋本さんの演技力の高さもそうなのですが、目力の強さがすごい! 見るものすべてをくぎづけにしてしまうかのような迫真の演技で作品の中にとりこまれてしまいます。
そんな橋本さんの演技は、松たか子さんに負けず劣らずの冷静さをもちつつも、ときに中学生女子らしいリアルさも映し出すという両極端の姿を見せてくれます。
空気の読めない教師・寺田良輝役の岡田将生さん
森口悠子の代わりに担任として赴任してきたのが、岡田将生さん演じる教師の寺田良輝。
岡田さんといえばイケメン俳優でありながら、恋愛作品からシリアスな作品までこなし、どの作品においても完全に役になりきる演技派俳優。
しかし今作での立ち位置といえば、恐ろしいほど空気が読めずにすべりまくる熱血教師役。
まあ自分の赴任前にこのクラスで恐ろしい事件の告白大会があったことなど知らぬため、仕方ないのですが、それをおいてもクラスでかなり浮いてしまっている。もはや生徒たちの暇つぶしのおもちゃ代わりとして、バカにされているという悲しき状況。
ただ本人としてはその様子を見て、「自分は生徒たちから頼りにされているのだ」と勘違い。熱血教師として「みんなで良いクラスをつくろう!」とさらに意気込みを見せるという悲しいけどどこかシュールな役柄を演じています。
そのうえ森口悠子の手のひらの上で転がされて、結果的に何も知らずに復讐劇を手伝う羽目になってしまう。
もうここまでくると、なんだか途中から寺田が不憫に思えてきて仕方ありません……。
とはいえ本格的ミステリー作品において、少々シュールなギャグ要員的なキャラという難しい役柄も完璧にこなす岡田さん。今作はそんな彼の実力のすばらしさがわかる作品でもあります。
ただただ癒しでしかない娘役の芦田愛菜さん
暗い展開続きの今作において唯一の癒しである、悠子の娘役を演じた芦田愛菜さん。
もう超絶にかわいい。この一言につきます。
そりゃこんなかわいい愛娘を理不尽な理由でふたりの生徒に殺されてしまったのですから、悠子の憎悪も半端ないよなと思えるほど、もう超絶にかわいくて仕方ありません。
なによりいまや実力派女優の芦田愛菜さんのあどけなさが残る様子が拝める今作。ときおり見せる笑顔がとにかく天使でしかないのです。
二度見以降では昔から演技力のある芦田さんの姿を拝めると同時に、この世に舞い降りた天使かと思うほどの笑顔が復讐劇の続く今作の中で一瞬の癒しを与えてくれるはずです。
何度見ても二転三転する展開に目がくぎづけになる作品
「復讐からは何も生まれない」と耳にすることもよくあるかもしれません。
しかし今作を見るとこれまで私たちが見てきた“復讐”とはまったく違う世界を見せつけられ、鑑賞後にはひとり深く考えさせられることになります。
なにより次の展開がまったく読めない状況にくわえ、意外な展開続きからのさらに意外過ぎる結末。そしてピースがはめられていくことにより、事件の全貌が見えてくるドキドキ感。
そのようにミステリーでありながらも、従来のミステリー作品とは大きく異なる『告白』は、何度見ても二転三転する展開に目をくぎづけにされる作品となることでしょう。
『告白』を配信中の動画サービス
動画サービスで『告白』を観よう!
最適で最善で最高な「BBBプロデュース」を提供します
THINGMEDIAでは、ゲーム特化の映像制作「Chunee」、Web/アプリ・SaaS特化の映像制作「CX BOOST」、オンラインイベント・配信番組プロデュース「SNATCH」など、映像にまつわる幅広いサービスを提供しています。
ぜひ一度、当社のサービスをご覧ください。