あらすじ:
性格は正反対だがどこかウマの合う高校2年生の内海想(池松壮亮)と瀬戸小吉(菅田将暉)は、放課後にいつも河原で話をしながら暇つぶしをしている。くだらない言葉遊びや、思いを寄せる女子へのメールの内容、時にはシリアスなことも語り合う。そんな二人を見守る同級生の樫村一期(中条あやみ)に瀬戸は憧れているが、樫村は内海に好意を抱いており……。
映画『セトウツミ』予告編
映画『セトウツミ』シングメディア編集部レビュー
突然ですが、映画好きのみなさんにお伺いいたします。
「同じ映画でも映画館では集中して見られるのに、家だとなぜか最後まで集中して見られない」と感じたことってありませんか?
おそらく映画館だと作品だけしか目に入ってこないから最後まで集中力をたもって見終えることができる。
しかし場所が家に変わった途端、ちょっとだらけたシーンに入るとついスマホを触っちゃったり、ゴロゴロしながら鑑賞しているうちにうたた寝をしちゃったりして、途中で集中力が途切れてしまうのかもしれません。
そんな方々に朗報です。今回ご紹介する「セトウツミ」は映画鑑賞の際に必須ともいえる“数時間の集中力”がまずいらない。何なら映画館ではなく家でゴロゴロしながら見てほしい。そのうえ何度見ても笑えるというお家で二度見鑑賞するにはピッタリの作品なのです。
「セトウツミ」の二度見ポイント1:ラジオ感覚で何度も鑑賞できる新感覚の映画
今作を一言でたとえるなら、ラジオ感覚で見られる(聞ける)映画。
関西の男子高校生ふたりが河原に座り、延々と喋り続けるだけ。青春映画であるにもかかわらず、学校のシーンもなければ、胸ときめく展開もない。ただただ、最初から最後まで同じ河原のシーンが映り続けているだけという、他の映画とは一味違う作品となっています。
……にもかかわらず、終始ずっとニヤニヤさせられてしまう。おまけに時折、予想外のオチをぶっこんでくるから思わず「ふふっ」と声を漏らして笑ってしまうのです。
集中力は一切不要!ゴロゴロしながらの鑑賞がぴったり
映画の試写会では主演の菅田将暉さんが、開口一番に「完全にDVDで見る感じのこの映画をこのでっかいスクリーンで見に来てくださったみなさまが大好きです」と冗談交じりで話していた通り、確かに今作は映画館で一回鑑賞して終わりではなく、DVDを購入して家で何度も見返すべき作品であると、筆者は感じました。
というのも物語としては、瀬戸(菅田将暉)と内海(池松壮亮)が関西弁でボケとツッコミをひたすら繰り返す。そして全六話構成となっているため、一本の物語が約十数分で終わる。
そのため冒頭でもお話していた通り、見始める前に「よし、今から映画をしっかり見るぞ」という意気込みもいらなければ、必死で集中力をたもつ必要もない。
むしろ作品の中のふたりが河原でだらだら語り続けているのと同じく、鑑賞する側もお菓子やお酒でもつまみながら、ゴロゴロして鑑賞するほうがより作品の世界観の中に入り込めるという、従来の映画にはまずないであろう新感覚の作品なのです。
1時間15分でエンディングを迎えるありがたさ
また今作が二度見、三度見にぴったりである理由は、内容だけでなく、上映時間にもあります。
何とこちらの「セトウツミ」。全六話とたっぷり見ごたえのある内容であるにもかかわらず、上映時間がたったの1時間15分。
おそらく他の映画であれば、1時間15分あたりってクライマックス前であるものの、主要人物同士のだらだらした会話が続き、家で鑑賞しているとちょっとだらけて心が折れそうになる時間帯です。(※決して他の映画をディスっているわけではありません)
しかし「セトウツミ」はそろそろ集中力が切れるであろう、1時間15分というベストなタイミングでエンディングを迎える。
このちょうどいい時間のおかげで、「よし、今夜は映画を見るぞ!」なんて意気込む必要もなく、「とりあえず軽く映画でも見てから寝よう」的なノリで繰り返し鑑賞でき、くすっと笑って気分が晴れたまま眠りにつくことだって可能なのです。
音声のみで鑑賞しても笑って楽しめる
そして「セトウツミ」が二度見鑑賞に向いているポイントは、先ほども申し上げた通り、集中せずとも内容が頭に入ってくるため、ラジオ感覚で聞いて楽しむことができるのです。
実際、筆者も実家で特にすることがなかった際、おそらく三度見になる「セトウツミ」を鑑賞していたのですが、とあるシーンで突然、洗濯物を畳みながら「ふふふっ」と後ろにいた母が吹き出していたのですね。
あれ、もしかしてお母さんも洗濯物を畳みながら一緒に見ていた? と思ったのですが、本人いわく、映像は一切見ていなかったとのこと。ただ音声だけを聞いていて、シュールなボケとツッコミの掛け合いに思わず笑ってしまったのだとか。
そんな筆者の母をご覧いただいてもわかる通り、「セトウツミ」は音声だけでも十分に楽しめる。何度も鑑賞して映像が脳裏に焼きついたら、次はラジオ感覚でただ流しておくだけという新しい見方もできる作品です。
「セトウツミ」の二度見ポイント2:初見で見逃しているであろうシュールポイント
最初から最後まで、舞台となる河原以外はほとんど映らないという斬新な作品でもある「セトウツミ」。
そしておそらく初見の際は、河原の階段に腰かけ、シュールなボケとツッコミを披露する瀬戸と内海の姿ばかりが目に入っていたかと思います。
しかし二度見の際はあえて背景と化している、後ろの道路を横切る人たちや、役者さんたちの細かい表情に注目してください。もう確信を持って言っちゃいますけど、絶対に初見では見逃しているシュールポイントが今作にはいくつも隠されていたのです。
散歩を拒否する犬 VS 意地でも続行させるご主人
今日も今日とて、同じ河原で何気ない会話を続ける瀬戸と内海。その後ろを行きかう車や人々。まさに“何気ない日常”とはこういうことなのだなと思わされるワンシーン。
そんなとき、とある場面で犬を二匹散歩する女性の姿が背景に映り込みます。ええ、これも何気ない日常の一部です。
しかし次の瞬間、一匹の犬が「いやもう歩くの疲れたわ、抱っこしてや」と言わんばかりに歩道のど真ん中で横になり、散歩を断固拒否。そんなことなどつゆ知らず、もう一匹の犬は「ご主人様、はよ行きましょう」とドヤ顔でどんどん進もうとする。
そんな様子を見かねたご主人様。「もうちょっとで家着くからはよ歩き!」という面持ちで、散歩を拒否する犬を起こし、そのまま場面外へとフェードアウトしていきます。
もちろん通行人役の方(と犬)なのでセリフなど一切ありませんよ。しかし散歩を拒否する犬とご主人様のやりとりを見ていると、なぜか不思議とこんなセリフが頭をよぎってしまう一瞬のシーン。
ただでさえダブル主演の演技がシュールなのに、後ろの通行人までシュールな行動を見せてくれる。
二度見の際はぜひこの散歩中の女性と犬二匹を探してみて、彼らのやりとりを脳内で想像してみてください。きっとシュールさが増して初見以上にニヤニヤさせられてしまいます。
なぜか何度も行くかうピザの宅配バイク
今作で瀬戸と内海が河原で会話をするのは、学校が終わる15時半から内海が17時に塾へと向かうまでの約1時間半という設定になっています。この約1時間半、毎日同じ河原で時間をつぶすというのが二人のルーティンになっているのです。
ただ筆者は気づいてしました。それはやたらと後ろの道路をピザの宅配バイクが走るという事実に。
いや、15時半から17時って昼食にしては遅いし、かといって夕食には少し早すぎる時間ですよ。それにもかかわらず、ピザの宅配バイクが1時間15分の上映中の中で三台も通っている。何なら一回は二台並んで通り過ぎて行っちゃっていますからね。
もうそれに気がついた瞬間、瀬戸と内海の会話どころではないですよ。
この地区に住む人、どんだけピザが好きなんだよ。二台バイクが並んで配達しなければならないくらい大量の注文が入るって、どこの誰が真昼間からピザパーティーをしているんだよ。と、もうピザのことで頭がいっぱいに。
先ほどの犬の散歩同様、初見では見逃している方も多いであろう、謎の大量ピザ配達。二度見ではぜひそちらもチェックしてみてください。おそらく脳内がピザにおかされ、何なら時間帯によってはピザが食べたい衝動にかられるかもしれません。
菅田さんの演技に思わず笑っちゃう池松さんのかわいさ
今作でダブル主演を務めた菅田将暉さんと池松壮亮さん。
菅田将暉さんといえば、ご存知の方も多いかと思いますが、大阪出身のバリバリの関西人。オーバーリアクションでボケもツッコミもこなす瀬戸役としては、まさに打ってつけの存在です。
ただ、おそらく菅田さんの演技が自然すぎたのでしょうね。作中では、ちょいちょい冷静にツッコミを入れる役であるはずの池松さんが我慢しきれず、口もとが緩んで笑っちゃうシーンがいくつかあります。
でも必死に笑いをこらえて、冷静沈着なキャラに戻ろうとする池松さんの姿がめちゃくちゃかわいいのです。同時にこれが役者魂かと思う姿をまじまじと見せつけられます。ただ、それ以上にめちゃくちゃかわいいのです。
初見でそんなかわいい池松さんを見逃した女性陣の方は、二度見で池松さんの表情を注意深く観察してみてください。必死で笑いをこらえている表情に思わずキュンとさせられてしまうはずです。
「セトウツミ」の二度見ポイント3:大阪出身の菅田将暉さんが見せる細かい関西人あるある
今作でばりばりネイティブの関西弁を披露し、自然すぎるほどの大阪の男子高校生を演じた菅田将暉さん。
関西人である筆者も、今作の菅田さんを見て「おるな、こんな高校生」としみじみ感じたほど、その演技は自然そのもの。いや、もはや素でしかないと言っても過言ではないほどのクオリティでした。
ただ、菅田さんの演技がすばらしかった理由は何も流暢な関西弁だけではありません。台本通りなのか、アドリブなのかわからないほど、関西人あるあるが満載のセリフまわしと動きも今作を盛り上げるひとつの起爆剤となっていたのです。
自分から言い出して変なプレッシャーをかけてくる
第一話でいつも通り時間をつぶす瀬戸と内海。しかしその前にはただ河原を見つめて思いにふける謎のおっさんが。
で、瀬戸が内海に言いますよね。「ちょっとあのおっさんの顔見てきてや」と。そして最初は拒否していた内海ですが、しぶしぶおっさんに近づき顔を確認するはめに。
その際、瀬戸が内海に言い放った言葉が「バレへんようにな、自然にな!」の一言。
そうなんです。関西人ってなぜか気になる人が現れると、周りにいる人物にも「ちょ、あの人私と同じキーホルダーかばんに付けてるねんけど、ちょっと見てみてや」となぜか強制的に共有したがる。そのくせ「絶対バレへんようにな、自然な感じで後ろ向いて確認してや」とめちゃくちゃプレッシャーをかけてくる。
何でかって? わかりません。ただこれが関西人の性なのです。
需要と供給のバランスが崩壊したお願い
また瀬戸が内海にお願いをするワンシーン。むちゃぶりともいえるお願いに、これまた内海も最初は「嫌やわ」と拒否を続けます。
そしてその際、瀬戸が内海に言い放った言葉が「頼むわ、バナナあげるから」の一言。
そうなんです。関西人の天秤のかけかたってものすごく極端なのです。需要と供給のバランスがめちゃくちゃなどころかもはや破綻しているのです。
「ちょっと〇〇さんのLINE聞いてきてや、このお気に入りのボールペンあげるから」「悪いけど追加の買い出し行ってくれへん?笑顔で見送るから」といった会話は日常茶飯事。
何なら「一生のお願いやから」って言葉をすでに人生の中で百回以上使っている関西人も珍しくはないと思います。
いやでも、関西圏外の方が万が一このようなことを関西人から言われても本気でとらえないでくださいね。あくまでも何かボケなあかんという関西人の性やと思って軽く受け流してくださいね。
おそらく瀬戸にいたっても「頼むわ、バナナあげるから」言うてますが、はなからバナナをあげる気はさらさらないですからね、絶対。
最悪な状況ではリアクションだけがむだにでかい
そんな関西人あるある満載の今作ですが、中でも一番「菅田さんはほんまに生粋の大阪っ子やな」と感じたのが、自分の部屋にでかい蜘蛛が出たという話のくだり。
ただでさえ蜘蛛嫌いの瀬戸。そこに追い打ちをかけるように内海が「蜘蛛がおるってことは、エサとなるゴキブリもおるってことやで」と知りたくもない情報を与えてくれます。
それを聞いた瀬戸役の菅田さん。「うわっ、もう最悪やん!」とその場に倒れ込むオーバーリアクションを見せます。
まあでもね、よく言われるのですが、関西人の方って最悪な状況に陥ったときリアクションだけが大きく、そこまで深刻な様子を見せないのですよね。実際、瀬戸の「うわっ、もう最悪やん!」もそこそこ深刻な状態でありながら、あまり絶望しているようには見えない。
長年関西人として生きている筆者や周りの人たちも「最悪や、終電逃した!」「終わった、LINEブロックされた!」とそこそこ深刻な状況に陥っても、ただリアクションだけがオーバーであまり深刻そうに見えない。見えないからこそ、周りからは心配されるどころか大爆笑されるということが多々あります。
これこそ関西人あるあるの代名詞と呼んでも言い特徴だと思います。
見れば見るほど関西人の細かい習性がわかる
細かい関西人の特徴を素で演じきった菅田さん。おそらく繰り返し見れば見るほど、多くの関西の方は彼に親近感を覚えることになるでしょう。
そして関西圏外の方々の中には、この一風変わった関西人の習性を見て「ちょっと何言っているかよくわからない」と思われる方もいるかもしれませんが、あまり深く考えず、「何か関西人ってこういう奴らなのだ」と温かい目で二度見をしていただけるとありがたいです。
二度と言わず、何度見ても世界観を楽しめる作品
場面の切り替えもほとんどなし。大きなアクションはもちろん、そもそも座っているだけなので動きもなし。と、映画としては珍しいタイプの演出が続く「セトウツミ」。
でもなぜかシュールな世界観に見れば見るほど引き込まれてしまう中毒性の高い作品でもあります。
おまけに家でひとり軽いノリで何度も見返せるのがこの作品一番のポイント。
「明日の朝早いけど映画を見たい」「気分が落ち込んだからサクっと気持ちを切り替えたい」という時にはぴったりの一作ですので、ぜひ、二度見と言わず、繰り返し何度も見て独特の世界観をこれでもかというほど味わってみてください。
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