ディレクターの田口将伍です。
2020年3月18日(水)、2020年3月25日(水)の2週に渡ってBS日テレで放送された「UNIDOL~大学対抗女子大生アイドルダンス日本一決定戦2020冬~前編・後編」を制作しました。
UNIDOL~大学対抗女子大生アイドルダンス日本一決定戦|Hulu
UNIDOL(ユニドル)とは、アイドル好きの女子大生たちによるアイドルコピーダンスサークルが、大学対抗で日本一の座を争うダンス大会のこと。運営するのは、メンバー全員が学生で構成された「UNIDOL実行委員会」。
2012年に関東で第一回大会が始まり、今では観客動員数が年間で25000人を超え、日本一の学生イベントとなっています。
今回番組として制作したのは、2020年2月に開催された2020年冬大会・決勝戦の模様。
全国5都市・66大学、総勢70チームが参加した各エリア予選を勝ち上がってきた14チームと、敗者復活戦で這い上がった3チームの合計17チームが日本一の座を競う大会の模様を、前編・後編の各30分番組に収めました。
ユニドル制作の経緯
シングメディア・佐藤一樹のAOI Pro.時代の先輩から声がかかり、制作することになりました。
BS日テレで放送される番組ということで、体制はどうしようかなと思っていたところ、先方から「学生主催のイベントなので、この番組も学生が撮影して、学生が編集してというように、学生を中心に作りたい」という話が。
「わかりました」ということでスタートしたものの、詳しくは後述しますが、これがありえないほど大変でした……。
ユニドル制作にかける思い
番組制作の話をいただいたときは、正直、「ユニドルって、大学生のアイドルって感じかな?」と思っていたんです。
学生でアイドルをやりたいけれどアイドルになるまでの勝負をしかける気持ちはなくて、趣味程度でやっている子たちなのかな、なんて偏見があった。
でも実際は全然違ったんですよね。
本当にアイドルが大好きな子たちが集まって、週6とかで一生懸命練習しているチームもある。アイドルやダンスへの情熱がすごくて、心を打たれました。
そんな彼女たちの姿を見て、「ドキュメンタリーのようにリアルにこの子たちがどんな思いで大会に出ているのかを伝えたい」と思うように。
そのためには30分番組ということもあり、3チームか4チームくらいにスポットライトを当てて、そのチームに密着する形でやっていこうと思ったんです。
けれどクライアントの代表から、「一応は全チームを扱ってあげてほしい。結果として優劣はつくけど、みんなそれぞれに思いがあってやっているので、短くてもいいから一応は全チームをやってほしい」と言われました。
確かにその通りでもあるし、僕自身もそうしたい思いはあるものの、30分番組ということもあり、「わかりました。全チーム扱いますが、その中である程度時間を使って放送するチームは決めさせてください」ということですり合わせを何回も行うことに。
結果、優勝候補チーム、そのライバルチーム、初出場チームなど5~6チームに焦点を当てて、練習風景なども撮影して制作することになりました。
13台のカメラで200時間分撮影
実際の現場では、ステージ上やステージ袖はもちろん、ステージ裏でも過呼吸になって倒れる子がいるなどさまざまなドラマがあり、1つも取りこぼせないような状況。
そのため学生たちに、「下手でもいいからとりあえず撮っておいて」と言ってカメラを渡して撮影させることに。
結果、ステージ上を撮影するカメラが7台、ステージ裏に密着するカメラが6台、合計13台ものカメラを使いました。
しかも10時から24時までカメラを回し、撮影した時間は全部で200時間分くらい。膨大な量になりました。
撮りすぎたなとは思いましたが、撮りこぼせない場面がたくさんあったため、やむを得ず。
制作で苦労した点
広告の映像の場合、撮影するシーンが決まっているため、必要なところのみ撮影すればいいんですが、テレビの場合は違います。
テレビはバーッとすべてを撮影し、それをどう削ぎ落してパッケージにはめていくかということになるんです。
だから200時間撮影したものを、最終的には30分にまとめなければいけない。
素材がありすぎて、どうまとめていけばいいかというのはすごく迷ったところです。
ある程度編集したところで、番組の監修をやっていただいた毛利忍さんに見てもらったのですが、ダメ出しもたくさんいただきました。
たとえば踊っているところのカット割りで言われたのは、「これでは上手な歌番組の編集の仕方になっている」ということ。
アイドルのコピーダンスで競うユニドルで大事なのは、顔を見せたり寄りの画を見せたりすることではなく、評価ポイントともなるフォーメーションがわかるように、広い画を使わなければいけないことだと言われたんです。
ユニドルに参加している子たちは、アイドルではない。だから通常のテレビ番組のように顔などを必要以上に見せる必要はなく、どういう踊りをコピーしてどういう体制でやっているのかを広い画で見せなければいけないということにハッとし、編集をイチからやり直しました。
もう一つ苦労したのが、ナレーションです。
ナレーターはAKB48の西川怜さんに担当していただいたんですが、ナレーション内容を決めるのは僕の仕事。
参加している子たちがどんな思いでやっているのかを描く前フリや一生懸命躍った後までをどう描くかというのがすごく大変で、そこは何回も作り直しました。
何チームも参加しているので、それぞれのチームを扱える時間は短くなる。
その中で最低限伝えなければならないことはどんなことかを考え、それを伝えられるナレーションにするというのは、すごく大変でした。
これはシングメディアに入社してから一番と言えるくらいしんどかったです。制作中は丸1ヶ月くらい会社に泊まっていたほど。
しかもこの時期、並行してYouTubeチャンネルの制作やCM制作などの仕事もしていて、大変すぎてナチュラルハイになっていました。
同じ映像の仕事とは言え、テレビ、YouTube、Webなど媒体がすべて異なるため、思考プロセスや制作方法もすべて異なる。
とにかく大変すぎて、脳みそが砕けるかと思いました。
制作でこだわったポイント
それぞれの参加チームのメンバーがステージに出る前と本番中、終わった後の表情(映像)で、彼女たちの気持ちがどれだけ視聴者に伝わるかという点にこだわりました。
参加者の表情を見た視聴者が、勝手に彼女たちの気持ちを想像してほしいなという気持ちがあって。
詳しくナレーションなどで言いすぎないよう気を付けて、余韻を大事にしました。
たとえば青春時代って人によってそれぞれ違う。だから視聴者によって、気持ちを寄せたり感情移入したりする相手も違うなと思ったんです。
リーダーに感情移入する人もいれば、そのリーダーの言葉を聞いて涙ぐんでいる人の思いに気持ちを馳せる人もいる。
そうやって視聴者それぞれがそれぞれに参加者の気持ちを想像できるよう、ステージへ出ていく場面ではフラットに情報だけを伝えるようにするなど、ナレーションを客観的な視点にすることにこだわりました。
そうは言っても、テレビ番組というのは正解がない。
いつも終わった後で「もっとああすればよかった、こうすればよかった」などと思ってしまいます。
そのときは正解だと思っていたことも、後から「もっとナレーションをこうすればよかったのに」などと思うこともたくさん出てくる。
素材が大量にあるため、また作り直そうと思えば丸っとイチから作り直して全然違うものを作ることもできるんです。
でも予算の都合上、それもできないのが残念。
予算のことで言えば、今回の制作では予算をきっちり全て使いました。利益は一切ナシ。赤字にしなかっただけで良かったという感じです。
死ぬほど大変だったけど、やっぱりテレビっていいな
普通なら今回の規模の番組制作だと、総合演出の人がいて、ディレクターが5人くらいいて、その下にADも5人くらいいて、その下に学生を14人くらい入れるという体制になると思います。
でも今回はそれを、僕を含めてディレクター2人と、あとは学生だけで制作しています。
30分の前後編テレビ番組をディレクター2人+学生で制作するなんて、普通ではありえないことです。(制作費も含めてありえない……)
そんな状況でやり切ったのは自分でもすごいことだなと思っています。
それと後日、Twitterでエゴサしたところ、出演していた学生たちがテレビでユニドルが取り上げられたことを喜んでいるのを発見!
普通の大学生である私達をテレビ番組として扱って下さったこと、本当に嬉しく思います
感謝の気持ちでいっぱいです!!!!実行委員さん、番組関係者様、本当にありがとうございます😭🙏🏻
余韻で眠れなそうだな😃
#UNIDOL— ほのか🍯(Like) (@Honokaa_Like) March 18, 2020
やばかった、、テレビだ😭😭😭
ううありがとうございました😭😭みんなで沸いた😭😭😭
#UNIDOL pic.twitter.com/t80zuOhhBO— Tea♡Break り っ ぴ ー ☀ ️🍊 (@TeaBreak_Ripi) March 18, 2020
おはよう。。おきたらTLがUNIDOLまみれでたのしい。。自分の好きな大会やチームや人たちが特集されてテレビ番組になってるのすごいなあ…あとでHuluでみよっと #UNIDOL
— 🌻にこ🌻(na-nam) (@nanam_nico) March 19, 2020
これはやっぱり嬉しいもの。
後編ではちょっとこだわって、アイドル好きな子たちが好きそうな曲を使っていて、エンディングの曲はAKB48チームBの『初日』という曲を使ったんです。
この曲は自分たちの青春を連想させるような、感情移入できるような歌詞が響く曲。(思いがこもっているので、ぜひ聴いてください!)
その曲についてもTwitterで「エモい」と反響があったのは嬉しかったです。自分の狙いがハマったなという感じ。
こういう反響があるのはやはり、テレビのいいところ、やりがいのあるところだなと思います。
結論として、死ぬほど大変だったけど、やっぱりテレビっていいなと思えた案件でした。
BS日テレ「UNIDOL~大学対抗女子大生アイドルダンス日本一決定戦2020冬~前編・後編」制作スタッフ
- ナレーター:西川怜(AKB48 チームA所属)
- 演出・ディレクター:田口将伍(THINGMEDIA株式会社)
- 編集:戸村萌音、林涼太、桐山直樹
- 監修:毛利忍
- プロデューサー:利根川貴史、小渕隆太郎、前田うて奈
- チーフプロデューサー:稲留慶司
- 撮影:早稲田大学放送研究会、映像サークル FAKE UNIT
- 制作・著作:AmaductioN
- 制作協力:株式会社AOI Pro.、THINGMEDIA株式会社
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