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労働者派遣法とは? 禁止事項や企業が注意したいポイントを解説!

こんにちは、THINGMEDIAコーポレート部です。

「派遣」という働き方が一般的になり、企業にとってメリットが多いことから派遣労働者を雇う企業も多いものです。

しかし企業が派遣労働者を受け入れる際には、労働者派遣法を遵守しなければなりません。

労働者派遣法は何度も改正されているため、常に最新の情報を取り入れて違反とならないように注意することが大切です。

そこで今回は、「労働者派遣法とはどのようなものなのか、禁止事項や注意点」を詳しく解説します。

労働者派遣法とは?

労働者派遣法の概要

労働者派遣法とは、不安定な働き方である派遣労働者を保護するために制定された法律のことです。正式名は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」といいます。

派遣労働者は契約期間が定まっており、かつ正規雇用の社員よりも低賃金であるため、収入が不安定になりやすい傾向にあります。

企業にとっては一時的な人手不足を解消したり、正規雇用の社員より低賃金で雇えたりするため重宝する存在ですが、その特性ゆえに現場で不利に扱われてしまうケースもあるのです。

そういった弱い立場の派遣労働者を守るために必要な法律となっています。

・参考サイト:労働者派遣法が改正されました | 厚生労働省

労働者派遣法の改正について

労働者派遣法の改正について

労働者派遣法は1986年に施行されて以来、何度も改正されています。

これまで労働者派遣のニーズの高まりや派遣労働者の保護の必要性など、世の中の動きに合わせて改正されてきました。

当初は派遣可能な業種を拡大する、対象業務が原則自由になるなど、規制を緩和する法改正が多いのが特徴でした。

しかし近年では、人材派遣をめぐる違法行為が顕在化したことを背景に、日雇い覇権の原則禁止や待遇改善の強化、待遇差解消のための「同一労働・同一賃金」開始、派遣労働者への説明義務の強化など、派遣労働者の保護を目的とした規制や措置が多く加えられているのが特徴です。

労働者派遣法で禁止されている事項

労働者派遣法で禁止されている事項

労働者派遣法では、派遣労働者を守るためにさまざまなことが禁止されています。派遣労働者を雇用する際には、それらに十分注意しなければなりません。そこでこの段落では、労働者派遣法で禁止されている主な事項を紹介していきます。

30日以内の日雇派遣

労働者派遣法では、雇用期間が30日以内の日雇派遣は原則禁止されています。

日雇派遣は派遣会社・派遣先のそれぞれにおいて雇用管理責任が果たされていないことから、労災発生の原因にもなっていたため禁止されることになりました。

そのため以前は許されていた「1日だけ」「1週間だけ」といった日雇い派遣は現在、できなくなっています。

ただし例外となる業務があり、ソフトウェア開発や機械設計、秘書、通訳、翻訳、速記、デモンストレーション、受付・案内、研究開発、広告デザインなどの業務では禁止されていません。

また60歳以上の人、雇用保険の適用を受けない学生、副業として日雇い派遣に従事する人(生業収入が500万円以上の場合に限定)、主たる生計者でない人(世帯収入が500万円以上の場合に限定)を派遣する場合も例外となります。

・参考サイト:派遣元事業主・派遣先の皆様 | 厚生労働省

二重派遣

労働者派遣法では、二重派遣も禁止されています。二重派遣とは、人材派遣会社から派遣された派遣労働者を他の企業に再派遣して就業させることです。

たとえばA社からB社に派遣された労働者を、B社がさらにC社へ派遣し、C社の指揮命令下で労働させることを二重派遣といいます。

二重派遣を許してしまうと、派遣先企業が中間業者となることから派遣労働者の不当な賃金の低下や待遇の悪化を招くおそれがあるため、禁止されています。

また職業安定法でも二重派遣は禁止されていること、派遣先の企業が再派遣で利益を得ていた場合は労働基準法の「中間搾取の排除」違反になることも覚えておきましょう。

3年を超える派遣

労働者派遣法では、3年を超える派遣も禁止されています。この期間制限は事業所単位と個人単位がありますが、どちらも3年を超える派遣は禁止です。

派遣先企業が同じ組織で派遣労働者を受け入れられる期間の上限は、3年と定められているため注意しましょう。

3年を超えて働かせたい場合には、過半数労働組合などへの意見聴取をおこなうか、直接雇用に切り替えなければなりません。

なお個人単位の期間制限では、3年経ったときに過半数労働組合などへの意見聴取をおこなった上で、同じ人を異なる課へ派遣することは可能になりますが、同じ人を同じ課で引き続き派遣させることは禁止となります。別の人であれば同じ課への派遣は可能です。

賃金や待遇の不一致

労働者派遣法では、賃金や待遇の不一致も禁止されています。

2020年の法改正により、働き方改革の柱の一つである「同一労働同一賃金」のルールが盛り込まれました。正規雇用の社員との不合理な賃金格差などを是正するためです。

これによって派遣労働者にも、同種の業務に従事する正規雇用労働者と同等の待遇が求められます。

離職後1年以内の派遣労働者の受け入れ

労働者派遣法では、離職後1年以内の派遣労働者の受け入れも禁止されています。

これにより企業を離職してから1年以内の労働者を、その企業が派遣労働者として受け入れることはできません。

たとえば正社員として働いていた労働者を、離職してから1年以内に同職場で派遣労働者として雇うことは禁止となります。

労働者が本来受けられる待遇を悪くしてしまう恐れがあるという懸念によって定められたルールです。

ただし例外として、60歳以上の定年退職者は受け入れが可能となっています。

派遣労働者を指定した受け入れ

労働者派遣法では、派遣労働者を指定した受け入れについても禁止されています。

そのため派遣先企業は、人材派遣会社から派遣される労働者を指定することはできません。年齢や性別などを指定することもできないようになっています。

また派遣先企業は、紹介予定派遣以外の契約において事前に履歴書の提出を求めたり、面接をおこなったりしてはいけません。

ただし派遣労働者が自身で履歴書送付を希望した場合には可能となっています。

ちなみになぜ派遣労働者を指定することが禁止されているかというと、派遣先が事前に面接などをおこなって派遣労働者を選ぶという行為は、直接雇用で採用選考をおこなうことと同じであり、実質的に派遣先が派遣労働者を雇用しているように見えるためです。

さらに派遣労働者の就業機会が狭められてしまうのを防ぐためでもあります。

労働者派遣法で企業が注意すべきポイント

労働者派遣法で企業が注意すべきポイント

労働者派遣法において企業はどのような点に注意すべきか、いくつかのポイントを紹介していきます。

労働者を派遣するには許可が必要

労働者派遣事業をおこなおうとする事業者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならないと定められています。

許可要件を満たさずに特定労働者派遣事業と偽る事業者があったため、2015年の法改正によって許可が必要になりました。

そのため派遣先企業は許可を受けていない事業者から労働者派遣を受けてはいけません。労働者派遣を利用する際には、派遣元の事業者が労働者派遣事業の許可をきちんと取っているか確認するようにしましょう。

派遣労働者に賃金や待遇などを説明する義務がある

派遣労働者への賃金や待遇などの説明義務についても、労働者派遣法で企業が注意すべきポイントです。

労働契約を締結する前に、派遣会社は労働者に対して雇用された場合の賃金の見込み額や待遇について説明しなければなりません。

また派遣会社の事業運営に関することや労働者派遣制度の概要についても、労働者に対して説明義務を負っています。

これらは派遣元の企業が負っている義務ですが、派遣先企業でも理解しておくことが必要です。

・参考サイト:派遣元事業主・派遣先の皆様 | 厚生労働省

労働基準法や労働安全衛生法を適用しなければならない

労働者派遣法で企業が注意すべきポイントとして、労働基準法や労働安全衛生法を適用しなければならないということも挙げられます。

派遣労働者にも、労働者保護の観点から労働基準法や労働安全衛生法などを適用する必要があります。派遣労働者を受け入れる際には、これらの法律に則って業務に従事させましょう。

なお派遣労働者の労働時間の管理責任は、派遣先企業に課されています。派遣元が定めている36協定の上限時間を超えて残業させないよう注意しましょう。

業務によっては労働者を派遣できない

業務によっては労働者派遣が不可であるというのも、労働者派遣法で企業が注意すべきポイントです。

1999年の労働者派遣法改正によって、原則どのような職種でも労働者派遣ができるようになったのですが、限られた業務においては「ネガティブリスト」とされ、労働者派遣が禁止されています。

具体的には、港湾運送業務・建設業務・警備業務・医療関連業務については、労働者派遣事業をおこなうことができません。

ただし建設業務で労働者派遣が禁止されているのは、建設工事の現場において直接土木、建築などの作業に従事するものに限られています。建設業務全般が対象というわけではない点に注意しましょう。

・参考サイト:労働者派遣事業関係業務取扱要領(令和5年4月1日以降) | 厚生労働省

派遣契約解除時には配慮が必要

労働者派遣法で企業が注意すべきポイントとして、派遣契約解除時に配慮が必要だということも挙げられます。

派遣先企業が派遣契約を解除する際には、解除理由を明らかにしなければなりません。

派遣先の都合で契約満了前に契約が解除される場合には、派遣労働者の就業機会を確保しなければならないという点にも注意が必要です。

また休業手当などの支払いに要する費用を負担する必要があるという点もポイントとなります。

これらは派遣労働者の雇用が容易に失われることを防ぐために設定されました。

なお派遣労働者の契約を中途解除する際には、派遣先が労働者に直接通知するのはトラブルを招くため避けましょう。契約を解除する際には、まず派遣先から派遣元へ通知することが大切です。

マージン率を公開しなければならない

マージン率を公開しなければならないというのも、労働者派遣法で企業が注意すべきポイントです。

マージン率とは、派遣料金と派遣労働者の賃金の差額のことをいいます。派遣会社は書類やインターネットを通じてマージン率を公開することが義務づけられています。

マージン率が公開されることで、労働者や派遣先の企業は適切な派遣元を選択することができるのです。

労働者派遣法に違反した場合はどうなる?

労働者派遣法に違反した場合はどうなるか

さまざまな項目がある労働者派遣法ですが、この段落では労働者派遣法に違反した場合はどうなるのかについて詳しく説明していきます。

罰則について

労働者派遣法は派遣労働者を守るために作られた法律であり、違反すれば厳しい罰則があります。

労働者派遣法で義務付けられている法令に従わず違反した場合は、まず派遣法第48条に基づいて助言や指導がおこなわれます。

それにも従わない場合は行政処分が下されることになります。具体的には業務改善命令や事業停止命令、事業廃止命令などの処分が下されることがあり、悪質な場合は派遣事業許可が取り消されることもあるのです。

労働契約申し込みみなし制度とは

労働派遣法の禁止業務に従事させる、無許可の事業主から労働者派遣を受け入れる、3年ルールに違反するなどした場合、派遣先はその派遣労働者に対して、労働契約の申込みをしたものとみなされます。

派遣労働者が承諾した場合、派遣元と締結されている雇用契約と同一の労働条件で、派遣先との間で労働契約が成立することになるのです。

なお労働契約の申し込みは、派遣法40条にて違法派遣行為が終了してから1年間は撤回することが不可とされています。

また派遣先が違法派遣行為について善意無過失の場合には、この労働契約申し込みみなし制度は適用されないという点も覚えておきましょう。

労働者派遣法を正しく理解して派遣制度を活用しよう

労働者派遣法を正しく理解して派遣制度を活用しよう

企業にとって、派遣労働者を受け入れることにはさまざまなメリットがあります。

しかし派遣労働者は弱い立場であるため、派遣元にも派遣先にも労働者派遣法に従った対応が求められます。

派遣制度を活用する際は、派遣労働者を保護する労働者派遣法を正しく理解しておくことが大切です。


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THINGMEDIAコーポレート編集部

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