会計・バックオフィス

【企業向け】所定休日と法定休日の違いとは? 運用方法や割増賃金について

こんにちは、THINGMEDIAコーポレート部です。

企業は労働日のほか、従業員に付与する休日を決める必要があります。休日には大きく分けると「所定休日」と「法定休日」の2種類がありますが、両者はどう違うのでしょうか。

企業はそれぞれの休日について定義や違いを理解して、正しく区別し運用していくことが大切です。

そこで今回は企業向けに、「所定休日と法定休日の違い、休日の設定や運用のポイント」を詳しく解説します。

所定休日とは

所定休日とはなにか

所定休日は企業が独自に決定して従業員に付与する休日で、「法定外休日」とも呼ばれます。その名の通り、法律で定められている休日ではないということです。

労働基準法第35条では、最低週に1回休日を与えることと定められていますが、週末のうち土曜日を休みにする企業も多くみられます。

これは労働基準法第32条によって、「使用者は労働者に対して1週間に40時間を超えて労働させてはならない」と労働時間の上限が決められていることが関係しているのです。

1日8時間の労働時間の場合、月曜日~金曜日まで働くと労働時間が40時間に到達してしまうため、法律を遵守するために土曜を所定休日とするケースが多いといえます。

また誤解されやすいですが、国民の休日は法的に定められた休日ではないため、休みにするには企業が所定休日として規定する必要があります。所定休日の日数については企業が自由に決めることが可能です。

なお所定休日は就業規則や休日規定などで明らかにしておかなければなりません。

・参考サイト:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) | e-Gov法令検索

法定休日とは

法定休日とはなにか

法定休日は法律で定められている休日のことを指します。労働基準法第35条によると、週に1日もしくは4週に4日の休日を従業員に付与することを義務としています。

この法律で定められた最低限の休日の日数を満たせば、1週間のうち何曜日を法定休日として設定しても問題ありません。日曜を法定休日としている企業が多いですが、月曜や火曜などを法定休日と決めることも可能なのです。

ただし休みの日を法定休日だけにすると、労働基準法の32条による所定労働時間の要件を満たすことができず、労働時間が週40時間を超えるケースが多いため注意が必要です。

休みを法定休日だけにするのであれば、たとえば週6日勤務なら労働時間を1日6時間40分未満にするなど、法律違反にならない労働時間を設定するといった工夫が必要となります。

無理なく法律で定められた労働時間・休日を守るのであれば、やはり法定休日と所定休日を組み合わせて休みの日を設定するのがいいでしょう。

・参考サイト:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) | e-Gov法令検索

所定休日と法定休日の違い

所定休日と法定休日の違い

所定休日と法定休日は労働者にとっては特に大きな違いがありませんが、企業にとっては大きな違いがあるため知っておかなければなりません。

同じ「休日=労働をしなくてよい日」であり、意味を混同されがちな両者ですが、前述した通り、所定休日は法律とは関係なく企業や使用者が独自に設定して労働者に与える休日、法定休日は法律で定められた休日という違いがあります。

所定休日と法定休日は法的な扱いが異なり、特に企業にとって大きな違いとなるのが、給与計算をする上での扱いです。

労働者を休日に労働させた場合に発生する「割増賃金」が、所定休日と法定休日では変わってきます。割増賃金の計算方法が異なるため、企業は両者を明確に区別して管理する必要があるのです。

金銭トラブルを起こさないためにも、企業はもちろん従業員にも両者の違いや正しい賃金を理解してもらうようにするといいでしょう。

割増賃金に関する詳細やそれぞれの割増賃金については、次の段落から詳しく解説していきます。

所定休日や法定休日に関連する「割増賃金」とは?

所定休日や法定休日に関連する「割増賃金」とは

割増賃金とは、労働者を法定時間外(時間外労働割増賃金)、休日(休日労働割増賃金)、深夜(深夜労働割増賃金)などに働かせたときに、通常の賃金に上乗せして支払う賃金のことを指します。

企業は労働者に対して上記の労働をさせた場合、通常の賃金から定められた割増率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

その割増賃金の割増率に関しては働いた条件ごとに異なるため注意が必要です。

また後ほど詳しく解説しますが、前提として所定休日や法定休日に労働をさせるためには、36協定を締結していなければなりません。

36協定を締結した上での休日労働に対する割増賃金の割増率については、次の段落で詳しく見ていきましょう。

所定休日・法定休日それぞれの割増率

所定休日・法定休日それぞれの割増率

同じ「休日」でも、所定休日と法定休日では休日労働をさせたときの割増賃金が異なります。そこでこの段落では給与計算の際に間違えないよう、所定休日・法定休日それぞれの割増率を詳しく解説していきます。

所定休日に出勤した場合の割増率

所定休日の労働は休日労働には該当しないため、基本的に割増賃金を支払う必要はありません。通常の労働と同じ扱いとなります。

ただし1日8時間、週40時間を超えた労働に対しては、法定時間外割増となります。これも通常の労働と同じ扱いです。

40時間を超えた労働に対しては、25%の割増賃金が発生することになります。

なお、たとえば土曜日出勤のため同じ週の平日を休みとするなど、労働時間が週に40時間を超えない場合には、所定休日に働かせても割増賃金は発生しないという点を覚えておきましょう。

また所定休日に法定時間外労働(残業)をおこない、22時以降まで深夜労働をした場合には、法定時間外労働の割増賃金に深夜労働の割増賃金がプラスされ、50%の割増賃金が発生します。

・参考サイト:しっかりマスター労働基準法―割増賃金編―「残業手当」「休日手当」「深夜手当」 | 東京労働局労働基準部監督課(PDF)

法定休日に出勤した場合の割増率

法定休日は法律で定められている休日であり、その日に労働させた場合は35%の割増賃金を支払わなければなりません。

たとえば時給1500円で法定休日に8時間の労働をさせた場合、1500円×1.35×8時間=16200円の休日手当を支払うことになるのです。

なお代休をとった場合でも、休日出勤と代休で給与を相殺することは可能ですが、法定休日に働いたという事実は変わらないため、35%の割増賃金は支払うことになるという点をしっかり理解しておきましょう。

所定休日と比較すると割増率自体にそこまで差はないと考えられがちですが、会社全体の人件費とすると大きな差が出やすいため要注意。所定休日と法定休日の割増率の違いを考慮した上で区別することが大切になります。

・参考サイト:しっかりマスター労働基準法―割増賃金編―「残業手当」「休日手当」「深夜手当」 | 東京労働局労働基準部監督課(PDF)

所定休日や法定休日を運用するポイント5つ

所定休日や法定休日を運用するポイント

労働者の働きやすさを考えて企業が健全な職場環境をつくるためには、所定休日や法定休日を適切に運用する必要があります。そこでこの段落では、適切な運用のために意識すべきポイントを5つ紹介していきます。

1. 労働基準法を遵守する

企業が休日について決定・運用するには、前述したように労働基準法の要件を満たすことが前提となります。

具体的には「週に1回以上もしくは4週間に4回以上の休日」という決まりと、「1日8時間、週に40時間の労働時間」という決まりを遵守しなければなりません。

たとえば「月末に4日間まとめて休日を与える」という方法では、所定労働時間の要件が満たせないためNGとなります。

法定休日と労働時間、それぞれの要件をクリアできるように休日を設定・管理することが必要です。

・参考サイト:労働基準法 | e-Gov法令検索

2. 休日出勤を設ける場合は36協定を締結する

大前提として、法定休日に従業員を労働させるためには、36協定を締結しなければなりません。36協定は「時間外・休日労働に関する協定届」のこと。法定労働時間を超えて従業員に時間外労働をさせる場合に必須となります。

36協定では「時間外労働をおこなう業務の種類」、「1か月や1年あたりの時間外労働の上限」を決めなくてはなりません。

時間外労働をしてほしいときには、労働者の過半数で組織する労働組合もしくは労働者の過半数代表者と、書面で延長できる時間を決定して「労使協定」を締結し、所定の労働基準監督署に届出する義務があります。

36協定の届出をせず従業員に時間外労働を命じた場合、法律違反となるため注意しましょう。

なお所定休日に働かせる場合は休日労働には当たりませんが、時間外労働になる可能性もあります。そのため休日の種類を問わず、休日に働かせる可能性がある場合には36協定を締結しておくようにしましょう。

・参考サイト:36(サブロク)協定とは|確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト|厚生労働省

3. 休日に関するルールを明確にする

法律で休日に関する詳しい運用方法は定められていないため自社で決定する必要がありますが、ルールが明確でないと従業員との認識のズレが生じ、トラブルに発展するおそれがあります。

特に休日の日数や賃金に関してはトラブルが生じやすいものです。そのため運用時には休日に関するルールを明確にしておきましょう。

自社で規定した休日に関するルールは、就業規則や雇用契約書などに明記しておくようにします。

具体的には、「1週間の起算日(規定がない場合は日曜日が起算日)」や「いつが法定休日や所定休日なのか」「休日出勤した場合の賃金はいくらなのか」などを決めて記載しましょう。

休日出勤が多い職場では、振替休日や代休の扱いも詳しく規定しておくと良いです。

なお法定休日を特定せずに就業規則を定めることも可能。自社の状況に応じてどう記載するか検討しましょう。

4. 休日の単位は基本的に暦日を用いる

法定休日や所定休日については暦日とすることが基本となります。暦日とは、午前0時~午後12時までの24時間のことです。

たとえば「午前6時を起点に24時間を休日とする」などの設定は、例外を除いて基本的に認められないため注意が必要になります。「所定休日として定めた土曜に1時間だけ出勤させる」なども休日を与えたことにはならずNGです。

そのため夜勤体制のある事業者ではシフトを組む際に注意が必要となります。

ただし業種によっては特定の条件を満たせば暦日単位でなくても休日と認められるケースもあります。遅番・早番・夜勤などの番方編成による交替制を導入する場合は、暦日ではなく継続した24時間を休日として与えれば問題ないとされているのです。

たとえば旅館・ホテル業や自動車運転者などの一部業種がそれに該当します。

・参考サイト:第4章 労働時間、休憩及び休日 | 厚生労働省(PDF)

5. 休日出勤したときの振替休日と代休を区別する

休日出勤後は振替休日や代休を与えることがありますが、給与の計算にも関わってくることなので両者をきちんと区別することが重要です。

振替休日とは、休日をほかの勤務日と事前に交換するもの。たとえばあらかじめ土曜が休日と設定されていたとき、「土曜の休日と通常の勤務日である月曜を入れ替えます」という場合が振替休日となります。

振替休日は休日労働に該当せず、同一週内で休みを振り替えた場合は通常賃金の支払いで良いというのが特徴です。

振替が週をまたぐ場合は時間外労働に対する割増賃金が必要になるため注意しましょう。

一方、代休は休日労働をさせた後で別の日に休日を与えるものとなります。「本来は休日だった土曜に出勤してもらったので、代わりに火曜を休みにします」というケースです。

代休は休日労働扱いとなり、割増賃金が必要になるというのもポイントになります。

このように振替休日と代休については、休みを決めるタイミングと給与計算の方法の2つに違いがあります。トラブルを避けるためにも、この違いをしっかり理解しておきましょう。

所定休日と法定休日の違いを把握して適切に運用しよう

所定休日と法定休日の違いを把握して適切に運用しよう

改めてまとめると、法定休日は労働基準法で定められた休日、所定休日は企業が独自に決定できる休日をいいます。

両者は同じ「労働をしなくていい日」ですが、法律上の扱いや割増賃金の計算が異なるため、きちんと区別する必要があります。

適切な労働環境を整え、後のトラブルを避けるためにも、厚生労働省の公式サイトなどで正確かつ最新の情報を調べて法律を遵守し、休日をきちんと管理していきましょう。


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WRITTEN BY
THINGMEDIAコーポレート編集部

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