こんにちは、バックオフィス業務サポートサービス「AIBOW」編集部です。
従業員を雇って給与を支払うようになると、年末調整が必要になります。
しかし初めて従業員の年末調整をおこなう際には、必要な書類が何なのか、どんな手順でおこなえばいいのか、還付金が発生するのはどのようなときなのかなど、気になることが多いでしょう。
そこで今回は、「いつどのような手順で年末調整をおこない、どのような人に還付金を支払えばよいのか」を詳しく解説します。
年末調整とは?
まずは年末調整の目的や必要な書類、確定申告との違い、年末調整をしないとどうなるのかといった、基本的な知識を解説していきます。
年末調整の目的
年末調整は源泉徴収税の過不足を調整する目的でおこなわれます。
源泉徴収とは、従業員に給与を支払ったり個人事業主に報酬を支払ったりする事業者が、給与や報酬を支払うときに所得税などを差し引き納付する制度のことです。
そのとき所得税は概算で納付しているため、実際に支払うべき金額と源泉徴収された所得税の金額に差額が生じることになります。
報酬を受け取った個人事業主は確定申告で調整しますが、給与所得を受け取っている公務員や会社員は年末調整で調整をおこなうのです。
実際の源泉徴収税額が年末調整で計算した額より多かった場合は差額を従業員へ還付し、少なかった場合は追加徴収をおこなうことになります。
年末調整に必要な書類は?
年末調整に必要な書類は、主に下記の3つです。
1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
2. 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
3. 給与所得者の保険料控除申告書
上記のほかに、対象者のみが提出する書類もあります。それは控除に関する下記の書類です。
1. 生命保険料控除証明のための書類
2. 地震保険料控除証明のための書類
3. 個人型確定拠出年金の掛け金を証明する書類
4. 給与から控除していない社会保険料の支払を証明する書類
5. 配偶者特別控除に必要な収入証明(源泉徴収票など)
6. 住宅ローン控除の必要書類(住宅借入金等特別控除申告書、借入金の年末残高等証明書など)
上記が年末調整に必要な書類となります。従業員によって必要な書類が異なるため注意しましょう。
確定申告との違いは?
年末調整と似たものといえば、確定申告。どちらも1年間に稼いだ収入から、国に治める所得税を正しく計算して支払うための手続きです。
しかし年末調整と確定申告は対象者が異なります。
年末調整は事業者がおこなうものです。従業員に給与を支払う際におこなう源泉徴収の過不足を調整するものとなります。
一方、確定申告は自営業者や個人事業主など所得のある個人が自らおこなうものです。個人が1年分の税額を計算して申告することになります。
ただし会社員やパート・アルバイトで年末調整を会社でおこなってもらえる立場であっても、副業などで複数の場所から収入を得ている場合や、寄付金控除、医療費控除を申告する場合には別途、確定申告も必要です。
年末調整しないとどうなる?
年末調整をしないことでデメリットが生じたり、罰則が科せられたりすることになります。
年末調整時には各種控除の申請もおこなうのですが、年末調整をしないことによって、各種控除の申請ができないというのが1つのデメリットです。
源泉徴収で所得税を払いすぎていた場合、年末調整をしなければ払いすぎた税金が還付されないというのもデメリット。税金の過払いになってしまいます。
源泉徴収で支払った金額が不足している場合は、延滞税が発生することになります。
事業者が源泉徴収しなかった場合、従業員が自分で確定申告しなければならないため、手間が増えるというのもデメリットでしょう。
事業者が年末調整をおこなわない場合は、懲役や罰金が科される可能性があります。故意に年末調整をしなかった場合は、10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、もしくはその両方が科されることになるのです。
事業者が年末調整をしなければならないことを知らない場合や、年末調整が任意だと思い込んでいる場合は要注意となります。
年末調整はいつおこなえばいいの?
年末調整はいつおこなうのか、作業のスケジュールを確認しておきましょう。
事業者は11月から年末調整に関する作業を始めます。
年内に支払う給与の金額を確定したら、従業員に申告書や証明書などの提出を依頼し、回収していきます。従業員から回収した書類に不備があるときは、個別に修正依頼をしなくてはなりません。
そして12月を目途に年末調整の計算をおこない、過不足に応じて還付または追加徴収をおこないます(12月または1月の給与で調整)。
同じ時期に、年末調整関連の書類を準備する必要もあります。法定調書、支払調書、源泉徴収票などを準備しましょう。
年末調整で所得税の金額が確定したら、翌1月末までに管轄の税務署に納付。翌月1日までに管轄自治体に住民税関係書類を提出します。
なお年末調整関連の書類は、7年間保存しなくてはなりません。
年末調整の還付金とは?
改めて年末調整とは、1月1日から12月31日までの1年間に給与や賞与から天引き徴収された所得税と、正確に計算した所得税額とを比較し、過不足精算をおこなうものです。
年末調整の結果、源泉徴収で所得税を支払いすぎていた場合は、差額が返還されることになります。それが還付金です。つまり還付金は、源泉徴収で払いすぎていた所得税ということ。
年末調整で還付金があると得をしたような気持ちになる方もいると思いますが、精算の結果、返還されている金額なので、還付金があっても得をしているわけではありません。
逆に源泉徴収で支払っていた所得税の金額が少なかった場合は追加で徴収されますが、こちらの場合も損をするわけではないということを覚えておきましょう。
年末調整で還付金をもらえるのはどのような人?
この段落では、年末調整で還付金をもらえるのはどのような人なのか、詳しく解説していきましょう。
扶養家族が増えた人
扶養家族が増えた人は、年末調整で還付金がもらえます。
扶養控除は、前年に提出した扶養控除申告書の内容を基に計算するのですが、1年の途中で扶養家族が増えると扶養控除の対象が増え、差額が還付されることになります。
扶養家族が増えるのは、次のような場合です。
1. 結婚して妻を扶養に入れた(この場合は、扶養控除ではなく配偶者控除が適用されます)
2. 親に仕送りを始めた
3. 子どもが16歳になった
4. 一定の基準を満たす親族と同居を始めた
よくあるのが、子どもが産まれた=扶養家族が増えたという勘違いです。子どもが産まれたとしても、16歳未満なので扶養控除の対象外となることを覚えておきましょう。
・参考サイト:No.1180 扶養控除 | 国税庁
離婚または配偶者と死別した人
離婚または配偶者と死別した人も、年末調整で還付金をもらえます。
1年の間に配偶者と死別または離婚をして、ひとり親になった人は、「ひとり親控除」の対象となります。ただし対象となるのは、合計所得金額が500万円以下の人です。
女性の場合は、ひとり親控除の対象とならない場合でも、「寡婦控除」を受けられる可能性があります。
寡婦控除の対象となるのは、夫と離婚後、死別後に婚姻していないこと、所得が500万円以下であることが条件です。離婚の場合は扶養親族がいることも控除の条件となります。
男性の場合は、「寡夫控除」が受けられる可能性があります。寡夫控除を受けるための条件は、妻と離婚後、死別後に婚姻していないこと、または妻の生死が明らかでない場合、所得が500万円以下であること、子どもを養っていることです。
またすでに源泉徴収額に反映されている場合は、年末調整で還付金は発生しないため注意しましょう。
本人または扶養家族が障害者の人
本人または扶養家族が障害者の人も、年末調整で還付金をもらえます。
本人が障害を持っている場合、あるいは扶養家族が障害を持っている場合は、「障害者控除」の対象となります。
ただし「公的機関から知的障害があると判断されていること」「精神障害者保健福祉手帳の交付または身体障害者保健福祉手帳の交付を受けていること」「障害者控除対象者認定書が発行されていること」という基準を満たしている場合が対象です。
基準によって障害者、特別障害者、同居特別障害者という区分で分けられます。この区分によって控除額が異なるのです。
なお障害者控除は、扶養控除の適用外となる16歳未満の扶養親族にも適用されます。
・公式サイト:No.1160 障害者控除 | 国税庁
個人加入の保険料を支払った人
個人加入の保険料を支払った人も、年末調整で還付金をもらうことができます。
本人が生命保険、介護保険、医療保険、年金保険に個人加入している人は、「生命保険料控除」を申請できます。2011年12月31日以前の契約が旧制度、それ以降の契約が新制度の対象です。
旧制度は、遺族保障と介護保障、医療保障などを対象とした旧生命保険料控除と、老後保障を対象とした旧個人年金保険料控除の2区分となっています。それぞれの区分で最大5万円まで控除されるのが特徴です。
新制度は、遺族保障を対象とした新生命保険料控除、介護保障、医療保障対象とした新介護医療保険料控除、老後保障を対象とした新個人年金保険料控除の3区分となっています。それぞれの区分で最高4万円まで控除されるのが特徴です。
ほかにも個人で地震保険に加入している場合は、地震保険料控除を申請できます。地震保険料と旧長期損害保険料の2区分で、それぞれ最高5万円の控除を受けることが可能です。
・参考サイト:No.1140 生命保険料控除 | 国税庁
・参考サイト:No.1145 地震保険料控除 | 国税庁
住宅ローンを組んで返済している人
住宅ローンを組んで返済している人も、年末調整で還付金をもらえます。
10年以上の住宅ローンを組んで住宅を購入した場合、あるいは5年以上の住宅ローンを組んで増築した場合は、「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」の対象となるのです。
ただし初年度に確定申告で住宅借入金等特別控除の申請をしなければなりません。
初年度に住宅借入金等特別控除の申請をしていれば、2年目以降は年末調整で住宅借入金等特別控除を受けられます。
こちらの控除はほかの控除とは異なり、控除額がそのまま所得税から返還される「税額控除」となるのが特徴です。所得税より住宅借入金等特別控除の金額が大きい場合は、住民税からも控除されます。
・参考サイト:住宅ローン控除を受ける方へ 令和4年分 確定申告特集(本番編) | 国税庁
個人型確定拠出年金の掛金を払っている人
個人型確定拠出年金の掛金を払っている人も、年末調整で還付金をもらえます。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金を支払っている場合は、「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。これは社会保険料と同様に全額が控除されます。
掛金の最高額が月7万円なので、最高で84万円の所得控除を受けられるのが特徴です。
小規模企業の経営者や役員が廃業や退職後に備えて積み立てる小規模企業共済も小規模企業共済等掛金控除を受けられます。掛金が全額控除の対象となるため、節税のために利用するといいでしょう。
年末調整における還付金の計算方法
年末調整における還付金の計算をおこなうには、まず1年分の給与、賞与など収入の合計金額を計算します。非課税となる通勤交通費や立替経費などは含めません。
副業などで得た収入については年末調整で申告することは不可となります。また年の途中で転職した場合は、前の職場で発行された源泉徴収票に前の職場の給与額が記載されているため、その金額も含めて合計金額を算出しましょう。
次に、給与所得控除後の給与の計算をおこないます。この計算で、収入の合計金額に応じた控除額を確定するのです。社会保険料は合計額がそのまま控除されます。そのほかにも従業員によって控除されるものがあれば、それらを集計。
控除額を収入の合計から引いた額が、課税対象所得額となります。その金額に税率を乗じたものが、国に納めるべき所得税額です。
1年間の収入の合計金額から支払うべき所得税の金額を確認したら、1年間に天引きした所得税の合計金額を確認しましょう。
最後に、本来支払うべき所得税の金額から、天引きした所得税の合計金額を引きます。その差額が還付金の金額です。
正確さとスピードが求められる年末調整はプロに任せよう
年末調整は年末年始のタイトなスケジュールの中で、正確かつ迅速におこなわなければならないものです。そのため慣れていないと大変だと感じるかもしれません。
場合によっては、バックオフィス業務専門のプロに任せることも必要でしょう。自社で年末調整業務をおこなうのが困難な場合は、バックオフィス業務サポートサービス「AIBOW」にご相談ください。
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