株式会社木々家

社内改革であらわになる社員の不満と問題点。『やきとん木々家(はやしや)』密着ドキュメンタリー【第3話】

2008年の創業以来、池袋を中心に7店舗(※2018年6月時点)を展開し、すべての店舗が坪月商40万円を売り上げる人気店となっている居酒屋『やきとん木々家(はやしや)』。

飲食経験ゼロから起業した社長・林田博之さんは、10年をかけて何を考え何を行って、「やきとん界のバケモノ」と呼ばれるまでに成長してきたのだろうか。

第3話となる今回は、コンサルティング会社リンクアンドモチベーションが登場。社内改革を行うために実施した、社内研修の様子をお届けする。

成長には痛みがつきもの。研修の最中、知られざる社長の思いに従業員も涙を堪える。その思いとは……。

【スペシャルゲスト】ナレーター:株式会社Voicy 代表取締役 緒方憲太郎

創業以来初めてとなる大幅な社内改革を実施

林田社長は、創業以来初めてとなる、大幅な社内改革を行っている。その1つが、コンサルティング会社による社員研修だ。

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「僕のキャパを超えて組織が大きくなってしまったので、このままこのメンバーでこれより先に進んでいくためには、どこに向かっていくのかという、そういった道標がなければ到底うまくいかないなということを理解することができて、それでリンクアンドモチベーションにコンサルティングをお願いして」と、林田社長は語る。

では一体どのようなコンサルティングをお願いしたのだろうか。

株式会社リンクアンドモチベーションの浅川祐毅さんに、今回依頼されたコンサルティングの内容について教えてもらった。

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「いただいてきた契約が、ビジョンを作る、みんなにそれをシェアする、あとは人事制度を作るっていう、会社の根幹である気持ちと制度。みなさんの給与を預かる制度というところの二本柱を同時にご発注いただいたということもあって、金額としてもかなり大きな金額で」とのこと。

また浅川さんは、木々家の現状についても、次のように語った。

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「社長が非常に先進的な経営を志していて、新しいものを求めていく。前に前にという経営をされる方だなと。それに対して一方、社員の方々って、やっぱり目の前のお客様とか、ひとつのお皿に向けた執念や魂みたいなことがすごいので、なかなか(社長と社員の)言葉が噛み合ってないなと。林田さんが持って行きたい方向性とかが意図としてちゃんと伝わってないまま、社員のみなさんが困惑されているという感じだったので。僕らがいきなり大きく変えていくぞという波を動かしたとしても、社員一人ひとりの心にどうしたら届くのかなというのが、そこが一番課題というか、難しいなと思ったポイントですかね」

社長と社員の意識の間に生じているズレ。それをどう合致させていくかが腕の見せ所だ。

空回りする社長の気持ち

2018年11月2日。この日、3回目の社員研修が行われていた。

従業員が集まる中で、進行役がこれから始まるディスカッションの進め方とポイントについてレクチャーを行っている。

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飲食業界では珍しい、コンサルティング会社を使っての社内改革。林田社長には、ある狙いがあった。

「今、企業理念が定まったんですけど、ミッションを実現するためのアクションの部分を設計していかなきゃいけない。あとはこれを一緒に作っているマネージャー陣にそれを刷り込むのと、あと、“覚悟”を決めてもらう。少し苦労しそうだと思うんですけど、必ずそのゴールはリンクと一緒にやると。それを今度、全社員全アルバイトと共有するための会なんですよ、社員総会というのは」

そう、ゴールは社員の家族、アルバイトスタッフ、関係者すべてを呼んで行われる社員総会。ここへ向けて、社員全員で次のステージへ上がろうとしているのだ。

しかし、そんな林田社長の気持ちは空回りしていく。

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「こういうのもさ、どんなテーブル作れば目的果たせるかなというのを、最後のゴールを1回イメージして、それからやんなきゃダメなんだよ。毎回毎回とりあえず目の前のものを動かしてから、そこから組み立てようとするから時間がかかっちゃう」

と、社員研修の準備をダラダラと行う社員たちに、珍しく怒りをあらわにしたのだ。そして、怒りの矛先は日報の話にも及ぶ。

「日報、みんな提出する時間がちょっと明け方になっちゃってる。何が大変ですか? あの時間まで考えちゃってるってことなんでしょ?」と、社員たちに問いかける林田社長。

社員は戸惑いつつも、「そうです」と答える。

「“できごと”と“気づき”。これそんな時間かかるかな? 別に箇条書きでもいいし、なんでもいいと思うんだけど」と林田社長は続ける。

「凝って書かなきゃいけない、みたいな感じが……」と答える社員に対し、

「凝って書かなきゃいけないって何のためかってことだよ。結局、気づきを得たいためでしょ。あとは頭の中のイメージを言葉にする。要は脳の中のイメージをアウトプットするっていうことをどんどん習慣化して、苦手なことを徐々にできるようになっていくために、そのために日報ってつけてるわけ」と、日報をつける意味を解く。

そして、「だから今おかしいじゃん。なんのためにやってるのかってちゃんと考えないと。誰かが最初作ったものをみんな真似して書いてるから、みんなおんなじような文章になっちゃってるじゃん。そうするともう本来の目的からずれてて、みんなすごい疲弊しているって感じだと思う。あれだと、実際にあの日報を書き続けて、3ヶ月後に自分たちがどんな能力が上がったかっていうのが自分たちで何か持ち帰れるのか、ていう風にちょっと思った」と現状の問題点も指摘。

林田社長は自分の気持ちが社員たちにうまく伝わらないことが悔しかったのか、両手で顔を覆ってしまった。社長の思いは、社員には届かないのか。

社長と社員の間に生じるズレの原因は?

リンクアンドモチベーションの浅川さんは、社長の気持ちや考えと、社員の気持ちや考えがズレることはよくあることだと話す。

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「社長の気持ちや考えと、社員の気持ちや考えがずれると。一般的に店舗展開の会社様の傾向なんですけど。私たち、人のモチベーションのタイプを“達成欲求”と“貢献欲求”で分類するんですね。たとえば勝ち負けが大好きな人たち、これはIT系の経営者に多いです。逆に貢献、ありがとうと言われるのが好きだと、どちらかというと店舗展開の社員でいうと、ほとんど9割以上がありがとうと言われる貢献欲求型のタイプが多いんです」

モチベーションのタイプが社長と社員で異なるからこそ、そこに気持ちや考えのズレが生じるのだ。木々家の場合もそれに当てはまると言う。

「一番最初は林田さんは“勝つぞ負けるぞ”の世界で生きていて、社員のみなさんはどうしたらありがとうがもらえるかという世界で生きてたんで、噛み合わないんですよね。みなさんはずっと林田さんの言っていることは何なのか、よくわからない、どうしよう、いやだ、どこに向かうんだろうというのを林田さんという人間を見て、人を見て感じる。または、林田さんという人を見て経営判断に位置付けると、会社の方針だと理解する。それを、嫌だ嫌じゃないという風にやってたという」

そんな木々家の問題点を改善するためにどうしたのか、浅川さんは続ける。

「人を見る組織だったところから、私たちが一番最初にやったのは“事をみる組織にしたい”っていうことで、林田さんの顔色を伺う組織よりかは、木々家として、何をそもそも会社全体として追っかけていきたいのという使命に近いミッションと言われるようなものの策定。林田さんが決めたからやらなくてはいけないという状況よりは、キャプテンのみなさん全員で話して、決めて、決断したものだと、そういうプロジェクトからスタートしました」

社員から上がる社長への不満

そして、社長がいない中行われた、5回目の社員研修。リンクアンドモチベーションの田中峻さんが進行していく。

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この日は、「会社の良い点・悪い点を出し合う」というテーマのもと、研修が行われていたのだが、良い点を出し合っている間は和やかな雰囲気で進んでいたのに、悪い点を出していくと、空気が一変する。

ホワイトボードに貼りだされた付箋に書かれた、会社の悪い点。そこには、「どのようになりたいのかわからない」という言葉が書かれていた。

これから会社がどんどん拡大していくのか、グローバルに出ていくのか、どういった目標があるのか、新規事業をやるのかなど、社員たちには理解できていなかったのだ。

また、「社長とのコミュニケーションがとれていない」という問題点も上がっていた。

「昔はもっと社長との距離が近かった。話し合いとかももっといっぱいあった」と語る社員。

コミュニケーションの取りにくさも感じているのだろうか?

「わからないことがあったときに聞いていいのかわからなかったり。前は社長のシフトもみんなと同じところに書かいてあって何をしているかわかったのに、今は何しているのかわからない。今連絡していいのかなみたいな」と、率直な声が上がった。

「従業員の思っていることと社長の思っていることが食い違う」という意見も悪い点として上がる。

具体的にどういうところで食い違いが出るのかという質問に、

「見切り発車みたいなのがたまにあるんですよね。これ絶対いいからこうやってやるんだ、みたいな。それで社員がバタバタしてついていけない。新店オープンするときも結構先に決まってるんだけど、報告が(オープン)2ヶ月前とか。社長が悪いみたいになっちゃってますけど、社長のいいところもあるので、それに至らない自分たちが悪いんじゃないかなっていうのもあって」と語る社員。

すると進行役の田中さんから、「(社長に)言えないものですか?」と社員全員に質問が飛ぶ。

しばらく沈黙した後、「今さら言えない」という声が上がった。

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「言いに行くとすごいネガティブなことがドカンと返ってくる」という意見も。社員たちにとっては、それが相当なストレスになっているようだ。

「社長が言ってることを理解できるような、こっちも基礎知識が足りないですし」という意見も出た。これも社員たちが抱えているジレンマだろう。

田中さんからも、「もう一個あるとしたら、林さん結構勉強家だと思ってるんですよ。すごいいろんなことを仕入れてくるしいろんなところに顔出してるし、すごい勉強家だと思っていて。そういった意味では、やっぱり努力してるのは素晴らしいと思うんですよ。ていうところの、差が開いちゃってる気がするんですよ」という意見が出た。

「どこまでこれ、みなさんがやりたいという気持ちと、本気でそれやるかっていう話なんですけど、僕、みなさんの成長も影響するかなと思ってます。経営というものをちゃんと理解したりとか、それをやるためにこういうことやっていこうとか、プレゼンテーションもそうだし」と、社員の向き合い方についても言及する。

そして田中さんは、「もっと大前提を伝えるとですね、リンクアンドモチベーションもみなさんの会社をサポートすることが決まった理由はですね、これは伝わってないことだと思うんですけど、その場の感情かもしれないですけど、一番最初にですね、メッセージをもらってですね」と、社員たちの知らない話を始めた。

林田社長の知られざる思いに社員たちは……

会社の改善点についての話し合いを行った際、その場で林田社長は「従業員との関係性を良くしたい」と言って、涙を流したというのだ。

田中さんの話に驚く社員たち。

「経営者として本当にそれが正しいのかわからないけど、今いる従業員たちを守りたいし、その従業員たちがいいなと思う会社作りをしたいってことだけは、本当に思ってるんです。制度のことについてもまだまだ自分は理解が甘いけど、ただ今いる人たちに長く働ける制度作りをしてもらいたいし、そのためには利益を上げなきゃいけないし、マーケットに合わせなきゃいけないということもあるんで、それも伝えられてなかったと思います、と。ビジョンを作るとこも、僕が実は考えたんですけど、それじゃダメだと思いました。キャプテンと一緒に考えて、そういう会社作りをしたいんです」と林田社長は語ったという。

その言葉を聞き、このサポートをスタートさせたと語る田中さん。

社員たちは沈黙したまま、涙をこらえているようにも見える。林田社長の思いは、社員へ伝わるのか……。

今回の密着はここまで。次回は、社員総会を目前に控えた社員、家族、そして林田社長本人の思いに迫る。


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