株式会社木々家

THE TEAM。『やきとん木々家(はやしや)』密着ドキュメンタリー【第5話・最終回】

2008年の創業以来、池袋を中心に7店舗(※2018年6月時点)を展開し、すべての店舗が坪月商40万円を売り上げる人気店となっている居酒屋『やきとん木々家(はやしや)』。

飲食経験ゼロから起業した社長・林田博之さんは、10年をかけて何を考え何を行って、「やきとん界のバケモノ」と呼ばれるまでに成長してきたのだろうか。

ついに最終回となる第5話の今回は、社員総会の様子をお届けする。

涙なしでは見られない、林田社長からあふれ出す社員への想い……。ぜひ最後まで見届けて欲しい。

【スペシャルゲスト】ナレーター:株式会社Voicy 代表取締役 緒方憲太郎

THE TEAM

経営コンサルタントとして多くの企業の組織改革に関わってきた、株式会社リンクアンドモチベーション取締役・麻野耕司さんの著書『THE TEAM 5つの法則』には、次の言葉が記されている。

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“真の組織改革を実現するためには、経営と人事だけでなく、現場が主体的自立的に組織を変えていく必要がある。”

やきとん木々家の林田社長も、今まさにこの言葉を胸に、組織改革を推し進めているところだが、組織改革を推し進める中、自分の想いだけが独り歩きすることと、常に葛藤してきた。

この組織改革は間違いなのではないか。社員に負担をかけているだけなのではないか。社員と意識がすれ違い、伝わらない想い。

経営者は弱気なところを見せられず、孤独だと表現する人も多い。林田社長も同じように孤独と闘ってきたのかもしれない。

社員総会が始まる直前、林田社長の顔には緊張の色が見えた。

社員に響き、届いていた社長の想い

木々家創業以来初となる社員総会は、社長の挨拶から始まった。

「乾杯!」の声を合図に、それぞれのテーブルでグラスを合わせ、談笑が始まる。

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関係者、その家族を呼んで行われる社員総会が順調に進んでいく中、林田社長に今の気持ちを聞いてみた。

「胃が痛くて帰りたいし、誰かに代わってもらいたい」と言って笑う。どうやら相当なプレッシャーを感じているようだ。

そんな中、社員たちがこれまでの社員研修の中で学んだことを発表する場が設けられた。

社員の一人が登壇し、「みなさんに質問があります。なんのために働いてますか?」と質問を投げかける。そして、次のように続けた。

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「僕が木々家に入った動機も、妻から定職につけと言われて、何も考えもなしにここで働いたのが始まりなんです。最初は仕事を覚えることがすごく楽しくて、それを生きがいとしてやっていたんですけども、いつの間にか当たり前の毎日を過ごしていく、同じ作業を繰り返していく、そんな日々に変わってしまって、楽しいというより楽をしている、そんな日々になっていたんですね」

「そんなとき、知ってか知らずかヒロさん(林田社長)が、“もっと全力でやろうよ、何事も全力でやってみない? こんな会社にしていきたいんだよ”ていうことを言われて。正直、心の中で、全力でやってんのに全然伝わってないなって、ちょっと会社のせいにしたんですよ。会社のせいってそもそも誰の話なんだと。そのときに気付いたんですよ。人のせいにしてるのダセェなって。ちょっと自分なりに変化がないとダメだなと思って。そんなとき、できないけどホールやってみようと」

そう決意した彼は、慣れないホール業務を行ってみたが、やはりうまくいかず、お客様からの評判もイマイチだったという。しかしお客様に呼ばれたときは「ハイ!」と大きな声で返事をし、全力で走って駆け付けるなど、何事にも全力で取り組む姿勢を見せるようにしたところ、お客様はびっくりしつつも笑ってくれたそうだ。

そうしているうちにお店の雰囲気が活気づき、他の従業員やお客様にも笑顔が増えていったという。そんな中で気付いたことを、次のように語った。

「これってパワースポットなんじゃないかなって思って。一人ひとりが全力でやること。これがパワースポットにつながると信じています。存在意義を持って1日1日有意義な時間を過ごせるのが木々家だと、そう信じています」

そのスピーチに、たくさんの拍手が起こる。林田社長も、笑顔で心からの拍手を送っていた。自分の言葉が、想いが、きちんと社員に届いていたのだ。

さらに別の社員が登壇し、スピーチを行う。

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「2号店がオープンしたとき、僕は焼き場だったんですね。焼き手でした。本店でも焼いてたんで、まあいつも通り焼いておけばいいかと、ダラダラ何も考えずにただただ焼いてました。そして3ヶ月経ったときに、百数十席が、週末にもなると数分でお客さんで一気に埋まってしまう。がーっとお客さんが入ってきて伝票がズラーですよ」と話すと、会場からは笑いが起こる。

「しかもその当時、社長が店に立ってたんですね。伝票を一生懸命やってますが、でもどうしたって遅れてくるんですよ。そしたら社長が鬼のような形相で、厨房にズカズカズカーって入ってきて、グワーっとまくしたてるわけですよ。こっちとしては、(この伝票の量を)見てよと。なんなら代わってと」と当時のてんてこ舞いな様子を振り返る。

それからも毎週、社長とのそのやり取りが繰り返されたという。

そこで彼は、「こんないつも通り焼いてたら、俺か社長のどっちか潰れてしまう」と思い、そこから焼き場の作業について真剣に向き合い、「毎日毎日反省点を取り入れて、次はこうしよう、次はこうしようと繰り返して実行していった」そうだ。すると、変化が起きたという。

「2ヶ月くらい経ったある時に、週末なんですけど、あれ? 社長がガツガツ入って来ねえな……と思って、社長のほうパッと見たら、仏顔ではないんですけど、鬼の顔でもない。時間をパッと見たら、確かに早くなってると。次はこうしよう、次はこうしようという繰り返しが改善につながって目的の時間以内に出せるようになった」とのことだ。

自身の体験談を面白おかしく披露した彼にも、林田社長は笑顔で惜しみない拍手を送る。

少しずつなのかもしれない。しかし確実に林田社長の想いは社員に響き、届いていた。

家族からの感謝の言葉

さらに林田社長には創業以来ずっと支え続けてくれた家族がいる。

社長の妻・幸子さんが登壇し、子どもたち、そして関係者へ向けて感謝の言葉を述べた。

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「この10年間本当にあっという間だったんですけれども、10年前、オープン当初まだ年中さん、年少さんだった子どもたち、まず子どもたちに感謝をしたいと思います。ありがとうございます。今まで関わってくださった皆さん、お集まりいただいた皆さんに本当に感謝をしています。どうもありがとうございます。今後とも皆さんと一緒に木々家を盛り上げていけたらと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」

涙を流しながら語った感謝の言葉には、この10年間のさまざまな想いが込められているのだろう。

社長の母からも社員や関係者に向けて感謝の言葉が語られた後、「私ごとですが」として、息子である林田社長と弟、そして社長の妻である幸子さんへ向けての感謝の言葉が語られた。

「定年のない職場を作ってくれてありがとう。近々、古希を迎えますが、まだまだ元気です。これからもよろしくお願いいたします」

これには社長の妻・幸子さんもたまらず涙を流す。

社員、家族。林田社長にはかけがえのない宝物だ。そして社長がその想いを社員やアルバイト全員に伝えるときが来た。

涙ながらに語られる社長の決意

社員やアルバイト、家族が見守る中、登壇する林田社長。

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「我々はですね、これまで10年間、お客様お取引先様、それから働いてくださるスタッフの方、そのご家族の方、皆さまに支えられてきました。これからも、先に進んでいくために我々の道標となる企業理念を策定しました」と語り、企業理念を発表する。

“当たり前を疑う力、当たり前を磨く力を持ったチームで、いつでも「楽しい」場を設計し、日本や世界の人々に活力を与えるパワースポットとなる”

「これは我々ののですね、今は飲食店をやっていますが、その活動を限定するのではなく、ここにいる働いている人たち。彼らの考えること、彼らの発想の先に何があるかは私なんかでは到底想像もつかないので、全て可能性をとらえられるように、このような言葉にしました」

それが、社長が企業理念に込めた想いだ。

そして、「なにか元気がなくなったときとか、なにか力をもらいたいときに、訪れたい場所なんじゃないかなと思っています。それを我々が実現しなきゃいけないと思っています。それを実現する上で、これから我々が進んでいく先で一番障害となるものが、私の恐怖だと思っています。もしかしたら、みんなの人生を……」と言ったところで言葉を詰まらせた。

目には涙が浮かんでいる。数秒間、沈黙が続き、必死の思いで次の言葉を語り出す。

「迷わせてしまうんではないか。皆さまの期待していることの梯子を外してしまうんではないか。到底、今の自分の実力ではできないことばかりです。今日こういう場を作ったのも、また私がそこから逃げるんではないか、逃げられない場所を作って皆さんの前で宣言し、実行することを約束すれば、私みたいな弱い人間でも、もしかしたら何者かになれるかもしれないって思いました」

涙ながらにそう語る林田社長。経営者ならではの孤独や恐怖、プレッシャー。それがどれほどのものなのかは、本人にしか到底わからないことだ。

重責を担いながら逃げ出したくなる自分を律してこの場にいる、そんな思いがひしひしと伝わってくる。

「この前、すごく魂が震えるような言葉に出会いました。“宿命に耐え運命と戯れ使命に生きる”この言葉を聞いて、私ごときが生きている意味は一体なんなのか。皆さんに支えられてこのような場を設計できているのは一体誰のおかげなのか。だとしたら、私がしなければならないこと、私に課せられた使命、私はこのために生きなければならないと強く決意をし、今日この場所でそのような宣言をさせていただきたいと思っています」と続け、次のように宣言した。

「具体的に何年で何店舗出すとか、決めることで私の活動とか思考の幅を狭めてしまう。あえてこの場では私は皆さんの人生を預かるリーダーとして皆さんがここにいて、これから歩むべき冒険、歩むべきステージ、それを皆さんの成長とつなげられることに、必ずつなげていき、皆さんが成長することを私はここに約束したいと思います」

社長の涙ながらの強い決意に対し、会場からは大きな拍手が上がった。

日本中すべての会社に社長の想いがあり、社員にも想いがある。その想いが会社の理念になり、行動指針になる。それを自分たちで作り上げてきたという事実。この経験がまた木々家、それから社員一人ひとりの財産になっていくだろう。

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そしてここからが、木々家伝説第2章のスタートとなる。その伝説を、我々もまた見届けていきたい。


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