映像制作

シズル感とは? 広告業界での使われ方や演出方法を紹介

こんにちは、シングメディア編集部です。

たまに耳にする「シズル感」とは何だろう、シズル感を演出するにはどうすればいいのだろう・・・。

そんな「シズル感について知りたいあなた」は必見です。

広告業界では購買意欲を高めるためによく使われるシズル感。シズル感が表現できると、消費者の五感に訴えることができ、購買意欲を刺激することが可能です。

そこで今回は、「シズル感の広告業界での使われ方や演出方法」をご紹介します。

意味や語源は? 「シズル感」とは

シズル感とは何か

シズル感とは、肉が焼けるときのジュージューという音やハンバーグを切ったときに肉汁がじゅわっと出てくる映像、できたて感を伝える湯気など、見た人が思わず「おいしそう!」「食べたい!」と思うような、五感を刺激する演出のこと

映像や音だけでなく、実演販売による匂いもシズル感を演出する要素に含まれます。

もともとは広告業界から広まっていった言葉で、消費者の購買意欲を促すために使われているのが特徴です。

またシズル感の語源は、英語の「Sizzle」という単語から来ており、意味としては「肉がジュージュー焼ける音や、肉汁が滴るような状態」というもの。

アメリカの経営コンサルタント、エルマー・ホイラーの著書である『Don’t Sell The Steak-Sell The Sizzle』(ステーキを売るな、シズルを売れ)から来ているそうです。

この本を発端に「シズル感」という言葉が広告業界で使われ始め、一般にも広がっていったと言われています。

会話の中では、たとえば次のような使われ方をします。

「このしたたる肉汁、シズル感たっぷりだね!」」
「このシチューの写真、湯気を足してシズル感を出そう」

なおシズル感は食べ物だけに使われる表現ではなく、車のスピード感を表したり、保湿化粧品のみずみずしさを表したりするときなど、さまざまな商品に使われています。

消費者の五感を刺激して購買意欲を高めるために、今やなくてはならない演出方法と言えるでしょう。

五感を刺激せよ! シズル感を演出する方法9つ

シズル感を演出する方法

さっそく、五感を刺激するシズル感を演出するにはどうすればいいのかを見ていきましょう。

1. 調理中の様子を見せる

食べ物を撮影する際にシズル感を演出するなら、調理の過程を見せるのがおすすめです。

たとえばトンカツや天ぷらなどを揚げている様子や、肉を鉄板で焼いている様子などを見せることで、揚げ物から上がるパチパチという音や肉から出るジュージューという音、あふれ出る肉汁などが五感を刺激し、食欲をそそります。

2. 湯気を出す

写真や動画では、食べ物から湯気を出すのもシズル感を演出するのに効果的。

料理から湯気が立っていると出来立て感があり、おいしそうに感じられます。

本物の湯気を利用できれば一番ですが、撮影までに時間がかかってしまったときには、ドライアイスや加湿器、CGなどを利用して湯気を出す方法もあります。

3. 水分・ツヤをプラスする

食材の撮影を行う際には、水分やツヤをプラスすることもシズル感の演出に効果的です。

たとえば野菜であれば、新鮮さを出すために撮影するときに水につけたり、霧吹きで水を吹きかけたりするといいでしょう。みずみずしい新鮮な印象を演出でき、おいしそうに見えます。

また調理が終わっている料理の場合は、表面にツヤや照り感を出すと、おいしそうに見えるもの。そのためには撮影時に料理の表面に油を塗ったり、霧吹きで油を吹きかけたりするといいでしょう。

4. 2つの光源を効果的に使う

食べ物を撮影する際には、光の当たり具合もシズル感の演出に大きく影響します。

室内の照明だけで撮影するよりも、外の自然光も取り入れ、両方の光がバランスよく降り注ぐよう撮影したほうが、よりシズル感がアップ。

食べ物の上に自然光と室内の照明の2つがバランスよく降り注ぎ、キラキラした光の粒がたくさん輝いて見えるポイントを探して撮影しましょう。

5. 彩りの良さを意識する

食べ物の撮影には、彩りの良さを意識するのもシズル感の演出に有効です。

たとえばメインの食材が肉なら、周囲にブロッコリーやレタス、トマト、パプリカなど緑や赤、黄色といった色の野菜を添えると、よりメインの食材が引き立ち、おいしそうに見えます。

ステーキやローストビーフといった塊肉のみで撮影する際には、切り口を見せるのがおすすめ。表面のこんがりしたきつね色と中心部の赤みのコントラストを撮影すると、単体でも色彩を添えることができ、おいしそうに見えます。

6. 一番おいしそうに見える正面から撮影する

食べ物にも正面というものがあり、正面から撮影することによって、よりおいしそうに見えシズル感がアップします。

たとえばカレーライスならカレールーの側が正面。ハンバーグならハンバーグ側が正面で、添え物の野菜が乗っているほうが後ろという感じです。

ちなみに正面にしたときにお皿が汚れていれば、汚れを拭き取ってきれいに見えるように整えてあげましょう。

7. 食材にズームして奥行き感を出す

料理のシズル感を演出するためには、食材にズームするというのも有効です。

その際、角度をつけて撮影することで奥行き感も演出でき、より効果的に。

食べ物を箸でつかんで持ち上げている“箸上げ”という臨場感を出すテクニックも合わせて使えると、、シズル感をアップさせることができます。

8. 人が食べている姿を見せる

人が食べ物を食べている姿を見せることも、シズル感の演出に効果的です。

たとえばピザを食べているときに、チーズがのびて驚いている様子を見せる、できたての料理を食べているときに熱がっている様子を見せる、食べた瞬間に目を閉じて味わっている様子を見せるなど、リアクションも大事なシズル感の要素になります。

食べ物を食べているときのカリカリ、サクサク、パリパリなどという音も重要です。

9. コピーライティングでオノマトペを使う

写真や映像だけでなく、コピーライティングでもオノマトペを使えばシズル感を演出することが可能です。たとえば五感を刺激するオノマトペには次のようなものがあります。

・視覚を刺激するオノマトペ……クッキリ、ハッキリ、モヤモヤ、キラキラ、ホンワカ、チャラチャラなど

・聴覚を刺激するオノマトペ……ジュージュー、サクサク、シャキシャキ、パチパチ、カラカラ、コトコト、キンキン、シーン、ガヤガヤなど

・触覚を刺激するオノマトペ……ツルツル、スベスベ、サラサラ、アツアツ、プルプル、フワフワ、モッチリ、ホクホク、トロ~リ、カリカリなど

・味感を刺激するオノマトペ……コッテリ、アッサリ、サッパリなど

・嗅覚を刺激するオノマトペ……ツン、プーン、まろやか、角がある、丸みがあるなど

こうしたオノマトペをコピーライティングで使うとより臨場感が伝わりやすくなり、シズル感につながります。

シズル感の演出に応用できる心理効果

シズル感の演出に応用できる心理効果

シズル感を演出するのに応用できる心理効果の一つが、「文脈効果」です。文脈効果とは、文章の前後の文脈によって、認知活動に与える影響が変わる効果のこと。

商品を説明する際にシズル感を演出する言葉をプラスすることによって、商品のシズルを感じさせる表現ができます。

たとえば「チキングラタン」にシズル感を演出する言葉をプラスし、「やわらかジューシーチキンととろ~りチーズのアツアツグラタン」とするほうが、おいしそうな臨場感が伝わるでしょう。

シズル感を演出するのに応用できる心理効果として、「シャルパンティエ効果」も挙げられます。

シャルパンティエ効果とは、同じ重さでも体積が異なるものを2つ持って比べた際に、体積の大きいもののほうが軽く、小さいもののほうが重く感じられるという大きさと重さの錯覚を表すこと。

たとえば同じ1kgの羽毛布団と鉄の重りを持って比べた際に、「羽毛=軽い、鉄=重い」というイメージから羽毛布団のほうが軽いと思ってしまうのです。

これを応用して、「ビタミンCを2000mg配合した飲料」→「レモン100個分のビタミンCを配合した飲料」とすることにより、実際のビタミンC含有量は同じでも、後者のほうがより多くビタミンCが入っているように感じさせることができます。

シングメディア制作の「シズル感」のある映像事例

シズル感を感じる映像事例

実際にシズル感とはどういうものか、シングメディアで制作したシズル感のある映像事例3つをご紹介しましょう。

1. 楽しくいられる場であるために|やきとん木々家

池袋を中心に7店舗(2019年5月現在)を展開するやきとん屋さん『やきとん木々家』のブランディングムービー(企業CM)です。

レタスの映像では、水滴が飛ぶ様子でシズル感を演出。シャキッとしたみずみずしさと新鮮さを伝えています。

備長炭の映像では、赤く燃えている様子やパチッとはぜる音、舞う炭の様子でシズル感を演出。熱い温度感や温かさを伝えています。

厨房や店内の映像では、光りを浴びてピカピカに輝く厨房やテーブルでシズル感を演出。清潔さや明るさを伝えています。

開店前の静けさと開店後にお客様でにぎわう店内の様子を対比させることでもシズル感を演出。

ビールを注ぐ様子では、注ぐときの音と炭酸の泡、泡がはじける音、光を浴びて黄金色に輝く様子などでシズル感を演出しています。

他にも、お客様がビールのグラスをカチッと合わせる音、ザワザワとにぎやかな話し声、お客様の笑顔、やきとんに塩を振る様子、やきとんを焼いているときのジュ~ッという音、煙、炎などでもシズル感を演出しています。

このようにシズル感の演出場面はたくさん散りばめられており、それが臨場感のある映像に。そして見た人に「おいしそう」「行ってみたい」と思わせることにつながっているのです。

【参考リンク】
楽しくいられる場であるために「やきとん木々家」ブランディングムービーを制作しました

2. 【絶品マグロ料理】超マグロ丼 super tuna bowl|たくや食堂

料理人たくやが毎回さまざまな食材を極上の料理に仕上げていく番組、『たくや食堂』。チャンネルプロデュースから制作までをシングメディアで手掛けています。

「超マグロ丼」の回では、まず食材である大きなマグロをズームで撮影してシズル感を演出。脂ののっている様子を伝えて視聴者の「おいしそう」「食べたい」という欲求を刺激しています。

基本的に食材を調理している様子もズームで撮影し、臨場感を出しているのが特徴です。

たとえばマグロをバーナーであぶる場面では、バーナーの炎や音、脂がとろけている音や映像でシズル感を演出。

炊けたご飯の湯気とお米のツヤ感、ゆずを絞って零れ落ちる果汁などでもシズル感を演出しています。

食材や調理場面をズームで撮影することにより、それぞれの質感や新鮮さも視覚から伝わってきます。

照明についても、外からの自然光がたっぷり入り、食材や料理にしっかり光が当たるようにしているのも特徴です。

盛り付けでも、緑の小ねぎを散らすことでマグロの赤い色と対比させ、彩りよく魅せる工夫が。最後に乗せた卵黄の黄色も彩りが良く、シズル感たっぷりです。

さらに調理後、出来上がった料理を食べる姿を撮影することで、食べたときの表情やリアクションからもシズル感が伝わるようになっています。

3. 【絶品料理】マグロステーキ Tuna Steak|たくや食堂

こちらも、料理人たくやによる料理番組『たくや食堂』。

マグロステーキを作るこの回でも、シズル感の演出ポイントはたくさんあります。

たとえばブロッコリーやパプリカといったカラフルな野菜をメイン食材のマグロの隣に置き、画面に彩りを添える、食材を切るときにズームで撮影し、食材の質感と切るときの音を入れる、フライパンで溶けるバターやマグロが焼けていくパチパチ、ジュージューという音、跳ねる油の様子を入れるなど。

焼いたマグロの切り口を見せることにより、表面と内側の色味の対比でもシズル感を演出しています。

また今回は、彩りの良さでもシズル感が演出されているのが特徴。フライパンの中に野菜やエリンギを入れて炒める様子や、マグロと一緒に盛り付けられる様子では、豊かな彩りが食欲をそそります。

シングメディアでは上記のようなYouTubeチャンネルのプロデュース制作を積極的に行っておりますので、YouTubeチャンネルの開設をご検討の方はお気軽にご相談ください!

企業・タレントのYouTubeチャンネルのプロデュース(動画制作・運用)

まとめ

「シズル感について知りたい」という方のために、シズル感の広告業界での使われ方や演出方法をご紹介してきましたが、いかがでしたか?

普段、私たちが見ている映像には、シズル感を演出する工夫がたくさん取り入れられていることがわかったかと思います。

広告業界の初心者やこれから広告業界を目指す方は、消費者の五感を効果的に刺激できるよう、シズル感のある作品作りを意識していきましょう。


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WRITTEN BY
シングメディア編集部

映像・動作制作を手掛けるTHINGMEDIA株式会社のメンバーで構成しています。制作現場で得た映像・動画の知見をお伝えしていきます。