こんにちは、バックオフィス業務サポートサービス「AIBOW」編集部です。
会社の経理で重要な仕事の一つとして、厚生年金保険料の計算があります。
従業員の中には、毎月給料から引かれる厚生年金保険料について、「なぜこんなに高いのか」「どうしてこんなに引かれているのか」と疑問を持つ人もいるでしょう。
そんなとき、場合によっては詳しく説明できるように経理担当者が厚生年金に関する十分な知識を身に付けておくことが望ましいです。しかし厚生年金の計算方法などはわかりづらいもの。
そこで今回は基礎から理解できるよう、「厚生年金の概要や保険料の計算方法」などについて詳しく解説していきます。
概要や受給額などをチェック! 厚生年金の仕組みについて
経理担当者は、そもそも厚生年金とは何なのか、国民年金とは何が違うのか、どのぐらいの額をもらえるのかといった基本的な知識をしっかりと身に付けておくことが大切です。
そこでまずは厚生年金の仕組みについて解説していきます。
概要
厚生年金とは、会社員や公務員などを対象とした公的年金制度です。厚生年金保険の適用を受ける事業所で働く70歳未満の人が加入します。
年金の受給額は加入期間や平均標準報酬額によって変わってくるのも特徴です。
厚生年金保険は国が定めた「厚生年金保険法」に基づいて管理され、給付が実施されます。
なお公的年金制度は国民年金と厚生年金の2階建てとなっており、会社員や公務員は厚生年金を通じて、同時に国民年金にも加入することになります。ただし国民年金の保険料は厚生年金の保険料の中に含まれているため、別途納める必要はありません。
国民年金との違い
公的年金制度である「国民年金」との違いについても見ていきましょう。
厚生年金は70歳未満の会社員や公務員を対象としているのに対し、国民年金は日本に住む20歳~60歳未満すべての人が対象となっています。国民年金は就業形態を問わず、自営業者や学生、専業主婦といった人も加入対象となります。
納付する年金保険料については、厚生年金の場合、標準報酬月額や保険料率などによってそれぞれ違うのが特徴です。基本的に給与が高くなればなるほど、納付する厚生年金保険料も高くなります。
一方、国民年金の保険料はみんな一律となり、令和3年度の保険料は月額16,610円です。保険料はその年によって変動があるため注意が必要となります。
そして厚生年金保険料は事業主と従業員で折半して支払うことになりますが、国民年金保険料は全額、加入者が負担する必要があるというのも大きく異なる点です。
納付方法については、厚生年金の場合、事業主が被保険者分をまとめて納付することになるため、保険料は会社の給与や賞与から自動で引き落としされます。一方、国民年金保険料は自分で支払わなければなりません。自分で支払う必要があるため、納付忘れに注意が必要です。
将来給付される年金については、厚生年金の場合、基礎年金と厚生年金を合わせた額がもらえるのに対し、国民年金で受け取れるのは基礎年金のみです。
平均受給額
厚生労働省の調査によると、厚生年金の平均受給額は月額約14万6,000円(2019年度)となっています。
夫婦で厚生年金に加入していれば、受給額は月30万円近くになる計算なので、老後の生活がしやすくなるかもしれません。
なお2010年~2019年のデータを見てみると、厚生年金受給額は若干ではありますが、減少傾向です。その原因は給付乗率の引き下げと言われています。
ちなみに国民年金の平均受給額は月額約5万6,000円となっており、厚生年金に加入しているかいないかで将来受給できる年金額に大きな差が出ることがわかります。
厚生年金は納付額が多い傾向にあるものの、支払う額は事業者と折半できること、将来受給できる年金額が多いことも特徴といえます。
・参考サイト:平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(PDF)
受給額の計算方法
厚生年金の受給額は、「報酬比例年金額」「経過的加算」「加給年金額」の3つを足すことで計算できます。
受給額の多くを占める「報酬比例年金額」は、厚生年金の加入時期によって計算方法が異なるのもポイントです。
2003年3月以前であれば、平均標準報酬月額×7.5/1,000で計算した数字に3月以前の加入月数をかけます。2003年4月以後であれば、平均標準報酬額×5.769/1,000で計算した数字に4月以後の加入月数をかければ報酬比例年金額が求められます。
「経過的加算」は、20歳未満60歳以降の厚生年金加入月数に1,628円をかけることで概算できます。
「加給年金額」は、20年以上厚生年金保険に加入していた人が65歳になった際、扶養する配偶者や子どもがいる場合に加算されます。
配偶者の場合、1943年4月2日以降の生まれであれば年額約39万円が加算され、子どもの場合は一人あたり約22万円の加算となります。
ただし厚生年金の加入期間が20年以上、前年の収入が850万円以上などの条件に該当する配偶者は、加給年金の対象外になってしまうため計算する際には注意が必要です。
標準報酬月額ってなに? 厚生年金の保険料計算に必要な知識
厚生年金の保険料を計算するためには、「厚生年金保険料率」「標準報酬月額」「標準賞与額」について理解する必要があります。
厚生年金の保険料を計算するために身に付けておきたい知識について解説していきましょう。
計算方法
厚生年金の保険料は、給与や賞与の金額を元にして「標準報酬月額」と「標準賞与額」を出し、それぞれに共通の「保険料率」をかけることで算出できます。
基本的には、もらっている給料や賞与に合わせて厚生年金は変動し、収入が高くなるほど厚生年金も高くなると考えましょう。「厚生年金保険料率」「標準報酬月額」「標準賞与額」の詳細については、後ほど詳しく説明します。
なお算出された保険料は、事業者と被保険者で半分ずつ負担するのが一般的です。これを「労使折半」といいます。
しかし高齢任意加入被保険者に該当する場合は、事業者の判断によって全額被保険者の自己負担となるケースもあります。
厚生年金保険料率
厚生年金保険は32の等級で構成されており、等級ごとに厚生年金保険料が定められています。
厚生年金保険の保険料率は2004年から年々引き上げられてきましたが、2017年9月で引き上げが止まり、18.3%で固定されました。
この18.3%という保険料率は、一般の被保険者、坑内員・船員などの被保険者区分に関係なく固定となっているのがポイントです。
なお先述したように、厚生年金保険料は事業者と折半となっているため、保険料率は18.3%で固定ですが、被保険者の自己負担分はその半分の9.15%となり、給料から9.15%を天引きすることになります。
・参考サイト:令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和3年度版) | 日本年金機構(PDF)
標準報酬月額
標準報酬月額は、自分の毎月の給与額を厚生年金保険料額表の報酬月額区分に当てはめることで決まります。自分の給与額がそのまま標準報酬月額になるわけではありません。
標準報酬月額の対象になる給与は、基本給、残業手当、通勤手当、役職手当など以外にも、事業所が提供する食事費や宿泊費なども含まれます。事業所からの総支給額で、金額は税金を引かれる前の金額です。
標準報酬月額は1年分が元になるわけではなく、4月~6月の報酬月額を元に決定される場合が多く、これを「定時決定」といいます。
そのため4月~6月に多く残業したり、交通費がかさんだりすると厚生年金保険料が想像よりも上がってしまうケースがあります。
なお標準報酬月額の区分は、1等級(8万8,000円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれています。
定時決定された標準報酬月額が適用されるのは、その年の9月から翌年8月までの1年間。この期間中に残業や欠勤、交通費変更などによって月給額が変動したとしても、月給に対する保険料額は変わらず、標準報酬月額×18.3%の額のままです。
ただし定時決定した算定月以後に報酬月額が標準報酬月額の2等級以上変動した場合は、標準報酬の改定が行われます。この改定を「随時改定」といいます。
標準賞与額
標準賞与額は、税引き前の賞与の額を指します。ただし1,000円未満の端数は切り捨てとなります。
賞与の支給1回につき、150万円までが限度です。150万円を超えたとしても、標準賞与額は150万円と判定されます。
また標準賞与額は「賞与」という呼び名で区分されません。ボーナス、期末手当なども該当します。年3回以下の回数で支給されるものは、標準賞与額と判断されるのです。
なお年4回以上になった場合は、標準賞与額ではなく、標準報酬月額に含まれることになります。
出産や育児をするなら要確認! 厚生年金保険料が免除される条件
厚生年金保険料は、特定の条件に該当する場合に免除される仕組みがあります。
たとえば厚生年金保険に加入している会社員や公務員が産前産後休業に入ると、その期間中は厚生年金保険料が免除されます。保険料の負担が免除されるのは、会社側と従業員の双方です。
なお一般的に産前産後休業の期間は、産前で42日間、産後で56日間の中で、妊娠もしくは出産にあたって労務に従事しなかった期間となります。
産前産後休業で厚生年金保険料の免除を受けるためには、会社側から年金事務所に「産前産後休業取得者申出書」などを提出しなくてはなりません。
休業を経て仕事へ復帰した後に、時短勤務などによって給与が下がって標準報酬月額も下がったとしても、子どもが3歳になるまでの間は将来受給できる年金の金額が休業前より下がらないという救済措置もあります。
また満3歳未満の子どもを養育するための育児休業の際も、厚生年金保険料が免除されます。こちらも申請は会社側が行うことになり、会社側と従業員双方の保険料負担が免除となります。
出産や育児をする場合には、こうした免除制度もしっかり利用するようにしましょう。
いろいろと経理のフォローが必要? 厚生年金保険料の注意点
厚生年金保険料についてきちんと理解するために、注意しなければならないことも覚えておきましょう。
まず注意したいのが、厚生年金保険料は値上げされるケースがあるということです。
すでに説明した通り、保険料算出の基準となる4月~6月に昇給して基本給が増えたり、残業が増えたりすると、昨年よりも保険料が上がってしまう可能性があります。
経理担当者は従業員が困惑しないよう、保険料が上がりそうなときは教えてあげるのが望ましいです。そうすることにより、労使間トラブルを防ぐことも可能になります。
また厚生年金保険料には支払い期限があるということにも注意しておく必要があります。
支払い期限は翌月の末日まで。たとえば4月分保険料であれば5月末日までが納付期限となるため、従業員の給与から保険料を差し引くタイミングは5月の給料日です。
経理担当者は従業員負担分と会社負担分の保険料を合算して、翌月の末日までに支払うようにしましょう。
そして産前産後休業や育児休暇などを利用する場合、会社側から申請することで従業員の厚生年金保険料が免除されますが、病気休業や介護休業などの場合には支払い免除がないというのも注意点の一つです。
従業員は休業前と同じ金額を納付し続けなくてはなりませんから、大きな負担となってしまいます。休業中に給与の支払いがなければ、給与から厚生年金保険料を天引きすることもできません。
そのため従業員が病気や介護で休業した場合、その期間中は経理が一旦立て替えるなどのフォローが必要になります。
厚生年金の保険料計算などで困ったときは「AIBOW」にお任せ
厚生年金は従業員の将来の生活を支える大切なものであり、計算間違いは許されません。
また給料や賞与に比例して保険料が上がる、育児休暇は厚生年金保険料が免除されるなど、厚生年金の仕組みについて詳しく知らない従業員も少なくないので、十分なフォロー体制を整えることが重要です。
シングメディアが展開する「AIBOW」は、映像クリエイターに向けたバックオフィス業務のサポートサービス。ミスが起こりやすい厚生年金保険料の計算など、経理作業に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。
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