こんにちは、バックオフィス業務サポートサービス「AIBOW」編集部です。
電子帳簿保存法が大幅に改正されたことにより、帳簿の電子化に取り組まざるを得なくなったという方もいるのではないでしょうか。
中には、2022年の改正で電子帳簿保存法がどのように変わったのかまだよくわかっていない、電子取引の電子保存義務化にどう対応すればいいかわからない、という方もいるでしょう。
そこで今回は、「2022年の改正で電子帳簿保存法はどのように変わったのか、どのような対応をすればよいのか」について、詳しく解説します。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、情報化社会において、納税が適正におこなわれることと国税関係帳簿書類の保存にかかわる負担の低減を目的として、1998年7月に制定された法律のこと。
この法律によって、紙での保存が原則だった国税関係帳簿書類が一定の要件を満たすことで電子データ保存できるようになったのです。
保存しやすく便利である一方、改ざんされやすい電子文書の信頼性や安全性を確保し、法的効力を持たせるために、タイムスタンプの付与についても義務付けられました。
タイムスタンプは電子データと時刻の組み合わせによって構成されている技術であり、時刻認証局(TSA:Time-Stamping Authority)が発行をおこなっています。
タイムスタンプの付与によって、その時刻にデータが確実に存在していたこと、その時刻からデータが改ざんされていないことが証明できるのです。
なお電子帳簿保存法は社会の実情に合わせて、これまで何度も改正を重ねてきたという背景もあります。
2022年の改正で何が変わった?
電子帳簿保存法は、直近では2022年に改正されました。そこでこの段落では、2022年の改正で変わったポイントについて詳しく解説していきます。
事前承認制度が廃止された
改正前は、電子的記録保存やスキャナ保存を始める前に税務署へ申請し、承認を受けることが求められていましたが、改正後はこの事前承認が不要になったのです。
なお電子取引データに関しては、改正前も承認が不要でした。
改正により、すべての保存方法で承認が不要になり、電子帳簿保存法の適用を受けやすくなったといえます。
事前承認制度の下では、電子帳簿保存法の適用を受けるまでに数か月かかることもあり、事前承認制度が電子帳簿保存法の適用を受けようとする企業にとって大きな負担になっていました。
しかし2022年の改正によって事前承認が不要になったことで、体制さえ整えば任意のタイミングで電子帳簿や電子書類の保存を始められるようになったのです。
・参考サイト:電子帳簿保存法が改正されました | 国税庁(PDF)
適性事務処理要件が廃止された
適性事務処理要件とは、国税関係書類をスキャナ保存する際に、真実性を確保するために国税庁が求めていた3つの要件のこと。それぞれの要件を見ていきましょう。
1つめの要件が、相互けん制(相互に関係性のある事務をそれぞれ別の人がおこなう体制)。この要件が廃止されたことによって、それまで2名以上でおこなっていた事務処理を1人でもできるようになりました。
2つめの要件が、定期的な検査(各事務の処理内容を確認するために定期的な検査をおこなう体制や手続きの整備)。改正前は定期検査時に書類の原本が必要となっていましたが、改正後は不要になったため、電子化後すぐに原本を破棄することが可能になりました。
3.つめの要件が、再発防止のための社内規定整備です。
改正によってこれらの要件を満たす必要がなくなったことで業務上の負担が減り、電子化しやすくなったといえます。
・参考サイト:電子帳簿保存法が改正されました | 国税庁(PDF)
タイムスタンプ要件が緩和された
改正前も改正後も、スキャナ保存ではタイムスタンプが必要になりますが、改正後は付与のタイミングに関する要件が緩和されました。
改正前は、書類の受領から3営業日以内にデータ化する必要があり、データ化の際にはタイムスタンプを付与し、さらに受領者が自署しなくてはならなかったのです。
改正後はタイムスタンプの付与期限が大幅に延長され、最長約2か月、おおむね7営業日以内となり、受領者の自署は不要になりました。
条件を満たしたクラウドに保存する場合は、タイムスタンプの付与自体が不要となったというのもポイントです。
・参考サイト:電子帳簿保存法が改正されました | 国税庁(PDF)
検索要件が緩和された
改正前の検索要件は、電子帳簿・電子書類の種類ごとに設定すべき検索要件が異なっていました。帳簿の種類によって、主要な記録項目が異なるためです。
さらに範囲指定検索や組み合わせ検索にも対応しなければならず、2つ以上の任意の記録項目による検索が必要でした。
改正後は検索要件が「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3点だけになり、検索項目が少なくなったことで対応が簡単になりました。
税務署員の求めに応じてダウンロードする際にも、範囲指定検索や組み合わせ検索に対応する必要がなくなったのです。
これにより、電子帳簿・電子帳簿の保存に対するハードルが大幅に下がったといえます。
・参考サイト:電子帳簿保存法が改正されました | 国税庁(PDF)
システム要件が緩和された
改正後は保存システムに求められる要件が緩和されたことで、以下の3つの要件を満たせば、電子データの保存ができます。
(1)関係書類を備え付けられるシステムであること:システム概要書やシステム仕様書、操作マニュアル、事務処理マニュアルなどが用意できることが必要となります。
(2)見読性を確保できているシステムであること:保存場所に操作マニュアルを備え付け、整然な形式で明瞭かつ速やかに出力できる状態にしておくことが必要です。
(3)検索要件を満たしているシステムであること:税務調査に対応できるように保存できるものでなければなりません。取引年月日、取引金額、取引先で検索できることが必要です。
優良保存認定制度が新設された
改正により、優良電子帳簿と一般電子帳簿の2区分が設けられました。
優良電子帳簿は、改正前の要件を満たした上で所轄税務署にその旨を届け出ると適用されます。優良電子帳簿に認定されると、修正申告で過小申告加算税が生じた際には5%免税されるのがメリットです。
一般電子帳簿は、見読可能性、関係書類の備付け、ダウンロード要件の3つだけ満たせばよいとされています。ただし過小申告加算税が生じても軽減されません。
このように簡単な用件を満たすだけで電子化しやすくなったのです。また優良電子帳簿という区分ができたことで、改正前から要件を満たしていた企業にもメリットがあります。
・参考サイト:電子帳簿保存法が改正されました | 国税庁(PDF)
電子取引における電子保存が義務化された
改正前は電子取引の取引情報を紙に出力して保存することができました。電子データをわざわざ紙に出力した上で、ほかの紙の書類と同様に保存することが認められていたのです。
しかし改正後は、紙に出力して保存することができなくなりました。電子取引における申告所得税や法人税など、国税に関する取引情報はすべて電子データで保存しなければならなくなったのです。
電子帳簿等保存やスキャナ保存の導入は任意ですが、電子取引は電子保存しなければならないということになります。
ただしやむをえない事情で電磁的記録の保存要件を満たせない場合に限り、2023年12月31日までの時限措置で紙面に出力して保存することが認められています。それ以降は認められないため、電子保存できるように整備しなければなりません。
罰則が強化された
2022年の電子帳簿保存法改正は、電子保存が進む要素が多い改正であり、要件の緩和や廃止がほとんどでした。
しかし国税関連の保存データを隠蔽、仮装を図った場合、それらにより生じた申告漏れが生じた場合などに対する罰則は強化されたため、改正前よりも正確な対応が必要です。
電子取引の電子保存は、猶予特例が終わる2024年以降は完全義務化されます。
税金に関する隠蔽・仮装が発覚した場合は、35%の重加算税が課されることになります。
電子データの隠蔽・仮装が発覚した場合は、さらに10%加算されることになり、45%の重加算税となるのです。
電子取引の保存要件を満たしていない場合は、青色申告の承認が取り消される可能性もあるため注意しましょう。
・参考サイト:電子帳簿保存法一問一答 | 国税庁(PDF)
電子取引の電子保存義務化への対応4ステップ
電子取引の電子保存に取り組みたいけれど、どう対応すればいいのかわからないという方のために、この段落では、電子取引の電子保存義務化に対応するための手順を詳しく解説していきます。
1. 電子保存する帳簿や書類を選ぶ
電子化に取り組むためには、最初にどの帳簿や書類をどのような形で電子保存するかを決める必要があります。
しかし帳簿や書類の種類が多いため、どこから手を付けるか迷いがちです。そこでまずはどのような取引書類があるのか、どのような形で受け取っているか、どこに保存しているか、月間、年間でどれくらいの件数になるのかなどを確認しましょう。
その中でどの帳簿や書類の処理が最も非効率になっているのかを確認します。
件数が多く、回付の機会が多い書類をまず電子化すると、効果が出やすいです。インボイス制度も見据えて、請求書や領収書の電子化から始めるといいでしょう。
電子化を決めたら、取引先にも紙での送付をやめてもらうようにお願いしましょう。
2. 要件を満たす保存方法を選んで導入の準備をする
次に、要件を満たす保存方法を選んで導入の準備をする必要があります。
猶予期間に電子取引の保存要件を満たせるようにしなければならないため、どの方法で電子取引の電子保存の要件を満たすかを決めなくてはなりません。
見読可能性と検索機能を確保することは必須です。ディスプレイの画面で、記録事項を整然明瞭かつ速やかに確認でき、なおかつ取引年月日、取引先、取引金額で検索できるようにする必要があります。
さらに下記の3項目のいずれかによって真実性を確保しなくてはなりません。
1.タイムスタンプを利用:自社あるいは取引先でタイムスタンプを押す
2.訂正削除の記録が残るシステムまたは訂正削除できないシステムで授受及び保存をおこなう
3.訂正削除を防止する事務処理規定を策定し、運用、備え付けを実施する
タイムスタンプの付与ができないときは、事務処理規定の策定、運用が基本となります。
3. 電子データを保存する場所を決めて導入の準備をする
続いて、電子データを保存する場所を決めて導入の準備をしましょう。
電子データを保存する際は、日付、金額、取引先の3項目で検索できるようにしなければなりません。それを踏まえた上で、自社サーバ内のフォルダなどへ保存するのか、電子帳簿保存システムへ保存するのか、いずれかを選択します。
自社サーバ内のフォルダに保存する場合は、内容がわかり規律性のあるファイル名を付けるようにしましょう。検索簿を作り、Excelファイルを検索できるようにすることで対応可能です。
電子帳簿保存システムは、最初から検索要件を満たしているので問題ありません。電子保存専用タイプ、請求書受領タイプ、経費精算タイプの3種類があるため、自社の業務内容に合うシステムを選びましょう。
なお「電子保存専用タイプ」は請求書や領収書だけでなく幅広い書類の保存が可能です。「請求書受領タイプ」は、大量の請求書を効率よく保存できます。「経費精算タイプ」は、書類保存と共に経費精算業務の効率化も進められます。
4. 電子保存できるように業務フローを見直す
最後のステップとして、電子保存できるように業務フローを見直す必要があります。
まず従来の業務フローが改正電子帳簿保存法に対応できるものかを確認し、流れの中で対応が難しい部分を洗い出しましょう。
電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3つに分け、業務フローを見直すようにします。特に電子取引の区分に関しては紙に出力した書類が税務調査で使用できなくなるため、業務フローの見直しが必要です。
面倒に感じるかもしれませんが、これはペーパーレス化を進めるチャンスにもなります。
猶予期間内に対応を完了させるには手順が重要
企業は限られた期間内でタイムスタンプの免除要件を満たしたり、義務化された電子取引の電子保存に対応したりしなければなりません。
対応をスムーズに完了させるためには、手順が重要です。一つひとつ正確に対応し、電子化を進めていきましょう。
場合によっては、手順を理解したバックオフィス業務のプロに任せることも必要でしょう。
社内での対応が難しいなどの際には、バックオフィス業務サポートサービス「AIBOW」にご相談ください。
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